ユニセフ、1億6,500万ドルを要請
すぐに食べられる栄養治療食を口にする、もうすぐ1歳になるヤディンちゃん。ハルツームにあった自宅から追われた一家は、避難生活を続ける中で娘のヤディンちゃんが栄養不良に陥ってしまった(スーダン、2024年9月7日撮影) (c) UNICEF_UNI638944_Elfatih
【2024年10月15日 ニューヨーク発】
幼い子どもの命を守る「すぐに食べられる栄養治療食(RUTF)」の調達に必要な資金が不足していることにより、深刻な消耗症、すなわち重度の急性栄養不良に苦しむ200万人近い子どもが、死に至る危険にさらされていると、ユニセフは本日警鐘を鳴らしました。
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重度の消耗症に陥っている5歳未満児の割合は、紛争や経済ショック、気候危機に助長され、いくつかの国々では依然として非常に高いままです。
ユニセフの子どもの栄養と発達局長ビクター・アグアヨは次のように述べています。「過去2年間、前例のない世界規模の取り組みにより、紛争や気候・経済ショック、およびそれらの結果生じた母子栄養危機により、深刻な影響を受けた国々において、子どもの消耗症と関連死を食い止めるための栄養支援プログラムの規模を拡大することができました。しかし、この“静かなる殺人者”と闘っている200万人近い子どもの命を守るためには、今こそ緊急の行動が必要なのです」
最も深刻な影響を受けている12カ国では、RUTF調達に対する資金不足により、およそ200万人の子どもが治療を受けられない恐れがあると推定されています。 マリ、ナイジェリア、ニジェール、チャドではすでにRUTFの備蓄がないあるいは早々になくなる状況であり、カメルーン、パキスタン、スーダン、マダガスカル、南スーダン、ケニア、コンゴ民主共和国、ウガンダでは2025年半ばまでに備蓄がなくなる可能性があります。
上腕計測メジャーで栄養不良の検査を受ける、2歳のアリューちゃん(マリ、2024年2月22日撮影) (c) UNICEF_UNI537485_Keïta
アフリカのサヘル地域では、長引く干ばつや洪水、不安定な降雨により、事態はさらに悪化しています。こうした状況は食料不足と食料価格の高騰を招き、重度の消耗症の増加につながります。
例えば、マリでは2024年中に5歳未満の子ども30万人以上が重度の消耗症に苦しむと予想されていますが、栄養支援プログラムで使用するRUTFが7月末に不足し始めており、このままでは子どもたちは急を要する治療が受けられなくなります。
チャドでは、2月に政府が食料と栄養の緊急事態を宣言しました。今年、5歳未満の子ども50万人以上が重度の消耗症に苦しむと予測されており、多くの難民を受け入れている州では特に深刻な影響が出ています。1月から8月にかけて、約31万5,000人の子どもが重度の消耗症の治療を受けました。RUTFのニーズは喫緊であり、その備蓄は今月末までに底を突く見通しです。
ユニセフは、「一刻も無駄にしない(No Time to Waste)」イニシアティブの2024年改訂版を新たに発表し、RUTFの深刻な不足により命の危険にさらされている200万人の子どもへの栄養治療ケアに必要な資金として、1億6,500万米ドルを国際社会に求めています。
世界的な食料・栄養危機への対応を加速させるために、2022年に「一刻も無駄にしない(No Time to Waste)」という取り組みを立ち上げて以来、ユニセフは9億米ドル以上の資金を集め、子どもの消耗症の早期予防、早期発見および治療のためのプログラム、支援サービス、物資の提供の規模拡大に充ててきました。この期間に、2,150万人の子どもと女性が、子どもの消耗症の早期予防に不可欠な支援を受け、4,600万人の子どもが早期発見のための支援を受け、560万人の子どもが命を守るための治療を受けました。
すぐに食べられる栄養治療食を手にする、月齢6カ月のマティキちゃん(マリ、2024年6月5日撮影) (c) UNICEF_UNI586219_Chikondi
子どもの重度の栄養不良の課題に対し長期的に取り組むため、ユニセフは昨年、英国外務国際開発省、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、児童投資基金財団の支援を受け、「子どもの栄養基金(CNF)」を立ち上げました。
ユニセフ主導の複数パートナーによる資金調達メカニズムである「子どもの栄養基金」の目標の一つは、深刻な子どもの栄養不良に苦しむ地域において、乳幼児向けの栄養強化食品、栄養補助食品、RUTFなどの現地および地域での生産を支援するとともに、世界的なサプライチェーンの停滞を回避し、輸送による環境への影響を軽減し、地域社会における雇用機会と経済成長を促進することです。子ども栄養基金が全面的に実施されれば、現在のRUTF不足の主因となっている資金不足や需要の変動にあえぐ国々を支える一助となるでしょう。
栄養価の高い安全な食品の不足や、疾病によって引き起こされる消耗症に苦しむ子どもたちは、危険なほど痩せ細り、免疫システムも弱っているため、成長阻害や発育不良、あるいは死の危険にさらされています。
アグアヨ局長はこうも述べています。「持続可能な予防戦略と持続的な資金がなければ、いくつかの国でRUTFの備蓄が底をつき、特にサヘル地域においては最も深刻な資金不足に見舞われるだろうと、ユニセフは繰り返し警鐘を鳴らしてきました。今まさに、それが起きようとしています」
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■ 注記
・以下の表は、最も深刻な影響を受けている12カ国において、「すぐに食べられる栄養治療食(RUTF)」の備蓄がなくなる予想時期を示しています。
・RUTFは、ピーナッツ、砂糖、粉ミルク、油、ビタミン、ミネラルを使用して作られた、高カロリーで微量栄養素も含むペーストです。消耗症の連続した治療には、通常6~8週間を要し、医療処置と並行して特別な治療食が必要です。
・「一刻も無駄にしない――2024年版 緊急行動への呼び掛け(No Time to Waste 2024 Update and Call to Urgent Action)」はこちらでご覧いただけます。
http://www.unicef.org/documents/NTTW2024
・「一刻も無駄にしない――2022~2023年加速化計画」はこちらからご覧いただけます。
https://www.unicef.org/reports/no-time-waste
■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。(https://www.unicef.org )
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます
■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、33の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。(https://www.unicef.or.jp )
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