~モノマテリアル化でリサイクル時の分別作業にかかる費用・時間を削減~
リユース・リサイクル促進設計の循環型学生服
子どもたちと学校を取り巻くさまざまな社会課題を解決するスクールソリューションカンパニーの菅公学生服株式会社 (本社:岡山市北区駅元町、代表取締役社長:尾崎 茂 以下:カンコー学生服)は、 2024年12月4日(水)~6日(金)の3日間、東京ビッグサイトにて開催された「エコプロ2024」(一般社団法人サステナブル経営推進機構、日本経済新聞社主催)において、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)ゾーンで、「循環型学生服」を展示しました。この学生服は、焼却により発生するCO2排出量削減を目指し、リユース・リサイクルしやすいように設計したプロトタイプです。
◆「循環型学生服」展示概要
【開発背景】
繊維・アパレル業界は、CO2排出や大量生産・大量廃棄といった課題を抱え、環境への負荷が大きいとされています。その中で、学校制服は3年間の着用を想定した丈夫な設計や、再生ペットボトル素材の活用など、従来からサステナブルな要素を取り入れてきました。さらに私たちは一歩進み、制服の設計と素材の両面で工夫を凝らし、リユースやリサイクルを促進できないかと考えました。
現在、繊維業界では、CO2排出量の削減を目指して服から服を作る(=服を循環させる)手法を積極的に研究しています。この取組みは、単にエコ素材を使用し制服を回収するだけでは課題が多く、実現が困難な状況です。
そこで、まず生徒一人一人が「制服はリサイクルできる」ことを認識してもらい、着用後にリユースやリサイクルを実行しやすい工夫を制服に取り入れること、また、回収後にリサイクルをしやすい設計や素材を取り入れることでCO2の排出量削減につながる循環型学生服の研究・開発にいたりました。
【デザイナー】
中野未咲希様
循環型学生服の研究に際し、サステナブルに非常に意識が高い若手デザイナーと共創を進めています。
サステナブルをテーマにしたコンクール「FASHION FRONTIER PROGRAM 2021」のファイナリストです。
※自然環境への配慮や循環型システムへの視点など、社会的責任が審査基準となるファッションコンクール
【制服リユース・リサイクルの課題】
(1)成長による買い替えの必要性
身長が伸びると、服自体はまだ着られる状態でも、新たに買い替えが必要になります。一方で、成長を見越して大きめのサイズを購入すると、不格好になってしまうという問題があります。
(2)リユース作業の負担
使用可能な制服をPTAの方々などが回収している学校もありますが、回収や分別、着られない制服の処分などさまざまな作業が発生します。現在はこれらの作業が一部の先生や保護者の負担になっているという声も聞かれます。
(3)リサイクルの困難さ
制服には機能を高めるためにウールとポリエステルなど、複数の原料を混ぜた生地が使用されています。また、耐久性を高めたり型崩れを防いだりするために、芯地や裏地など生地以外にもさまざまな材料が使われています。リサイクルを行うには、制服を分解し、再資源化可能な部分だけを取りだす必要があり、この工程が困難です。
【循環型学生服の特徴】(1)リユースがしやすい
・フォーマル性を保ちながらもゆったりしたデザインで、成長後を想定して大きめのサイズを選びやすい仕様です。通常の制服の3サイズ上を着用するのと同じくらいのゆとりがあります。
・男女兼用デザインのため、卒業後のお下がり・お譲り時にリユースの幅を広げます。
・シワ加工により、大きめサイズの着用で発生するシワが気になりません。アイロンも不要となります。
(2)リサイクルがしやすい
・服を構成するパーツ(表生地・芯地・接着芯・釦・肩パッド)をポリエステルに統一(”モノマテリアル化”)することで、リサイクル時の分別作業にかかる費用・時間を削減します。
・ポリエステル素材には積極的に植物由来原料や再生ペット原料を使用しています。
・廃棄する野菜などを再利用した、環境にやさしい染料を使用しています。(ブレザー=たまねぎ、シャツ=お米)
・回収後の分解を簡易にする為、裏地なし・ボトムは金属ファスナーなしとしています。また、ワンタッチで取り外せるボタンや、肩パットやたれ綿がなくても見た目がかっこいい設計にしています。
(3)リユース・リサイクルの促進
・生徒/保護者が購入後および着用後も認識しやすいよう、制服のお手入れ方法からリユース・リサイクルの流れをブレザーの内側にプリントしています。
幅広い体型をカバーするゆったりデザイン。男女兼用でもあり、リユースの幅を広げる
再生PET樹脂や植物由来原料配合のバイオユリアボタンを使用
ブレザーの内側にリユースやリサイクルの流れをプリント
【当日の様子】
【開発担当の思い】“罪悪感なくアパレルを楽しみたい”“繊維to繊維を超え、学生服to学生服の未来がきてほしい。そのためには、開発段階で、リサイクル時点を想定したものづくりが必要である”という想いを核に、開発を進めています。
エコプロ当日、モノマテリアル化を主軸においた、易リサイクル設計の考え方には、肯定的な意見が多かったような印象です。
また、「大人になってから振り返ると、学生服はよかったなと思う。当時は何も考えずに着用していた」という声をよくお聞きしました。学生服の良さを実際に着用しながら感じてもらうためにも、学生の方々へ学生服の価値をお伝えしたいと改めて思いました。
モノで溢れる現代において、 “ずっと大事にしたい”“できるだけ長く使えるように大切に扱おう”という感覚を持つだけでも環境配慮への一歩だと考えます。学生服を通じて、これからも環境配慮へのアプローチを形にしていきます。
カンコー学生工学研究所 淵脇 菜桜
◆カンコー学生工学研究所とは
子どもたちを「カラダ」「ココロ」「時代」「学び」の4つの視点で見つめるカンコーの「学生工学」という考え方。この考えのもと基礎研究を行い、時代性、子どもたちの成長、嗜好などを調査し、新たな価値を創出することが私たちカンコー学生工学研究所の使命です。
また社外にも門戸を開き、思いを共にする企業や研究機関と共創することでこれからの活動をさらに深め、学生たちや保護者の方々、学校・地域社会の皆さまが求める 「学生にとって本当に価値あるもの」を創出していきます。そして、その先にある安心で快適な学生生活の実現を目指します。
サイト:https://kanko-gakuseifuku.co.jp/lab/
◆菅公学生服株式会社
1854年(安政元年)創業。学校制服・体操服を通じて、子どもたちと学生生活を支えるすべての人々に寄り添い、さまざまな社会課題を解決するスクールソリューションカンパニーです。
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