ユニセフ、本日発表の「世界子供白書2024」で警鐘


「世界子供白書2024:2050年の子どもたち(原題:The State of the World’s Children 2024: The Future of Childhood in a Changing World)」 (C) UNICEF

【2024年11月20日 ニューヨーク発】
世界の子どもの福祉向上のため国連が1954年に定めた「世界子どもの日」にあたる本日、ユニセフ(国連児童基金)は、基幹報告書「世界子供白書」の最新版を発表。大きく変化する世界において、子どもたちの権利を守るための行動が今取られなければ、子どもたちが生きる未来が危機に瀕すると警鐘を鳴らしました。

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「世界子供白書2024:2050年の子どもたち(原題:The State of the World’s Children 2024: The Future of Childhood in a Changing World)」では、世界を変える大きな要因(メガトレンド)が、2050年までに、またそれ以降に子どもたちの生活にどのような影響を与えるかを予測しています。 人口構成の変化、気候・環境危機、飛躍的な技術革新という3つのメガトレンドは、子どもたちが将来直面する可能性のある課題と機会の重要な指標となります。

ユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセルは次のように述べています。「子どもたちは、気候ショック(変動がもたらしている危機)からオンラインのリスクまで、数え切れないほどの危機に直面しています。そして、それらの危機は今後さらに深刻化します。白書は、今日、世界のリーダーたちが下す決断、あるいは下し損なった決断が、将来子どもたちが受け継ぐ世界を形作ると説明しています。2050年をより良い未来とするためには、想像力だけではなく行動が求められます。これまでの数十年で積み重ねられてきた、特に女の子を取り巻く課題に対する進歩が、脅かされているのです」



超大型台風「ヤギ」がもたらした豪雨による土砂崩れで、破壊された自宅の前に立つ6歳のカオさん(ベトナム、2024年9月12日) (C) UNICEF/UNI642895/Do Khuong Duy

気候危機はすでに切迫した状況にあり、2023年は観測史上最も暑い年となりました。白書によると、2050年から2059年の10年間で、気候・環境危機の規模はさらに広がり、2000年代と比較して、極端な熱波にさらされる子どもの数は8倍に、極端な河川洪水にさらされる子どもの数は3倍に、極端な山火事にさらされる子どもの数は2倍近くに増加する見通しです。


首都ダッカのスラム街で暮らす10歳と2歳の兄弟。スラム街にあるバナニ湖には、ごみや下水が流れ込み水質が汚染され、子どもたちの健康を害する要因になっている。(バングラデシュ、2024年1月28日撮影) (C) UNICEF/UNI526080/Mawa
こうした気候災害が子どもにどのような影響を与えるかは、子どもの年齢や健康状態、子どもが置かれている社会経済状況、そしてどのようなリソースを利用できるかによって決まります。例えば、気候変動に強い避難所、冷却設備、保健医療、教育、清潔な水などを利用できる子どもは、そうしたものを利用できない子どもと比べて、気候ショックに打ち勝つ可能性が高くなります。この報告書は、すべての子どもを保護し、子どもが直面するリスクを軽減するための、的を絞った環境対策が急務であることを強調しています。




2050年代には、子どもの人口はサハラ以南のアフリカと南アジアで最も多くなると予測されています。また、これらの地域では高齢化も起こることが示されており、世界のあらゆる地域で子どもの割合が減る見込みです。アフリカでは、子どもの割合は依然として高いものの、40%を下回る見通しです。この数値は2000年代の50%から減少しています。東アジアと西ヨーロッパでは、2000年代にはそれぞれ人口の29%と20%であった子どもの割合が、17%を下回る見通しです。

こうした人口構成の変化は、大きな課題をもたらします。多くの子どもを抱え社会サービスの拡大を迫られる国々がある一方で、増加する高齢者のニーズとのバランスを図らなければならない国々もあります。

さらに白書は、アプリ、おもちゃ、バーチャルアシスタント、ゲーム、学習用ソフトウェアなどに組み込まれた人工知能(AI)をすでに使っている子どもたちにとって、 AIなどの最先端技術が可能性と危険の双方をもたらすとしています。他方で、デジタルデバイドも依然として深刻です。2024年には、高所得国の95%以上の人がインターネットに接続しているのに対し、低所得国では26%近くにとどまっています。

