渡辺 明九段が稲葉 陽八段を139手で破り、決勝に進出した。次戦は、決勝戦で藤井聡太JT杯覇者と広瀬章人九段の勝者と対局予定。
【実施概要】
タ イ ト ル: 「将棋日本シリーズ JTプロ公式戦」 準決勝第一局
日 程: 2024年10月12日(土)
場 所: Asueアリーナ大阪(住所:大阪府大阪市港区田中3丁目1-40)
【「JTプロ公式戦」結果】
対 局: 渡辺 明 九段(先手)対 稲葉 陽 八段(後手)
結 果: 139手にて渡辺九段の勝ち
【「JTプロ公式戦」今日のハイライト】
渡辺九段、大逆転でアキラ対決を制し、決勝進出
振り駒は来場者の中から抽選で選ばれた方が行い、歩が3枚で渡辺九段の先手と決まる。後手の稲葉八段は△9五歩の突き越しを生かして、飛車を9筋から出して三間飛車に。先手は位取りから後手の飛車を圧迫、▲6六角の自陣角から稲葉玉を攻める。しかし稲葉八段は94手目△7四玉以降、粘り強い指し回しで逆転し、そのまま勝ち切ったかと思われた。投了一手前の△5九龍が敗着で、▲2四飛で稲葉玉がとん死。急転直下で渡辺九段が決勝進出を決めた。
【対局前の両者のコメント】
渡辺九段「『JT杯プロ公式戦』は一番持ち時間が少ない棋戦なので、テンポよく指すことが重要です。稲葉八段とは対戦は結構あるのですが、ほとんどが相居飛車です。最近はいろんな戦型を指されていますので、どういう作戦で来られるのか用心しないといけません。昨年は準決勝でやられているので、ここを勝って決勝に出ることを目指したい。集中して頑張りたいと思います。」
稲葉八段「『JTプロ公式戦』は持ち時間が短いので、急所を見極めて、考慮時間を有効に使う必要があります。渡辺九段は大局感がよく、序盤の研究も深く、大変な相手です。大阪大会は地元の将棋イベントで知り合った方も大勢見に来られると思いますので、いい将棋をお見せできるように頑張りたいですね。準決勝とかを意識せずに、目の前の対局に臨むつもりです。」
【勝利棋士 渡辺九段のコメント】
△3三金△3五歩の形の三間飛車は初めて見ました。本譜は無難に進めた感じで、途中千日手模様のところも、もちろんこちらは千日手にするわけはなく、いかにして有利な形に持ち込もうかという時間稼ぎです。94手目△7四玉は危なく見えるだけに指されて正直動揺しました。以下▲7六金△6四歩▲7五金△6三玉▲7四銀△6二玉▲6四金と押し込む順が見えませんでした。桂損の展開になり、負けにしてしまったところを最後のとん死に救われた格好です。決勝は久しぶりですが、今日の内容ではどうにもならないので、早指しの練習を積んで本番に臨みたいと思います。
【講評】
端から飛車を出す戦法はたまにあるのですが、本譜の△3三金△3五歩型から三間飛車にするのは初めて見ました。それに対し、先手の渡辺九段は6、7、8筋の位を取って、稲葉八段の飛車を圧迫して、局面を優勢に進めます。ところが、93手目▲6五桂に対する△7四玉が稲葉八段の勝負手で、見事に渡辺九段の動揺を誘いました。渡辺九段が決め手を見つけられずに形勢が逆転。稲葉八段の快勝譜で終わるかと思われましたが、最後にドラマがありました。136手目△6六角に▲7七桂と受けたのが恐ろしい狙いの一手で、この手は▲2四飛△3四金▲5三銀打△5四玉▲3四飛△4四歩▲6五金までの詰みを見ていたのです。稲葉八段がその詰みを防げばゲームセットだったのですが…。将棋は恐ろしいゲームですね。 北浜健介八段談
JTプロ公式戦(準決勝第一局)結果
【投了図】 渡辺 明 九段(先手)対 稲葉 陽 八段(後手)
【棋 譜】 渡辺 明 九段(先手)対 稲葉 陽 八段(後手)
▲2六歩 △3四歩 ▲7六歩 △9四歩 ▲2五歩 △9五歩
▲6八玉 △3二金 ▲3八銀 △3三角 ▲同角成 △同 金
▲4六歩 △3五歩 ▲7八銀 △9二飛 ▲4七銀 △9四飛
▲5八金右 △3四飛 ▲7九玉 △7二銀 ▲8六歩 △6二玉
▲8八玉 △3二金 ▲8七銀 △4二銀 ▲7八金 △7一玉
▲1六歩 △1四歩 ▲6六歩 △3三銀 ▲8五歩 △8二玉
▲6八金右 △6四飛 ▲5六銀 △3四飛 ▲4五銀 △9四飛
▲5六銀 △3四飛 ▲4五銀 △9四飛 ▲7七桂 △4二銀
▲5六銀 △3四飛 ▲4七銀 △5四飛 ▲7五歩 △3三銀
▲5六銀 △3四飛 ▲4五銀 △6四飛 ▲6五歩 △9四飛
▲6七金直 △4二銀 ▲6四歩 △同 歩 ▲2四歩 △同 歩
▲同 飛 △2二歩 ▲2八飛 △5一銀 ▲5六銀 △5二銀
▲6六角 △4四歩 ▲同 角 △6五歩 ▲6四歩 △同 飛
▲5五角 △3四飛 ▲7四歩 △3三桂 ▲7三歩成 △同 銀
▲6五銀 △5四歩 ▲6六角 △6四歩 ▲7四歩 △6五歩
▲7三歩成 △同 玉 ▲6五桂 △7四玉 ▲5三銀 △6四歩
▲6二歩 △6五歩 ▲6一歩成 △5三銀 ▲7五歩 △6三玉
▲7七角 △5五歩 ▲同 角 △6四銀打 ▲7四金 △5四玉
▲6四角 △同 銀 ▲5六金 △5三銀 ▲5一と △7三歩
▲6三銀 △4三玉 ▲5二銀不成△5四玉 ▲6三銀不成△4三玉
▲5二銀不成△5四玉 ▲6三金 △6四桂 ▲5三金 △同 玉
▲6五金 △5四銀 ▲同 金 △同 飛 ▲6五銀 △5七飛成
▲5四歩 △4四玉 ▲6四銀 △6六角 ▲7七桂 △5九龍
▲2四飛 まで139手で先手の勝ち
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