売れに売れているDJIのOsmo Pocket 3。市場を大きく変えたビデオカメラだ。例年9月、10月は秋の運動会シーズン。ビデオカメラの需要期だ。これまで売れていたのが従来タイプで横型のビデオカメラ。子どもの雄姿を動画で収めようと、親が新たに購入するため販売が盛り上がっていた。しかし今年は状況が一変。9月になっても販売台数のトップシェアはOsmo Pocket 3のまま。発売以来11カ月連続で売り上げトップを譲らない。この間の累計シェアは24.3%と圧倒的だ。いったい何が起きているのか。全国2400の家電量販店やネットショップの売り上げを集計するBCNランキングで明らかになった。
従来型のビデオカメラは三つの流れに切り裂かれようとしている。一つはスマートフォン(スマホ)の台頭。写真に加え動画性能も飛躍的に向上し、スマホで動画というスタイルも一般的になった。もう一つがミラーレスカメラによる動画市場への浸食。写真ばかりでなく動画にも本格対応するモデルが増え、動画撮影のためにミラーレスカメラを選ぶユーザーも増えている。3つ目がアクションカメラに代表される、新カテゴリーカメラの拡大。
耐衝撃性能であったり、防水性能であったりと、スマホでは撮りにくい、難しい領域をカバーする。さらに最近ではジンバル付きカメラが特に伸びている。カメラユニットを物理的に動かすことで手振れを補正し、スムースな映像撮影を可能にする。そのユニークな形状は小動物にも似て、どこかかわいらしくもある。Osmo Pocket 3はジンバル付きカメラの代表格。前作よりセンサーサイズが1インチと大型化し、縦横と切り替えられるディスプレイも大型化。超高速充電にも対応し、製品の完成度が高まったことで、使いやすくなり人気が爆発した。
Osmo Pocket 3効果で、ビデオカメラの販売台数メーカーシェアも、昨年11月以降11カ月連続でDJIがトップを走り続けている。横型のビデオカメラが売れるはずの9月ですら、37.7%とダントツだ。DJIの躍進は販売台数前年比にも如実に表れている。6月の販売台数前年比が約4.8倍に達したのを筆頭に、3から5倍増の水準で推移してきた。一方、これまで従来型ビデオカメラで高いシェアを維持してきたメーカーは振るわない。パナソニックは、需要期の9月にもかかわらず、シェア18.8%で2位にとどまった。販売台数前年比も42.9%と半減以上。3位のソニーもシェア17.5%、前年比41.8%と同様に急減している。現在のビデオカメラ市場は、伸び悩む日本メーカーの従来型製品に対し、急拡大する海外メーカーの新カテゴリー製品、という構図になっている。
新カテゴリー製品といっても、すべてのメーカーが好調、というわけでもない。Insta360ブランドを擁するShenzhen Arashi Vision(シンセンアラシビジョン)は、シェア12.1%で4位。360度カメラを足掛かりに、アクションカメラでも徐々にシェアを伸ばしている。一方、アクションカメラの老舗GoProは、9月の販売台数前年比で49.9%と急ブレーキ。シェアも9.7%で5位に沈んだ。新カテゴリー製品間でも競争激化が始まっている。(BCN・道越一郎)