「2024 世界ロボット大会(WRC)特集レポート」のサマリー

2024年8月21日から25日にかけて北京経済技術開発区で開催された世界ロボット大会(World Robot Conference、以下WRCとする)は、中国最大のロボット産業カンファレンスであり、国際的な技術交流プラットフォームとして重要な役割を果たしていることが伺えました。今回のWRCは、中国電子学会と世界ロボット協力機構(WRCO)が共同で主催し、「共育新質生産力 共享智能新未来(直訳:新たな高品質の生産力を育成し、スマートな未来を共有する)」をテーマに、技術革新と産業革新の融合を推進する大きな成果を残しています。


WRC会場の南側出入口の様子(画像は匠新が撮影)

全体は、フォーラム、展覧会、コンテストの3つのセクションから構成され、欧州、米国、ドイツ、韓国、日本を含む26カ国の国際的組織のサポートを受けて開催。フォーラムでは、世界のロボット産業の最新動向や人型ロボットのトレンドが議論されました。展覧会では、169社の企業が600点以上のロボット製品を展示し、人型ロボット27種類が展示され、過去最大の数を記録しています。コンテストでは、世界10カ国以上、7000以上のチームが参加し、30以上の大型コンテスト、80の小型コンテスト、そして140の競技種目の試合が行われました。

世界ロボット大会 北京選手権の様子(画像は中国電子学会のニュースリリースから)

今回のWRCでは、中国ロボットに関するトレンドが主に3つ観察されました。それらは、「人型ロボットの非人型化を含む多様化と価格の低下」、「ロボット研究開発の地域間連携および競争」、そして「着実に進む消費者向け応用シーンの探索」です。人型ロボットの価格は徐々に下がる一方で、非人型ロボットあるいは半人間型ロボットといった多様化も進んでいる様子が見られました。また、地域ごとの企業が連携し、産業チェーンを形成する集約的機動力が強まっていることも分かります。さらに、ロボットが消費者向けにもその本質を追求し始め、より堅実に応用探索を始めていることが読み取れました。

左上から右下の順に、北京市、上海市、浙江省、四川省、そして広東省の人型ロボットセンターの展示ブースの様子(画像は匠新が撮影および広東省人型ロボットセンターの運営企業「智平方」のニュースリリースから)


中国工業情報化部が23年11月に発表した「人型ロボットの革新的発展に関する指導意見」の通知ページ(左)とその資料表紙(右)(画像は工業情報化部のニュースリリースから)

マクロな視点で見れば、市場環境の整備と技術的な基盤が課題に見える中国のロボット企業。ハードウェアの性能は高く、コスト面でも優れている一方で、ソフトウェアの汎化能力に関しては課題があります。ロボットの汎化能力の向上を実現するには、強力な汎用型の大規模AIモデルを組み込むことが鍵となります。そうした中で、中国のロボット産業は、グローバル化が進み、製品の品質と応用実践が十分であれば、中国国内よりも大きな付加価値を世界で創出できる可能性があると考えられます。





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