ユニセフ広報官、ガザとの類似点を指摘
空爆が3日間続き、甚大な被害を受けたベイルート南部郊外の様子(2024年10月撮影) (C) UNICEF/al Mussawir - Ramzi Haidar
【2024年11月19日 ジュネーブ発】
レバノンでおよそ1週間の視察を終えたユニセフ(国連児童基金)広報官のジェームズ・エルダーは、ジュネーブで行われた国連の定例記者会見において、以下の発言を行いました。
レバノンでは2カ月足らずの間に200人以上の子どもが命を落としているにもかかわらず、この暴力を食い止めることができる人々から何の反応もないという、当惑するような状況が起きています。
レバノンの子どもたちにとって、それは暗黙裡に恐怖を常態化させたことになります。
それを明らかにするために、レバノンの子どもたちの過去10日間の状況を見てみましょう。
11月10日の日曜日に、親戚関係にある7人の子どもが亡くなりました。南部の暴力から逃れてレバノン山中で避難する場所を探していたところ、子どもを含めたこの一家全員27人が、死亡したのです。
月曜日には、2人の子どもが母親と共に亡くなり、10人が負傷しました。
火曜日には、13人の子どもが亡くなり、13人が負傷しました。負傷者の中には、攻撃でただひとり生き残った8歳のアフマドさんも含まれます。
4人の子どもが爆撃によって命を奪われた住宅跡を訪れたユニセフのエルダー広報官。子どもたちのおもちゃや本、ランドセルががれきに埋もれて残されていた(レバノン、2024年11月14日撮影) (C) UNICEF
水曜日には、同じく南部での戦闘から逃れようとしていた4人の子どもが亡くなりました。
木曜日には、3人の子どもが亡くなり、13人が負傷しました。
11月16日の先週土曜日には、5人の子どもが亡くなり、そのうち3人は同じ家族の子どもでした。この日の負傷者の中には、サッカーのレバノン女子代表チームの若手選手、セリーヌ・ハイダルさんもいました。彼女は首都ベイルートで攻撃されている地域から避難しようとしている最中に、着弾したミサイルの破片が頭部に当たり、意識不明の状態です。
そして日曜日には、4歳の女の子の双子が亡くなりました。
まさに、この2カ月間、レバノンでは毎日平均3人以上の子どもが命を落としています。そしてさらに数えきれない子どもが怪我を負い、心に傷を受けています。
人類が、ガザの子どもたちに現在行われているような殺戮行為を再び目撃することが決してないよう、私たちは願わなければなりません。しかし、レバノンの子どもたちは、それと似た恐ろしい状況にあるのです。類似点を挙げてみましょう。
- レバノンの何十万もの子どもが家を失いました。
- 度を超した攻撃により、子どもたちに必要なインフラが次々と攻撃されています。保健医療施設が攻撃され、保健スタッフが命を落とすことが、ますます頻繁に起きています。レバノン保健省によると、11月15日現在、保健分野のスタッフ200人以上が死亡し、300人が負傷しています。
- 11月初旬にレバノンの子どもたちのために一部の学校を再開したものの、週末に広範囲にわたる攻撃があったため、再びすべて閉鎖されました。
- ガザ地区との4つ目の恐ろしい類似点は子どもたちへの深刻な心理的影響です。 情緒不安の兆候がますます明らかになっています。
- そしてガザ地区との最も懸念される類似点は、子どもの犠牲者の増加に対して、影響力のある人々から有意の反応が何も得られていないことです。
爆撃などにより負傷した子どもたちが入院するベイルートの病院で、やけどを負って皮膚移植をした2歳のイヴァナと対面したエルダー広報官(レバノン、2024年11月12日撮影) (C) UNICEF/UNI682897/Choufany
人道危機への対応として、ユニセフは数万枚の毛布、寝袋、マットレス、衛生キット、食事、数百基のシャワーとトイレを提供しました。また、公立学校の再開を支援し、子どもたちに保健医療サービスを提供する移動式チームを派遣しました。子どもたちに心理社会的支援を提供し、攻撃を受けている保健医療システムに大量の保健医療に関する物資を供給しました。また水に関する取り組みにより、45万人が再び安全な水を利用できるようになりました。ユニセフの最新の支援要請に対する資金調達率は20パーセントにも満たないという事実にもかかわらず、です。そして、攻撃が激化するにつれ、必要とされる支援の程度も高まっています。
レバノンでは、ガザ地区で起きていることとほぼ同様に、耐え難いことが暗黙のうちに当たり前のことに変わりつつあります。そしてこの事態を恐ろしいことだ、と思う世界の人々の気持ちは徐々に、また起きたこと、という気持ちの域に達しつつあります。
そしてまたしても、子どもたちの叫び声は無視され、世界はまるで耳が聞こえなくなったかと思うほどに沈黙し続け、私たちは想像を絶するものを、子ども時代の光景として再び許容するような事態となるのでしょうか。それは、恐ろしく、受け入れがたい「ニューノーマル」――新たな日常です。
* * *
■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。(https://www.unicef.org )
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する32の国と地域を含みます
■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、32の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。(https://www.unicef.or.jp )
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