また、低・中所得国の若者の多くがデジタルスキルを習得するのに苦労しており、それが教育の場や将来の職場において、デジタルツールを効果的かつ責任を持って使用する能力に影響を及ぼすだろう、と白書は指摘しています。こうした障壁はしばしば、社会経済状況、ジェンダー、言語およびアクセシビリティと結び付いています。



ごみ埋立地を訪問した17歳のサラさん。「Youth4Clean」というユース団体に所属し、子どもたちの健康を守るために廃棄物の処理を適切な方法でするよう、地元当局に訴えている。(コソボ、2024年3月11日撮影)(C) UNICEF/UNI552883/Karahoda

白書には、明るい見通しも含まれています。出生時の平均余命は延びると予測されています。また、過去100年間にわたって見られた子どもの教育へのアクセス向上の動向も続くと予測されており、初等教育を受けられる子どもは、世界中で2000年代の80%から96%近くにまで増えると見込まれています。同様に、教育や保健衛生への投資の増加、より厳格な環境保護により、子どもが置かれている状況は大幅に改善する可能性があると報告書は述べています。例えば、学業成績におけるジェンダー格差は狭まり、環境を害する要因にさらされる危険性も減少するでしょう。


紛争により首都ハルツームから逃げ、ポートスーダンの避難所で暮らしている12歳のアブデルガデルさん(スーダン、2024年8月15日撮影) (C) UNICEF/UNI627433/Elfatih
「世界子供白書2024」は、子どもの権利条約に規定されているように、あらゆる戦略、政策、行動において、子どもの権利を中心に据えることの重要性を強く訴えています。 また、3つのメガトレンドがもたらす課題と機会に対応するために、以下に取り組むことを呼び掛けています。
・子どものための教育、サービス、そして持続可能でレジリエントなまちづくりへ投資する。
・インフラ、技術、必須サービス、社会支援システムにおける気候変動耐性を強化する。
・すべての子どものための、コネクティビティ(連結性)と安全な技術設計を提供する。




11月20日の世界子どもの日、2024年のテーマは「Listen to the Future(未来に耳を傾けよう)」です。このテーマに沿ってユニセフは、世界各地の子どもたちに「2050年にどんな世界になってほしいか」を、おとなに伝える手紙を書いてもらいました。パレスチナ・ガザ地区、ウクライナ、タンザニア、ミクロネシアなどから届いた手紙には、子どもが安全で健康で教育を受けられること、そして戦争や気候災害から守られることを願う内容などが書かれています。
・ 子どもたちからの手紙はこちら(英文のみ)> https://www.unicef.org/stories/dear-adults 
・ 手紙を読んでいる子どもたちの動画はこちら> https://youtu.be/rFk9c5pdni4

「世界子どもの日は、世界のリーダーたちが、子ども一人ひとりの権利とウェルビーイングに対する自らのコミットメントを示す機会です。私たちは明日の子どもたちのためにより良い未来を形作ることができます。そしてそれは、今日から始めなければなりません」(ラッセル事務局長)

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■ 注記
ユニセフは、メガトレンドをはじめ多くの社会経済指標を踏まえ、2050年の子どもたちを取り巻く世界を予測するシナリオの分析を、ヴィトゲンシュタイン人口統計学および世界人的資本センター(Wittgenstein Centre for Demography and Global Human Capital)に委嘱しました。シナリオは、起こり得る結果であり、予想ではありません。

極端な気候:この分析では、熱波や河川の洪水などの気象現象が「極端」と分類される境界値を定めています。例えば、河川の洪水では、産業革命以前には100年に一度しか起こらなかった洪水の水位を超えた場合、極端な現象と見なされます。この境界値は、科学文献から導き出されています。

■「世界子供白書2024:2050年の子どもたち(英語原文」は、下記でご覧いただけます。
https://www.unicef.org/reports/state-of-worlds-children/2024
※世界子供白書2024の日本語版は、2025年春頃に発行予定です。

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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。(https://www.unicef.org
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する32の国と地域を含みます

■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、32の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。(https://www.unicef.or.jp
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