資生堂は、シミ研究の常識を覆すような革新的なアプローチで、シミの悪化メカニズムを解明しました。生きたヒトの皮ふをリアルタイムで観察することができるFLIM※1 を用いて、シミ部位の細胞代謝を評価する新手法を世界で初めて※2 確立し、これまで観察が難しかった、シミがどのように悪化していくかという「シミの一生」を時間軸で捉えることに成功しました。本手法を活用することで、シミ部位で起こる細胞老化現象がシミの悪化根源であることを解明し、シミの悪化に対応する独自のトリプル薬剤を開発しました(図1)。”シミの一生”に新たに着目し、従来のシミ研究の常識を覆すような、シミの悪化根源へ対応する新たなソリューションを実現します。
 この画期的な研究成果は、化粧品技術に関する世界最大の権威ある研究発表会であるIFSCC※3 の口頭発表基礎部門で最優秀賞を受賞し、次世代の化粧品技術として高く評価されました。加えて、第32回日本色素細胞学会学術大会(2024/11/2~11/3)にて発表しました。今後も先進の研究知見を応用し、革新的なソリューションの開発を目指していきます。
※1 FLIMとは:Fluorescence Lifetime Imaging Microscopy。蛍光寿命イメージング顕微鏡法。蛍光分子の固有の性質である蛍光寿命を利用して画像化する観察手法
※2 FLIMによる特定の電子伝達体から表皮のシミ部位の細胞代謝を評価する方法が世界初である(クラリベイト社調べ 2024年9月)
※3 IFSCCとは:The International Federation of Societies of Cosmetic Chemists。本研究成果は、第34回国際化粧品技術者会連盟イグアス大会2024 (2024/10/14~10/17)で最優秀賞を受賞




《研究背景》
 当社は100年を超える肌研究と先進のシミ研究から、これまでメラニンやシミが発生する肌内部環境への多角的なアプローチで様々なシミ形成要因を解明してきました。シミを解き明かすには皮ふ内部構造の観察が重要であると考え、シミでのメラニンの蓄積具合や異常な毛細血管の形成、メラニンの過剰生成を促す黒化スパイラルや慢性微弱炎症といったシミ特有の要因を突き止め、ソリューションを開発してきました。一方で、こうしたシミ特有の要因に結びつく肌内部のダイナミックな変化を実際の皮ふと同様の環境において細胞レベルでとらえる必要があることがわかってきました。しかしながら、生きたシミ内部を細胞レベルで、かつリアルタイムで解析することは困難でした。シミの根本解決のためには、”シミの一生”に着目し、皮ふ細胞の一生でおこっている活動状態、すなわち細胞内の代謝変化としてとらえる必要がありました。今回、FLIMを用いて生きた皮ふを観察する新手法を確立し、世界で初めてシミにおけるミトコンドリア代謝を観察し、その代謝状態を検証することに挑戦しました。

《FLIMを応用したシミ部位の細胞代謝を評価する新手法を確立し、シミ特有の細胞老化現象を解明》
 FLIMを用いた解析によって、生きたヒトの皮ふのシミ部位では、非シミ部位に比べて表皮細胞内のミトコンドリア代謝が低下していることが分かりました(図2)。また、過剰なメラニン蓄積が、このミトコンドリア代謝の低下を起こすことを確認し(図3)、さらに細胞老化も引き起こすことを明らかにしました(図4)。シミ部位では、メラニンの蓄積によってミトコンドリア代謝が低下し、細胞老化が生じることでシミが悪化すると考えられ、いわば、シミがシミを呼ぶ悪化根源があることを明らかにしました。




《資生堂独自のトリプル薬剤がシミ特有の細胞老化現象を改善》
 ヒトの皮ふで6週間の連用塗布を行った結果、資生堂独自のトリプル薬剤を配合した基剤において、シミにおけるミトコンドリア代謝が高まることを見出しました(図5)。細胞老化の主要な要因のひとつであるミトコンドリア活性低下を抑えるとともに、老化した細胞から分泌され、さらに細胞老化を悪化させるSASP因子※4 のひとつであるGROα※5 を抑制することが分かりました(図6)。
※4 細胞老化随伴分泌現象(senescence-associated secretory phenotype:SASP) と呼ばれる細胞老化した細胞が分泌する炎症因子等を含む様々な因子の総称
※5 表皮角化細胞(ケラチノサイト)から分泌されるSASPのひとつ。メラノサイトがメラノーマへ転換する過程にもかかわることが知られている



《今後の展望》
 資生堂は 2030 年に向けたビジョンとして「Personal Beauty Wellness Company」を掲げ、生涯を通じて一人ひとりの自分らしい健康美の実現を目指しています。多様な肌悩みに対応し、個々の美の追求をサポートするため、シミ・くすみなどの肌悩みに対する深い理解とソリューション開発に向けて研究を深化させていきます。

R&D戦略について:
 本研究はR&D戦略3本柱の1つである「Skin Beauty INNOVATION」のもと、シミ・くすみ、シワ、たるみ、毛穴など、長年に渡りお客さまが悩む「不変の肌悩み」の原因解明・ソリューション開発することを目的として進めました。
・2023 年統合レポート(ビューティーイノベーション)
https://corp.shiseido.com/report/jp/2023/message/cmio/?rt_pr=trr69
・キーワード
Skin Beauty INNOVATION、シミ・くすみ、シミの一生

《参考:関連する主なニュースリリース》
・シミ部位ではメラニンを蓄積した角化細胞の分裂が低下していることを発見(2008年)
https://corp.shiseido.com/jp/newsimg/archive/00000000000956/956_w6q94_jp.pdf?rt_pr=trr69
・シミの悪循環を抑制する新美白技術を開発(2010年)
https://corp.shiseido.com/jp/newsimg/archive/00000000001225/1225_g5j21_jp.pdf?rt_pr=trr69
・肌の奥からシミを増殖させる新たなメカニズムを解明(2012年)
https://corp.shiseido.com/jp/newsimg/archive/00000000001438/1438_n8i43_jp.pdf?rt_pr=trr69
・肌を切らずに毛細血管を可視化することに成功(2017年)
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000002265&rt_pr=trr69
・異常な毛細血管ネットワークがシミ形成に関与することを発見(2017年)
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000002264&rt_pr=trr69
・シミの肌内部における血管構造異常の3D可視化に成功(2018年)
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000002498&rt_pr=trr69
・シミ部位の血管密度が色素沈着の改善に影響することを発見(2020年)
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000002975&rt_pr=trr69
・血管を介したシミ形成に繋がる新たな要因を確認(2020年)
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003009&rt_pr=trr69
・細胞接着分子E-カドヘリンがシミの発生・定着に関与することを発見(2022年)
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003497&rt_pr=trr69
・加齢が日中の紫外線下でのシミリスクを増加させることを発見し、その抑制法を開発(2024年)
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003759&rt_pr=trr69


▼ ニュースリリース
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003932&rt_pr=trr69

▼ 資生堂 企業情報
https://corp.shiseido.com/?rt_pr=trr69
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