ハイセンスのドラム式洗濯乾燥機HWF-D120XL-W

ハイセンスジャパンは、このほどドラム式洗濯乾燥機の新製品HWF-D120XL-Wを発売した。新製品は日本の消費者ニーズをリサーチして、そのニーズに合致した機能を搭載しているという。同社では今年からエアコン、冷蔵庫、洗濯機と生活に密着したカテゴリの新製品を続々と市場投入しており、今回の新製品は同社が日本で発売する初のドラム式洗濯乾燥機だ。

ハイセンスの洗濯機はグローバルで生産台数が800万台超

2025年1~9月におけるテレビの国内販売台数シェアで、ハイセンスジャパンはTVS REGZAとシャープに次ぐ3位。テレビでは年々その存在感が増しており、25年9月には国内で最大の画面サイズとなる116V型の液晶テレビも発表した。

しかし、グローバルでのハイセンスはエアコンや冷蔵庫、洗濯機などの生活家電も展開している総合家電メーカーなのだ。洗濯機に関しては全世界に7カ所の開発拠点と2カ所の生産工場があり、24年の総生産台数は800万台以上という。

同社がこれまで発売してきた洗濯機は、乾燥機能のない縦型の全自動洗濯機のみの展開だった。洗濯機市場ではドラム式洗濯乾燥機が伸長しており、今回発売したHWF-D120XL-W(以下、D120XL)は、市場の動きに合わせたものといえるだろう。

ハイセンスジャパン(以下、ハイセンス)が日本の洗濯機市場に参入したのは、16年。洗濯容量5kg前後の小容量モデルが中心で、徐々に容量を拡大してラインアップを拡充してきた。このラインアップ拡大戦略が功を奏し、国内での出荷台数・金額は22年を基点とすると、24年は130%超に伸長している。

ドラム式洗濯乾燥機の購入者に対する24年のアンケート調査では、購入時の重視ポイントに挙げられた上位2点が洗剤・柔軟剤の自動投入と本体寸法・置き場所への設置性だった。

これも含めて直近3年間の重視ポイントをみると、上記の本体寸法・置き場所への設置性に加えて乾燥容量、乾燥フィルターの清掃性、乾燥方式の重視度が高くなっていることが分かった。

この購入者が重視するポイントを押さえたうえで、新製品ではターゲット層を設置スペースが限られている若年単身世帯と子育て世帯に据えた。また、サブターゲットとして中高年の買い替え層も視野に入れ、コンパクトで大容量かつプラスアルファの便利機能を搭載したドラム式洗濯乾燥機として開発されたのが、D120XLである。

洗剤・柔軟剤の自動投入機能や温水洗浄に対応

D120XLの特長をいくつか紹介しよう。まずは、本体寸法と設置性だが、本体のサイズは幅598mm×奥行630mm×高さ1007mmで、洗濯容量は12kg。洗濯容量が同じクラスの製品の中ではトップクラスのコンパクトさという。

D120XLの乾燥にはヒートポンプ式を採用し、乾燥容量は6kg。ヒートポンプ式はヒーター式よりも省エネで、温風の温度が約65度と低いため布傷みを抑え、シワになりにくいというメリットがある。標準コースの運転目安時間は洗濯~乾燥で約124分だ。

液体洗剤と柔軟剤は2つのタンクによる自動投入機能を採用し、毎回自動で適切な量を投入。液体洗剤のタンク容量は700mLで柔軟剤は600mLである。

洗浄方式はコースに合わせて、たたき洗いとゆらゆら洗い、遠心洗いの3種類がある。たたき洗いはドラム式ならではの洗浄方式。ドラムが回転することによって衣類が持ち上げられて下に落ち、落下した際の衝撃や摩擦で汚れを落とす。

ゆらゆら洗いは文字どおり、洗濯槽をゆらゆらと揺らすような動きの洗浄方式だ。実際は単に揺れているだけでなく、槽内に配置されたリフターとの効果で衣類を動かす。同社によれば「非常にゆっくりとした動きで、強くない叩き洗いのイメージ」。遠心洗いは槽洗浄に用いられ、通常の洗濯では使用しない。

また、これらの洗浄方式と合わせて、温水を使用した温水洗浄機能を搭載。水温は20~60度までの4段階から選ぶことができ、冷たい水では落としきれない皮脂汚れや黄ばみなど、衣類や汚れの種類に合った温度で汚れを落とす。

基本コースに加えて8つのダウンロードコースも搭載

D120XLには標準やおいそぎ、つけおきなど11コースが搭載されているが、このほかに同社のConnectLifeアプリと連携した8種類のダウンロードコースもある。同コースは特定の衣類や洗濯物に特化して汚れを落とし、長期使用の過程で変化するライフスタイルや家族構成などに合わせた洗濯が可能だ。

