ハルツームのバシャール教育病院。これまで度重なる攻撃を受けてきた=2023年10月9日 (C) Marie Burton/MSF
国境なき医師団(MSF)は、スーダンの首都ハルツームのバシャール教育病院で、患者やスタッフに対する暴力的攻撃が続いていることを強く非難する。この病院は、準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」が支配している地域にある。あらゆる当事者が関与しているにもかかわらず、こうした攻撃はここ数カ月も続いている。MSFは、この病院での全ての医療活動を停止するという非常に難しい決断を下した。
度重なる病院への攻撃
2023年にスーダンで内戦が始まってから20カ月の間、MSFは病院スタッフやボランティアと共に活動してきた。この間バシャール教育病院では、武装戦闘員が武器を持って侵入しては医療スタッフを脅すという事件が繰り返され、その多くは他の患者より戦闘員を先に治療せよという要求であった。
2024年11月11日には、病院内で患者が射殺されるという事件が発生した。12月18日には、襲撃者らが救急病棟内で武器を使用して医療スタッフを脅した。その前には、病院に向けて発砲され、病院敷地内に銃弾が入り1人が負傷するという事件も起こっていた。
MSFの緊急対応コーディネーター、クレア・サン・フィリポは、次のように述べる。
「私たちがハルツームで目の当たりにしている苦しみは甚大です。激しく過激な暴力が毎日続いています。食料、物資、人道援助の不足と遮断により、人びとは生き延びるために必死です。
医療ニーズは極めて大きく、恐ろしい負傷をした人も少なくありません。一度に多数の負傷者が運び込まれる事態は半ば日常と化しています。
MSF、病院スタッフ、そしてボランティアは、非常に困難な状況の中で、不眠不休で医療を提供してきました。しかし、安全が守られずスタッフや患者の命が脅かされる中、活動を続けることは不可能です」
妨害される物資搬送や人員移動
バシャール教育病院は、ハルツーム南部で稼働を続けてきた数少ない病院の一つで、無償で医療を提供してきた。昨年9月末以降、戦闘の激化に伴い、激しい外傷を負って同院に運ばれる患者が急増。住宅地や市場での砲撃や空爆の後、数十人が一斉に病院に運ばれることもあった。
2025年1月5日、病院から1キロ離れた場所で空爆があり、50人が救急処置室に運ばれたが、このうち12人は病院への到着時にすでに死亡していた。
同時に、他の医療施設の閉鎖や診療縮小に伴い、小児科や産科の患者も増加。MSFはコレラやマラリア、デング熱の流行にも対応してきた。懸念すべきレベルの栄養失調も目にしている。
病院はこれまでにも深刻な困難に直面してきた。2023年10月、スーダン国軍によって外科用物資の搬入が妨害されたため、全ての手術が一時中断された。スーダン東部・ポートスーダンからの医療物資の搬送とスタッフの移動は、1年以上止められている。MSFは昨年7月にも、スタッフに対する脅迫や暴力のため、近隣のトルコ病院での医療活動を中断した。
バシャール教育病院はハルツーム南部で稼働を続けてきた数少ない病院の一つだ=2023年5月13日 (C) Ala Kheir/MSF
病院は命の危険なく治療が受けられる場所
サン・フィリポはこう訴える。
「これほど医療ニーズが高まっている中で、病院での救命医療が中止に追い込まれるのは、考えられないことです。一つの団体が活動停止を余儀なくされるたびに、生死の境にいる人から医療が遠ざかっていきます。病院とは、命の危険なく治療が受けられ、医療者が安全に医療を提供できる場所でなくてはなりません」
MSFは、内戦が始まって間もない2023年5月にバシャール教育病院を再開したボランティアや医療スタッフの活動に加わった。2023年5月から2024年12月までの間に、同病院は救急処置室で2万5585人の患者を治療したが、そのうち9000人超が爆発や銃創などの暴力によるものだった。同じ期間にMSFは3700件の外科手術(その大半は暴力による負傷)を行い、850件の帝王切開を含め約3800件の分娩を介助した。
MSFは、ハルツーム州のオムドゥルマン市を含め、スーダンの11州で活動を続けている。今後、バシャール教育病院で医療活動を再開できる状況になることを、MSFは求めている。
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