新製品のnwm DOTSとnwm WIRED

NTTソノリティは同社が展開するオープンイヤー耳スピーカー「nwm(ヌーム)」の新製品2機種を11月20日に発売した。いずれもユーザーの声を反映し、前モデルからフルモデルチェンジした製品で、オープンイヤーの利用シーン拡大を図る。

新製品のnwm DOTSとnwm WIRED

オープンイヤーは既存のイヤホン・ヘッドホンの課題を解決

NTTソノリティは、オープンイヤー型イヤホン・ヘッドホンを「耳スピ」としてラインアップ展開している。耳スピは耳とスピーカーを合わせた呼称で、新製品のnwm DOTS(以下、DOTS)はオープンイヤー型の完全ワイヤレスタイプ、nwm WIRED(以下、WIRED)は有線タイプだ。

発売当日は東京・港区のスタジアムプレイス青山で新製品発表会が開催された。登壇したNTTソノリティの坂井博代表取締役社長は「nwmは音だけを楽しむ『没入』から周囲との『共存』へ、をコンセプトにしています。当社の最新調査では、約4割の人がヘッドホンやイヤホンを毎日3時間以上使用していて、その中で新しい音の課題が生まれてきています」と話した。

製品発表会で登壇したNTTソノリティの

坂井博社長

この新しい課題とは、装着しているイヤホン・ヘッドホンから流れる音に没入することで周囲とのコミュニケーションロスや車両などとの接触の危険性が高まること。また、長時間の装着による耳蒸れや圧迫感での悩みなども課題の一つという。

同社のヘッドホン利用者500人に対する調査によると、イヤホン・ヘッドホンを装着していて呼びかけに気がつかなかった経験があるのは60.6%で、逆に呼びかけた人に無視された経験は50.4%、イヤホン・ヘッドホンを装着していて歩行中に車両の接近やクラクションに気がつかず、危険を感じたことがある人は30.8%だった。

「呼びかけが聞こえないのは、仕事中であればストレスにつながりますし、屋外や歩行中であれば危険につながります。これらはオープンイヤーが浸透することで解決できるのではないかと考えています」と坂井社長は述べた。

オープンイヤーは既存の

イヤホン・ヘッドホンの課題解決につながる

上記のような背景からオープンイヤーに対する注目度は急速に高まっており、2019年と2024年の直近6カ月平均で比較すると“オープンイヤー”の検索数は約7倍に増加しているという。オープンイヤー型ワイヤレスイヤホンの市場も右肩上がりで2023年は前年比110%、2024年も前年比150%の成長と同社では予想している。

この市場拡大傾向は日本だけでなく、世界最大のイヤホン市場である中国においても同様。2024年上期の中国Bluetoothイヤホン市場でオープンイヤーの出荷台数は前年同期比で303%増加しているのだ。これを受けて同社では2024年11月、中国市場に参入し、nwmブランドをローンチした。

NTTソノリティは中国市場で

nwmブランドをローンチ

nwm DOTSはNTTの2つの独自技術を搭載

新製品のDOTSは先述のとおり、オープンイヤー型の完全ワイヤレス耳スピーカーで価格は2万4200円。2つの円が重なる印象的なデザインで、それぞれの円はスピーカー部とタッチセンサー部だ。スピーカー部の色はベーシックなブラックで、タッチセンサー部にはシックなアクセントカラーを配したツートーンとなっている。

シリコーンフックとテールチップで耳の上部に引っ掛けて装着すると、スピーカー部の位置は耳穴のすぐ前にくる。スピーカー部は耳に触れておらず、耳をふさいでいないので周囲の音が自然な状態で聞こえる。

5色のカラーバリエーション(下)のうち、

手前の2色は発売済みだが奥の3色は12月上旬発売予定

DOTSは、同社が独自開発した特許出願中のPSZ(パーソナライズドサウンドゾーン)と特許取得済みのMagic Focus Voiceの2つの技術を搭載している。前者はオープンイヤーにも関わらず、耳元だけに音を閉じ込めて音漏れを抑制する技術で、後者は通話時に周囲の音をカットして自分の声だけを相手に届ける技術だ。

DOTSはNTTの音を操る独自技術をW搭載

直径12mmのドライバーは前モデルのnwm MBE001(以下、MBE001)と同じサイズだが、振動板やコイルを設計し直してチューニングも変え、MBE001よりも音質と音圧が向上し、パワーアップしたという。

DOTSの音質や音漏れは前モデルよりも向上

再生デバイスと接続するBluetoothの規格は5.3。音楽再生時のコーデックはSBC、AACに加えて、高音質・低消費電力のLC3にも対応している。

連続再生時間は本体が最大8時間、充電ケース込みで最大32時間と前モデルよりもバッテリーの持ちがよくなった。充電時間は本体が約1時間、充電ケースは約2時間。5分間の充電で約1時間の再生が可能だ。

WIREDはオープンイヤーのエントリーモデル

もう一つの新製品であるWIREDは、文字どおり再生デバイスと有線でつなぐタイプ。価格は4950円とリーズナブルな設定で、オープンイヤーのエントリーモデルという位置づけだ。

有線なのでバッテリーの残量を気にせず使用でき、ゲームや動画視聴、オンライン会議などでは音声の遅延がない。

WIREDのカラーバリエーションは

ベーシックとパステルの5色

WIREDはnwm MWE001(以下、MWE001)の後継機種で、DOTSにも採用されているPSZ技術を搭載。12mmのドライバーはDOTSと同様に完全新設計である。有線タイプに合ったチューニングを行い、音質や音圧、音漏れもMWE001よりスペックアップしているのだが、コストパフォーマンスを追求して価格は5000円以内に抑えた。

