公益財団法人流通経済研究所(東京都千代田区、理事長:青山繁弘)は、『流通情報』2024年11月号を発刊しました。特集「ビジネスと研究におけるフィールド実験の活用」では5編の論文を掲載しています。
マーケティングを含む社会科学全般で、近年フィールド実験を用いた研究が活発に実施されています。また、ビジネスの世界でもA/B テストと呼称されるランダム化フィールド実験が、特にネット企業において日常的に利用されています。特集「ビジネスと研究におけるフィールド実験の活用」では、ビジネスと研究の双方の領域で活性化しているフィールド実験に焦点を当て、その有効性、実施上の留意点などを検討しました。
URL:https://www.dei.or.jp/information/info01
◆「ビジネスと研究におけるフィールド実験の活用」のポイント
○マーケティングにおけるフィールド実験の有効性
○フィールド実験の分類と設計・実施・解釈に際する注意点
○フィールド実験における不遵守の問題
○再現性の高い商品の価格決定
○リアル店舗の売場とメタバース環境内に構築した売場における商品視認の比較実験
◆「ビジネスと研究におけるフィールド実験の活用」の論文レポート概要
■論文レポート1. マーケティングにおけるフィールド実験の活用
―(公財)流通経済研究所 評議員/早稲田大学商学学術院 教授 守口 剛
ランダム化という手法を用いることによって因果関係を厳密に捕捉することが可能であり、かつ現実世界での実験によりリアリティを伴った結果を導くことができるフィールド実験の利用が2010年代半ばから活発になってきた。実務においてもA/Bテストと呼ばれるフィールド実験が、特にオンライン企業において日常的に利用されている。上記のような現状を踏まえ、マーケティングにおけるフィールド実験の有効性について、特に因果関係の捕捉、研究のリアリティの向上という側面を中心に検討する。
「ビジネスと研究におけるフィールド実験の活用」より抜粋
■論文レポート2. 経済学におけるフィールド実験
―京都大学大学院 農学研究科 准教授 三谷 羊平
フィールド実験は、参加者を無作為に統制群と処置群に割り当てることで、介入が結果変数に与える因果効果を識別する方法である。因果推論の中でも最も信頼性の高いエビデンスを生み出すフィールド実験であるが、経済学研究においては、統制の程度を示す内的妥当性と現実性の程度を示す外的妥当性の観点から、いくつかのタイプに分類される。フィールド実験の分類を詳しく説明した上で、設計・実施・解釈に際する注意点を解説する。フィールド実験研究の奥深さとその見方を伝授する。
「経済学におけるフィールド実験」より抜粋
■論文レポート3. フィールド実験と不遵守の問題
―慶應義塾大学 経済学部 教授 星野 崇宏
フィールド実験における不遵守の問題を扱っている。マーケティングにおいても不遵守の問題は重要であり、例えばクーポン付与は無作為化できてもその使用を強制することはできない。フィールド実験でのマーケティング施策の因果効果推定において不遵守を考慮することの重要性とそのためのフレームワークを提示し、著者の行った実験例について紹介する。
「フィールド実験と不遵守の問題」より抜粋
■論文レポート4. フィールド実験と経済学を活用した価格戦略の新たなアプローチ
―株式会社サイバーエージェント AI事業本部 データサイエンティスト 北川 慶
複雑な状況下において、価格決定は企業の経営戦略の中で最も重要な意思決定の一つである。再現性の高い商品の価格決定は非常に困難であるが、フィールド実験によって、様々な商品・業界の適正な価格の発見・設定が可能となることを解説する。解説にあたっては株式会社サイバーエージェントが主体となって実施した、スーパーマーケットにおける商品価格とお祭りの限定チケット価格の実証実験を紹介し、これらの手法の有効性や適切な価格設定が企業の収益に与えるインパクトについても論ずる。
「フィールド実験と経済学を活用した価格戦略の新たなアプローチ」より抜粋
■論文レポート5. リアル店舗での売場の視認性とメタバース環境に構築した売場の視認性の比較―初期実験取り組み事例の紹介―
―(公財)流通経済研究所主任研究員 三坂 昇司
近年、メタバースを活用した新しいサービスが生まれてきている。本稿では、食品スーパーにおけるメタバース活用の第1歩として、リアル店舗の売場における商品視認とメタバース環境内に構築した同一の売場における商品視認の比較実験の事例を紹介する。事例を通じて、メタバース実験を用いることの有用性やメタバース実験を利用しやすい商品、カテゴリーがあることを確認し、今後の可能性を検討した。
「リアル店舗での売場の視認性とメタバース環境に構築した売場の視認性の比較―初期実験取り組み事例の紹介―」より抜粋
◆『流通情報』2024年11月号の詳細
特集 「ビジネスと研究におけるフィールド実験の活用」
マーケティング研究と実務の双方で注目されるフィールド実験をテーマに、最新の知見を提供する5編の論文レポートを掲載しています。学術研究から実務まで幅広く応用できる重要トピックを取り上げ、流通業界の実践的な活用法について考察しています。
レポート「今冬の天候予測に基づいた気象とPOSデータ分析」
――株式会社True Data 流通気象コンサルタント 常盤 勝美
視点 「日本の小売流通の進化と消費者脆弱性の課題」
――青山学院大学 教授/慶應義塾大学 名誉教授 高橋 郁夫
発行日:2024年11月6日(水)
詳しくはこちら:https://www.dei.or.jp/information/info01
◆研究情報誌 『流通情報』
『流通情報』は、流通活動・マーケティングに関連する重要なテーマに焦点を当てた会員向けの研究情報誌です。
食品業界、小売業、卸売業、物流業などの流通業や研究者・学生など、多岐にわたる分野の関係者に向けて、当研究所の研究員による報告など、他では得られない独自のコンテンツを提供しています。
■発行頻度:隔月刊(年6号刊行)
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