~60歳代男性の表情表出の特性と表情筋トレーニングがもたらす効果~
株式会社マンダム(本社:大阪市 社長執行役員:西村健 以下マンダム)は、「人間系」企業として、生活者が喜び、心躍らせ、笑顔になっていただける「新たな価値づくり」を追求しています。これまでも、印象肌研究を通じて、肌の状態がもたらすヒトの印象についてさまざまな検証を重ね、スキンケア製品の開発に応用してきました。
今回、我々はアッパーミドル男性※1が持つコミュニケーションにおける表情の悩みに着目しました。40歳代と60歳代男性の表情表出を、表情分析ソフトウェアを用いて定量的に解析し、比較しました。その結果、60歳代のほうが、無表情時にネガティブな印象を与えていること、笑顔の表出時に使う筋肉の動きに衰えが見られることがわかりました。さらにこれらの改善方法として、表情筋のトレーニングが有効であることを確認しました。
なお、本研究成果については、2023年5月26日(金)~28日(日)に開催された「日本感情心理学会 第31回大会」にて発表しました。
- 研究の背景
近年の報告によると、男性就業者の割合は、60~64歳で83.9%、65~69歳で61.0%と高く、年々上昇傾向にあります※2。また、定年後には新たなコミュニティへの参加などを通じて、アッパーミドル男性におけるコミュニケーションの機会は増加する傾向にあると考えられます。アッパーミドル男性を対象にコミュニケーションや表情に関するヒアリング調査を行ったところ、「普通の表情をしているのに怒っているように見られる」「自分では笑顔のつもりなのに笑顔に見られない」といった、自分が意図した表情が出せていないという悩みが多く聞かれました。人とコミュニケーションをとる際には、聴覚情報よりも外見やしぐさ、視線などの視覚情報が大きな影響を与えるとされ※3、特に内的な感情を表出する顔の表情は、コミュニケーションにおける最も重要な要素だと考えられます。
我々は、アッパーミドル男性が抱える表情表出に関する悩みの要因を把握し、その改善を通じてコミュニケーションの円滑化に貢献することを目指して研究に着手しました。
- 研究内容
表情の分析には、FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)※4という手法があります。FACSは、顔の筋肉の動きをアクションユニット(以下AU)という単位に分けて記録することで、複雑な表情を細かく分析し、筋肉の動きを詳細に把握できます。FACS理論に基づいた表情解析ソフトウェアFaceReaderTMでは、AUを基に「喜び」や「悲しみ」のような感情も検出できます。我々は、このソフトウェアを用いた検証により、アッパーミドル男性の表情について以下の結果を得ました。
1.無表情時には、40歳代ミドル男性よりも60歳代アッパーミドル男性のほうがネガティブな印象を与える
無表情時の40歳代と60歳代の男性を比較すると、60歳代の男性のほうがネガティブ情動※5の割合が高いことが分かりました(図1)。これは、「普通の表情をしているのに怒っているように見られる」という経験が反映された結果であると考えられます。一方で、笑顔を作った時のネガティブ情動やポジティブ情動の割合は、年代間で大きな差は見られませんでした(図2)。この理由としては、笑顔の場合は表情表出における情動の個人差が大きく、年代の違いが影響されにくかったことが考えられます。
2.40歳代ミドル男性に比べて60歳代アッパーミドル男性のほうが、笑顔を作る筋肉の動きは衰えている傾向
笑顔を作る際の筋肉の動きについて、40歳代と60歳代で差があるかを調べました。まず、笑顔ができている被験者を選び※6、AUを比較しました。その結果、笑顔を構成するAU06(頬を上げる)およびAU12(口角を上げる)において、60歳代は40歳代に比べて低い値を示しました(図3)。これにより、60歳代では笑顔ができているとみなされた場合でも、頬や口角は上がりにくく、筋肉の動きに年代による差があることが明らかになりました。さらに、「無表情と笑顔を繰り返す」というタスクを被験者全員に対して実施したところ※7、笑顔の出現回数は、40歳代に比べて60歳代のほうが少ないことが分かりました(図4)。この結果は、60歳代男性のほうが表情の切り替えが難しくなる傾向を示しています。
3.表情筋トレーニングにより、60歳代アッパーミドル男性の表情の悩みが改善
我々は、表情筋の動きを良くするトレーニングが表情表出の改善につながると考え、表情筋トレーニングメソッド※8の効果を検証しました。60歳代男性36名(平均年齢63.7歳±2.4歳)をトレーニング群とコントロール群の2群に分け、表情データ取得試験を実施しました。初期と4週間後の表情解析データに基づいて、各パラメータの変化量を算出したところ、以下のような改善が確認されました。
・無表情時のネガティブ情動の増加が抑制された(図5、グラフa)
・笑顔時のポジティブ情動が増加した(図5、グラフb)
・笑顔時のAU06およびAU12が増加した(図5、グラフc,d)
この結果から、表情筋トレーニングメソッドは、無表情の時でも暗い印象を与えにくく、笑顔の時には楽しい気持ちがより相手に伝わるような効果が期待できます。これは、笑顔表出時の筋肉の動きの改善からも明確に示されました。
さらに、トレーニング群の被験者からは、「妻に顔の表情が明るくなったと言われた」「笑顔が自然にできて以前より表情が豊かになった」「笑顔が素敵で若くなったねと言われた」「自分に自信がついて気軽に人と話せるようになった」等のコメントも得られ、さまざまな場面で効果が実感できていることがうかがえました。
以上により、表情筋を動かすトレーニングは、60歳代男性の表情悩みに対して有効な手段であることが示されました。
今回得られた結果は、アッパーミドル男性が持つコミュニケーションにおける表情の悩み解決につながり、コミュニケーションの円滑化に貢献できると考えます。
マンダムでは、今後も人間系企業として人と人との繋がりを大切にし、年代を問わず幅広い生活者への新たな価値創出を目指し、研究活動に取り組んでまいります。
- 注釈および用語解説
※1 マンダムでは、55歳~74歳男性を「アッパーミドル男性」と称しており、本リリースでは、アッパーミドル層に属する60~69歳男性を対象とし、各種検証を実施した。
※2 令和5年版高齢社会白書(内閣府)を参照。
※3 言語情報、聴覚情報、視覚情報の3つの要素がコミュニケーションにおいてどのように影響を与えるかを示す「メラビアンの法則」があり、言語情報(言葉そのものの意味)が7%、聴覚情報(声のトーンや話し方)が38%、視覚情報(表情や身振り)が55%と言われている。
※4 FACS(Facial Action Coding System)は、P.エクマンらが提唱した、解剖学的に独立し視覚的に識別可能な表情動作の最小単位Action Unit(AU)を組合せて7つの感情を定量的に評価する方法。AUのうち、笑顔に寄与するのはAU06とAU12と言われている。
※5 FACSから検出される感情のうち、「悲しみ」「恐怖」「嫌悪」「怒り」「軽蔑」のパラメータの合計をネガティブ情動、「喜び」のパラメータをポジティブ情動と定義して、感情パラメータ合計からの百分率による割合を示した。
※6 専門パネル評価により、ポジティブ情動の強度が0.45以上の人を笑顔ができている状態と定義した。
※7 1秒ごとに無表情と笑顔を2分間繰り返すタスクにおいて、笑顔時にポジティブ情動の強度0.45以上が検出された回数をカウントした。
※8 1日に10分×2回、マッサージクリームを使用した表情筋トレーニングメソッド。
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