重さは両耳で約7.2gとMWE001より20%軽く、コードを含めた全体の重さは約16gと非常に軽量。コードも改良し、絡みにくくしたという。

WIREDはスピーカー部周辺の太くなっている部分を

耳の上部にかけて装着する

コスパの良いエントリーモデルとして老若男女問わず、多くの人に使ってもらいたいとの考えからパッケージにもこだわり、自分用だけでなくギフトとしても選びやすいパッケージデザインにしている。

本体色に合わせたパッケージはギフトにも最適

着けていることを忘れてしまう軽やかな装着感

発表会では体験の場が設けられていたので、両製品を試聴してみた。まずは装着感。本体が非常に軽量なため、両製品とも耳の上部に何かが触れているだけの感覚で、違和感は全くない。意識しなければ装着していることを忘れてしまうのではないかと思えるほどだった。

オープンイヤーの特徴でもある外音の聞こえ方は、両製品とも耳をふさがないので周囲の音が自然に耳に入ってくる。当たり前だが、完全ワイヤレスイヤホンの外音取り込みとは全く異なり、周囲の音がまさに自然の状態で聞こえるのだ。

音楽を流しながら対面形式で会話をすると、相手の声が普通に聞き取れる。再生コンテンツの音量にもよるが、BGMが流れている環境下で会話をしているような感じだ。

マネキンを使ったDOTS(左)と

WIRED(右)の装着イメージ

音質について、DOTSは非常にクリアな印象。どちらかというと中~高音域の存在感が際立っており、オープンイヤーという性格上、低音域はやや控えめ。nwmのコンセプトである周囲の音と共存するという意味では高音域もピーキーではなく、ナチュラルでバランスの取れた音質だ。

WIREDもDOTSに似た印象だが、音の解像度や量感ではDOTSに及ばない印象だ。一つ一つの音を聴き取るというよりも、まさにながら聴きのスタイルにピッタリ。コスパに優れたエントリーモデルとしてはオープンイヤーの特徴や特性がしっかり感じられるモデルといえるだろう。

発表会では新製品2モデルに加えて、来春発売予定のオープンイヤー型ワイヤレスネックバンドの耳スピーカーnwm GO(以下、GO)も披露された。

2025年春に発売を予定している

ネックバンドタイプのnwm GO

GOはアウトドアなどの趣味や遊びにフォーカスしたアクティビティモデル。前述した音漏れ防止のPSZ技術を搭載し、ネックバンドによりアクティブな活動でもズレない安定性とオープンイヤーである快適性を実現したタイプだ。

体験を通じてオープンイヤーの特徴の認知拡大を図る

発表会終了後、坂井社長に話を聞いた。オープンイヤーの分かりやすいユースケースとして坂井社長が例に挙げたのが、育児をしている時期の使用だ。

「小さいお子さんがいると自分の時間がほとんど取れないのが実情です。家事や炊事をしながらYouTubeを見たり、音楽を聴いたりしたい。そこで、普通のイヤホンだとお子さんの声に気がつかないため片耳だけにしていたのですが、周囲の音も聞こえると知って、新たにオープンイヤーを買って使っているというケースがありました。

周囲の音が聞こえるだけなら外音を取り込むアンビエントモードが付いたモデルもあります。しかし、お子さんに話しかけるときは自分の声がくぐもって聞こえるので、つい声が大きくなりがちです。オープンイヤーは自分の声も自然に聞こえるので、大きな声を出す必要がなく、自然なボリュームで会話ができます」

オープンイヤーは周囲の音が自然に聞こえるという特徴があるが、会話や通話の際に自分の声も自然な状態で耳に入ってくるのもユーザーにとっては大きなメリットのようだ。

オープンイヤーなら

自然なボリュームで会話ができる

オープンイヤーの使い方については、「私自身、映画や音楽などで集中して音を聴くときは、ノイズキャンセルを効かせたカナル型や密閉型を使っています。ただ、1日の間で装着している時間では、オープンイヤーの使用時間が徐々に長くなっています」と、生活シーンによってオープンイヤーと非オープンイヤーを使い分けているという。

ただし、「当社は音質にも妥協しないで製品開発を進めています。オープンイヤーでもこの音質なら十分と感じていただき、カナル型を使っている時間を徐々にオープンイヤーにシフトさせていきたいというのが、私たちの夢です」と坂井社長は述べた。

ラインアップが広がったnwmの販売拡大策では、公式ブランドサイトのリニューアルに伴う公式オンラインストアのオープンを挙げる。「nwmと組み合わせて付け替えられるようなアクセサリーなどを扱うことで、ユーザーにちょっとリッチな体験をしていただけるのではないかと考えています」

NTTソノリティの

最新耳スピのラインアップ

また、オープンイヤーの良さが分かるには、やはり体験してもらうことが必要。2024年は3月に開催された不快ミュージアムや7月の明治安田Jリーグワールドチャレンジ2024で同社のオープンイヤーを使用した体験の場を設けた。体験後はその場での製品購入も多かったとのことで、このようなタッチポイントをさらに増やしていく考えだ。

海外展開では北米と先述の中国ではローンチし、ヨーロッパではテストマーケティングを実施中。坂井社長は「それぞれの国に合ったユースケースを分かりやすい形で体験と合わせて提示し、グローバルで展開していきます」と語った。

グローバルでの展開にも意欲をみせる

坂井博社長

オープンイヤーのメリットはさまざまあるが、文中に記したように実際に装着して体験してみないと分からない面がある。多くの家電量販店では製品の体験を重視し、製品を試聴できる店舗も増えているので、ぜひ店頭で試してみよう。(BCN総研・風間理男)