EOS後のPC市場についてレノボ・ジャパンに聞いた

【Windows 10 EOS後の市場をどう動かす?・3】Windows 10のサポート終了(EOS)で日本のPC市場に「買い替えの波」が押し寄せた。「EOS終了後は『AI PC』が次の主役」――そう語るのは、レノボ・ジャパンの三島達夫・Lenovo Consumer 4Pシニアマネージャーと趙恩淳・マーケティング統括本部コンシューマー事業部部長だ。EOSで顕在化した需要、AI PCを「買いたい」に変える戦略、そして年末年始に向けた打ち手を聞いた。(BCN・佐相 彰彦)

EOS買い替え波の正体

(以下、敬称略) 前年同期比で200%、週によっては240%まで伸びた週もあり、土日に販売台数が3~3.4倍という現象が実際に起きました。買い替えの波は3月ごろから顕在化し、ピークが10月上旬でした。A4ノートのような15~16インチのスタンダードモデルがボリュームゾーンでした。

(以下、敬称略) 今、市場は一旦フラット化して落ち着いています。ただ、日本のPC買い替えサイクルは5~7年が一般的で、EOSによる強制的な買い替え需要とは別に、今後もWindows 11への移行、そして「AI PC」への移行が続くとみています。

サポート終了を明確にアピールし、移行の必要性を伝え続けています。店頭とオンラインの両方でセキュリティーとデータ移行の不安に寄り添う説明を強化することに加えて、実機でAI機能の役立つ瞬間を体験してもらう環境を整えています。

AI PCは「パーソナルツイン」 見えない手間を消す

日本では依然としてスタンダードモデルが強い。キーボードにテンキーが付いたり、光学ドライブがあるような身近な機能を持つモデルが市場の5~6割を占めています。一方で、AI PCは「どう役立つのか」を実体験で伝えることがカギですね。

「AI PC=パーソナルツイン」という考え方を浸透させたい。チャットではなくハードウェアが見えない手間を解消する、例えば長時間バッテリー運用や、ハードウェア・リコール機能で消えたデータを呼び戻すなど、日常の困りごとを解決する価値を前面に押し出していきたいと考えています。

店頭で触って理解、体験設計が購買を動かす

体験が最短距離です。AI PCは、これまでのPCよりも価格が高くなっています。言葉だけでは、価格がプラスになったことを納得させづらい。だから「Copilot」(マイクロソフトのAIアシスタント)で絵を描く、リアルタイム翻訳、オンライン会議の最適化など、店頭で触れるイベントを重ねています。ショッピングモールで、ビジネスパーソンやファミリー向けの体験イベントも実施しました。

ビジネスパーソンと学生をメインターゲットに、それぞれの利用シーンを徹底的に訴求しています。例えば、学生に「電源がない状況での授業でもバッテリーの持ちを最適化」といったハードウェア側の制御メリットを、ビジネスパーソンに「見えない手間の削減」などです。また、主婦層には家事の合間の効率化などを具体化して伝えています。

日本固有の壁を越える、検索文化と国産嗜好

日本は国産PC嗜好が依然として強く、また検索文化(単語検索)に慣れているため、AIチャットの文章活用がまだ一般化していないと判断しています。さらに、AIの言語学習データでは日本語が2バイト言語としてハンディを負いがちです。ここを店頭体験と使い方の具体化で解決していきます。

実際、今年前半は国産ブランドのデマンドが高かったといえます。市場では、国産のシェアが6~7割に達した局面もありました。ただ、AI PCは「ローカルで安全に個人情報を管理できる」というPCならではの強みがあり、スマートフォンでは実現できない価値を訴求できる。ここが普及の突破口になると考えています。

年末年始に再び波を作る、価値の「見える化」へ

年末年始には再び波を作る見立てです。EOSの追い風が落ち着いた今こそ、「買わなければ」から「買いたい」へ気持ちを切り替える。AI PCにおける付加価値の「見える化」を加速します。

オーストラリアなどではAI PCが盛況ですが、日本ではまだプレミアム層からの浸透が現実的。まずは実体験による理解浸透、そして家族それぞれの使える価値を訴えていきます。市場は安定しています。カギは「いかに使ってもらうか」。これに尽きると考えています。