「ダウンロードコースは、変化するユーザーのライフスタイルに対して洗濯機も二人三脚で進化していくコンセプト」と同社では説明する。ダウンロードコースは最大3種類の選択が可能で、子どもの成長やジム通いなど、ライフスタイルの変化に合わせて入れ替えをすることもできる。

いくつかのダウンロードコースを紹介しよう。ランジェリーコースは型崩れやほつれなどを防ぐため、前述のゆらゆら洗いで優しく洗い上げる。スポーツウェアコースはゆらゆら洗いとつけおき洗いを組み合わせて、ほつれを抑えながら汗のニオイもしっかり除去する汗に特化したコースだ。

泥汚れコースは自動投入機能を利用して3度洗いを行うコースで、文字どおり泥汚れに特化したコース。タオルリセットコースは、酸素系漂白剤と温水洗浄によりタオルがゴワゴワする根本原因である蓄積された柔軟剤と洗剤のカスや皮脂汚れを徹底洗浄し、タオルの風合いやふんわり感を復元するという。

簡単なフィルター清掃と自動槽洗浄・乾燥機能を搭載

ドラム式洗濯乾燥機の購入者が重視したポイントの一つに乾燥フィルターの清掃性があることは先述のとおりだ。他社製品では自動掃除と組み合わせることで乾燥フィルターをなくしたモデルもあるが、ハイセンスは乾燥フィルターを搭載している。

同社によると、当初は乾燥フィルターを省くことも検討したが、「乾燥時に出てくる乾いた糸くずやホコリを水で濡らして集める方法が本当に適切かどうかを検討しました。結果的には乾燥フィルターや排水フィルターで集めた糸くずやホコリを簡単に捨てられる方が良いと判断しました」と同社では話す。

D120XLに搭載した乾燥フィルターはボックス状になっており、本体から引き出しても糸くずやホコリがこぼれたりしない。掃除をする際は乾燥フィルターネットを取り外して、ボックスの内側と乾燥フィルターネットに溜まった糸くずやホコリを取り除くだけだ。

本体下部の排水フィルターは櫛のような形状になっていて、水洗いすると集められた糸くずなどがキレイに流れる構造になっている。

同社では抜本的にメンテナンスが不要ならまだしも、必要ならば、いかにメンテナンスの作業を軽減するかということに注力したという。

強力な水流で槽を自動洗浄

フィルター以外のメンテナンスでは、3つの自動洗浄機能を搭載している。乾燥方式にヒートポンプを採用しているため、D120XLにはエアコンと同じ熱交換器が内蔵されている。自動熱交換器洗浄は熱交換器に付着したホコリを水で洗い流す。洗濯槽の内側と外側に付着した水分は自動槽乾燥でしっかり乾かし、カビの発生を抑える。

また、洗濯槽の内側や外側には洗剤や柔軟剤の成分が残り、それがカビの栄養源になる。D120XLの自動槽洗浄は洗浄方式で記述した遠心洗いにより、強力な水流で槽に付着した汚れや洗剤・柔軟剤の成分を洗い流す。

自動槽洗浄の動作をカットモデルで見たところ、非常に強力な水流で槽をガンガン洗っていることが確認できた。汚れを洗い流すというよりも、水流の勢いで槽から汚れを引き剥がすという印象だ。

ハイセンスの親会社が中国メーカーであるのはご存知のとおり。しかし、日本向け製品は日本で研究・開発をして、日本の消費者の指向やニーズに合致する製品づくりを行っているという。

「D120XLは開発から製品化までの過程で、日本の家庭環境の中で実際に使用し、テストを行ってきました。自分たちの目で見て、良いものと悪いものを見極めて他社のコピーではなく、ちょっと尖っている製品に仕上げていくというのが、当社の目指す方向性です」と同社では語る。

このところ、洗濯機の価格は上昇基調にある。洗濯容量12kgのドラム式洗濯機の新製品ともなれば、価格は20万円台半ばから30万円台半ばがほとんどで、まさに高額商品だ。このような価格状況の中、D120XLは10万円台半ばで、その価格のインパクトは非常に大きい。

製品に搭載している機能は紹介してきたとおりで、日本向け初のドラム式洗濯乾燥機ということもあり、非常に力が入った製品に仕上がっている。他社が追従できないほどの価格設定を実現できたのは、グローバル展開による部品・部材の共通化とあえて必要がないものは採用しないという決断の結果なのだ。そのコストパフォーマンスについては店頭で実機を確認されたい。

今後、さらにドラム式洗濯乾燥機のラインアップを拡充し、10年以内に業界トップ3に入ることが目標というハイセンス。後発メーカーゆえの着眼点や発想で、これからどのような製品が出てくるのかが楽しみだ。