“90年代ヴィジュアル系”の魅力はどこにある?
――では、90年代のヴィジュアル系の良さは、どこにあると思いますか?
TaJI:「常に全力」ですよね。言葉にしてしまったら、軽くなってしまうかもしれませんが、音楽のために全力で、命をかけてやっているように感じます。
表現が難しいんですけど、佇まいで分かる感じがあって、今の時代には無いものを感じます。そのマインドは僕たちも受け継ぎたいですけど、単に「90年代っぽいものをそのままやりました」ということではなくて、現在の音楽の良さも混ぜ合わせて、更に新しいものを作りたいというのが、このコンセプトに込めた理想です。
黎:「自分たちをヴィジュアル系と思っていない」というか、「ヴィジュアル系」という意識がない上で、シーンが出来あがっていった結果、後付でそう呼ばれるようになった。これまでにないジャンルを作ったわけじゃないですか。最初にやった世代はすごいと思いますし、そういう発想力があるからこそ憧れる。
――ちなみに、90年代のヴィジュアル系とひとことで言っても、色々なバンドがいます。TaJIさんのルーツは?
TaJI:最初はX JAPANです。
――触れたきっかけは?
TaJI:僕、野球やってたんですけど……。
――! つまり、野球の応援歌の『紅』で?
TaJI:そうです。「この曲カッコいいな!」と思って調べてみたらX JAPANの曲だったんです。それでライブ映像を見たら、さらに「すっげえな!」と。あんなの見たことなかったし、映像を見て感動しました。
――これまで様々なミュージシャンの方の取材をしてきて、ルーツがX JAPANという方は沢山いましたが、「応援歌から」という方は初めてですね。他のメンバーの皆さんのルーツの話も伺いたいです。
黎:最初はJanne Da Arcですね。元々親や親戚がヴィジュアル系が好きで、その影響が強いんですが、最初に知ったJanne Da Arcの影響が一番強いと思います。
――ボーカリストとしての憧れの人はいますか?
黎:ホイットニー・ヒューストンですね。
――意外な人選が。
黎:バンドも好きなんですが、ポップスがすき、R&Bも大好きです。邦楽だとCHEMISTRYも好きですね。
渚:僕はふたりみたいに、どのバンドが好きというのはあまりなくて。好きになったきっかけは、当時中二病というか、病んでいた時期があって。その時に同じような心境だった友達からthe GazettEを教えてもらって……。歌詞が当時の自分にあっているなと。そこから自分でもネットで調べて聴いて、みたいな。
――では、そこからベースを始めたのでしょうか?
渚:いや、その前に友達からベースを貰ってたんですよ。「家にあって邪魔だからあげる」くらいの気持ちで(笑)。
――なんて気前の良い。尊敬するベーシストは?
渚:僕もヴィジュアル系ではないんですが、Aqua TimezのOKP-STARさんですね。
――根底にポップなものがあるんですね。
TaJI:そうですね、それが曲にも現れてると思います。
飴:僕は兄貴の影響ですね。最初兄貴がベースやギターを始めて、僕も真似して弾いていたんですけど、全然弾けなくて(苦笑)。その後地元でバンドを組むことになり、その時はギターボーカル志望だったけど、集まったのがギター3人とベースがひとりだったんです。「誰かドラムやれ」となるじゃないですか、そこで「ドラムなら兄貴に勝てるかな」と思い立って、ドラムを始めました。
L’Arc~en~CielやAcid Black Cherry、J-POPだとスキマスイッチやSuperflyのコピーなんかをやりました。一番影響を受けたのは、UVERworldですね。ちなみに、好きなドラマーは、B'zのサポートもやっているシェーン・ガラースです。
――ちょっと意地悪な質問をしますね。先程おっしゃっていたように90年代のバンドは「ヴィジュアル系」と掲げていないじゃないですか。で、今、先人に憧れて「ヴィジュアル系」というフォーマットがある中で「ヴィジュアル系」をやるっていうジレンマはあります。そこに関しては、どう捉えていますか?
黎:今現在「ヴィジュアル系」を名乗ってやっていることと、僕たちが憧れたものって違うと思うんです、別ジャンルといってもいい。その中で新しいものを自分たちで作っていって、認められるまで頑張るしか無いのかな。今の「ヴィジュアル系」で上を目指していくのであれば。