EOS後のPC市場についてサードウェーブに聞いた

【Windows 10 EOS後の市場をどう動かす?・2】Windows 10のサポート終了(EOS)で国内PC市場は動いた。ただし先に動いたのは法人。個人は「まだ使える」「手間が嫌」「予算がない」などで足が重い。サードウェーブの長田康裕・リテール事業統括本部取締役兼上席執行役員は、ポイント還元や下取り強化、最長48回の分割など、「買いやすさ」を設計し、店舗でのデータ移行支援や無償セミナーで「使いこなし」まで伴走するという。伸びる分野はゲーミングとクリエイティブ、自作PCも新しい層に広がる。EOS後を「創造の加速」に変える具体策を聞いた。(BCN・佐相 彰彦)

EOSで見えた需要の2極化

(以下、敬称略) 需要は8月、特に9月から伸びました。顕著なのは法人、お客様の準備やセキュリティーの義務感が強く、対応が早かったのでしょう。一方、個人は買い替えが進みにくかったといえます。

「コスト」「データ移行の手間」「OS移行への認知・動機付けの弱さ」とみています。今のPCが「まだ使える」という感覚も根強かったのではないでしょうか。だからこそ、具体的に手間とコストのハードルを下げる必要があります。

コスト面では、大型ポイントキャンペーンを展開しています。買い替え前提のお客様には、下取り額のアップや中古買い取りの強化で実質負担を軽減し、さらに最長48回の分割などの柔軟な決済手段を用意して購入のハードルを下げています。ゲーミングPCやグラフィック搭載モデルの査定アップも組み合わせて、コスト面での不安を細かく解消しています。単価が上がっても買えるようにすることが必要だと判断しています。

データ移行の面倒さに対しては、店舗で作業を代行する有償サポートや月額会員メニューを整備しています。メールの移行や特定フォルダーの移設など、お客様がつまずきやすい作業をまるごと任せる選択肢を提示し、買い替え後の立ち上げまでサポートしています。なお、当社のWebサイトでは「どこが面倒か」を明示し、解決策をセットで訴求して動機付けを高めています。自分で移行しなくてもいい選択肢を提示し、面倒なことは店に任せられる。これを伝えることが大事だと考えています。

“創る”楽しさでPCの価値が再定義

「ゲーミング」と「クリエイティブ」の分野と捉えています。ゲーミングノートPCのスペック向上を背景にノートPC市場の緩やかな伸長を見込んでいるので、当社のPCブランド「GALLERIA」の販売強化に力を注いでいきます。クリエイティブの分野は、クリエーター以外の方がPCでイラストや作曲、動画編集などの“創る”ことを行うケースはまだまだ少ないといえますが、「PCでこんなことができる(創れる)」という認識がさらに高まれば、確実に伸びると判断しています。ですので、しっかり投資していきます。

どの層も重要ですが、特に若年層へのアプローチを重視していきます。店舗での教室や体験展示を広げるほか、会員のクリエイティブ活動を支援するプログラム「DCP(ドスパラ クリエイティブプロダクション)」では動画セミナーなどを無償提供して“創る楽しさ”への入り口を広げています。こうしたアプローチで、スマートフォン中心の若い世代にPCスキルと創作体験を届けていきます。

個人の買い替えを促す

AIは確実にトレンドになりますが、現在のAIはクラウド依存が強い。一方、AI搭載のPCが浸透しているとはいえません。PCに搭載されているAIアシスタント機能が進化してハード依存のAIが増えれば、PCの新しい良さが再定義されると期待しています。複数作業を並行しながら創作する場面で、ローカルでのAI活用が価値を発揮する。これが「AI PC」の浸透につながるのではないでしょうか。

直近ではEOSを経て、個人の買い替えは向こう1年でなだらかに進むとみています。ですので、必要な時に迷わず乗り換えられる環境を整えます。EOSでは、PCが「(セキュリティーなどで)義務として買うもの」でしたが、今後はAIも含めて「創造を実現するものとして選ぶもの」を訴えていく。個人によるPCの買い替えを後押ししていきます。