天然のクニマスの謎解明と保全に向け大きな一歩
山梨県(知事:長崎幸太郎)は、令和7年12月2日(火)、西湖(山梨県南都留郡富士河口湖町)にしか生息しない野生絶滅種「クニマス」の自然界での産卵行動を世界で初めて撮影することに成功しました。
西湖に生息しているクニマスの生態は謎が多く、山梨県では生態を明らかにするための研究を行ってきました。特に産卵行動は深層・湖底で行われるため、これまで観察例がありませんでした。
今回の映像は、長年の研究に基づき産卵場と推定された地点に設置したモニタリングカメラにより撮影され、複数の個体が湖底の砂れきを選び、産卵・受精を行う瞬間を鮮明に捉えています。
※高感度カメラで撮影。赤い光がほとんど届かない水深30メートルの湖底のため、映像全体が緑がかった色調になっています。
▼映像内の主な瞬間

産卵前の産卵場所堀り行動(動画0分18秒頃)

産卵行動(動画0分33秒頃)
◆映像の撮影日時・場所等
日時:令和7年12月2日(火)11時50分頃
場所:西湖湖底 水深約30メートル(山梨県南都留郡富士河口湖町)
方法:研究により推定された産卵場辺縁に設置したモニタリングカメラによる
◆野生絶滅種 クニマスの生息史と保全の重要性
- 秋田県田沢湖のみに生息したが、昭和20年に入れられた玉川の水が酸性であったため絶滅。本栖湖・西湖・琵琶湖などへ卵が移植された記録はあったが、生息は確認されていなかった。
- 現在は東京海洋大学名誉博士としても活躍する宮澤正之氏(さかなクン)から、平成22年3月に京都大学中坊徹次教授のもとに届けられた西湖の黒いマスが、田沢湖で絶滅したクニマスであると判明。同年12月に発表され、日本中に大きな驚きと感動を与えた。
- 平成23年2月、中坊教授の研究チームはこの結果を学会誌に論文として発表し、「環境省レッドリスト(環境省が日本に生息又は生育する野生生物を対象に、専門家で構成される検討会において生物学的観点から種の絶滅の危険度を客観的に評価してリストにまとめたもの)」でのカテゴリーが「絶滅」から「野生絶滅」に見直された。
- 長年にわたりハゼ類の分類を研究され、日本魚類学会の会員でもある天皇陛下(明仁天皇、現上皇陛下)は平成22年のお誕生日の記者会見で、クニマスを「奇跡の魚(うお)」と話された。
- 現在、クニマスが自然界で生存するのは世界で唯一山梨県だけであり、早急な調査と保護が求められている。またクニマスはかつて「魚一匹米一升」と呼ばれ珍重されたと言われ、水産資源としての潜在的価値は高く、山梨県の内水面漁業への活用も期待されている。

西湖のクニマス
◆研究チームコメント

山梨県農政部水産技術センター 研究管理幹 青柳敏裕
今回、西湖の湖底に設置したモニタリングカメラによって、世界で初めて、クニマスの産卵の瞬間を撮影することに成功しました。
河川で産卵するサケ科魚類の映像記録は数多く存在しますが、クニマスが産卵を行う30メートルもの深い湖底は、昼間でも月夜程度の暗さであること、また水温は約5℃と非常に冷たいことから、直接の観察は困難であり、これまで一度も記録されたことがありませんでした。
こうした厳しい条件の中、当所では、漁業協同組合や潜水士など関係者の協力を得ながら生態調査を継続し、ようやくここまで調査を進めることができました。
◆今後の展望
引き続きクニマスの産卵からふ化後の状況について調査を重ね、西湖における生育環境の保全等を行うなかで、天然のクニマスの個体群の保全に努めます。
また、水産技術センター忍野支所では、クニマスの完全養殖技術(飼育親魚からの再生産)確立を目指し飼育試験を実施していますが、現状では良質な卵を安定的に産ませる方法が確立されておりません。今回得られた知見も参考にしながらクニマスの安定的な養殖の実現に向け、取り組みを進めてまいります。
◆上記に関する問い合わせ先
山梨県農政部水産技術センター TEL: 055-277-4758 MAIL:suisan-gjt@pref.yamanashi.lg.jp
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