
2025年に結成41周年を迎えたPERSONZが、毎年恒例の晦日ライブを大手町三井ホールで開催した。
昨年は3月から5月にかけて『QUEST FOR TREASURE LAND』と題した“neo acoustic tour”を全国16カ所で開催、6月には通算23作目のオリジナル・アルバム『WHAT A WONDER WONDERLAND』を発表、ヒューリックホール東京での『PERSONZ 40th Anniversary FINAL ONE NIGHT ONLY DREAM LAND』を挟み、7月から9月にかけて同作の発売記念ツアー『PERSONZ-2025【WHAT A WONDER WONDER LAND TOUR】』を全国16カ所で開催、10月にキャリア初の沖縄公演やビルボードライブ大阪での特別公演を行なうなど、渾身のパフォーマンスを各地で魅せたバンドの2025年集大成となるライブ。開演時間の17時になる頃にはすでに陽は傾き、ステージ後方の窓ガラスの向こうには高層ビルの窓明かりや木々を彩るイルミネーション、そして深紅に染まる東京タワーが黄昏のなか煌々と輝くのが見える。
この日はオルケスタ・デ・ラ・ルスなどの活動で知られる五反田靖(trp)を筆頭に、遠山拓志(trp)、上杉雄一(sax)、石戸谷斉(trb)から成る“WHAT A WONDER WONDERLAND BOYS”(JILLが命名)というブラスセクションと共に幕開けから合奏する異色のステージ。

場内が暗転し、最新作『WHAT A WONDER WONDERLAND』の冒頭を飾るインスト「ADVENTURE」が大音量で鳴り響く。オリジナルにはない管楽器の賑々しく華やかな音色に迎えられ、藤田勉(ds)、渡邉貢(ba)、本田毅(gt)が順次登場し、各自ソロを聴かせるという粋な演出。特別な夜に特別な編成で臨むバンドの特別な思いが伝わり、抑えきれぬ高揚感が訪れる。最後にJILL(vo)がやおら現れ、「ウェルカム・トゥ・ワンダーランド!」と絶叫、音楽の魔法を振り撒くおとぎの国の開門と珠玉の歌を通じた時空旅行の始まりを高らかに告げる。
最新アルバムの流れと同様に「WONDERLAND」へと移り、ジャジーな曲調と相俟って華麗かつ優雅な情調が場内を包む。赤いトップハットを被ったJILLは特大トランプカードを客席へ投げ、そのカードはさながらこの日限りのVIPショーへといざなう招待状のようだ。ドラム、ベース、ホーン、ギターとソロが披露されるたびに客席の歓声が大きくなり、場内の空気が徐々に熱を帯びたものになっていく。
「2025年も明日で最後、今日は思いきり弾けましょう!」というJILLの挨拶の後、東芝EMI(当時)/TM FACTORY在籍時の9thアルバム『Ours』から「FACE TO FACE」を披露。JILLがスマートフォンでのセルフィーでステージとフロアを記録しながら唄う趣向が楽しい(後日、その映像の一部をSNSで公開)。楽曲本来のダイナミズムがブラスセクションとの合奏によって強調、増幅されたのがわかる。彼らの客演に刺激を受けたのだろう、間奏のベースやギターのソロが格段に躍動感を増していた。そしてサックスやトランペットの流麗なソロが光るアウトロに身震い。バンドとブラス隊による実に理想的な相互作用として結実した一曲だった。

「今年は本当にライブが多くて、今日で35本目。来年はもっとやります! 毎年この年末のライブは1年の締め括りとして皆さんをワッと驚かせたい、楽しませたい、そんなことをしたくて今年はブラスセクションをお招きしました。今年もずっと突っ走ってきましたが、来年は午年なのでもっともっと突っ走っていきます!」
2026年に向けたJILLの頼もしい抱負が語られた後は、最新アルバムから「ブラスが入ったらもっと格好良くなるんじゃないかと思った」という「MOMENTS」。管楽器が加味されたことで、この瞬間を生きる誰もが自身の物語の主人公であるという気宇壮大なテーマと凛とした曲調がさらにスケールアップしたのだから、JILLの目論見は見事的中したと言っていいだろう。
ここでブラスセクションの面々が舞台から捌け、メンバー一人ずつ挨拶。
「今年も押し迫りましたけど、とても思い出深い年だったと思います。そんな1年の最後を皆様と一緒に過ごすことができて本当に幸せです。皆さん、今日はゆっくりと楽しんでね!」という本田、「1年を長く感じたら若いそうですが、僕は長く感じました(笑)。アコースティック・ツアーの初日は3月の神戸でしたが、遥か昔のことのようです。来年は47都道府県+何カ所かをまわるツアーをやりますが、来年もまた全国各地で会いましょう!」という藤田の挨拶の後、渡邉からは今回のブラスセクション起用の経緯が告げられた。
いわく、昨年10月に東京タワーの展示施設「TOWER GALLERY」で行なわれた文化祭的イベント『PERSONZ EXHIBITION Ver.2』で、2015年12月30日に品川ステラボールで行なわれた『SPECIAL THANKS FOR “ROAD TO BUDOKAN”』の2日目、ブラスセクションを迎えたステージの映像を久々に見て胸を打つものがあったという渡邉が再度のコラボレーションを望んだのだという。また、「背中でブラスの音圧を感じながら演奏できるのが凄く幸せです」と語り、従来通りにベースアンプを後ろに置くとブラスセクションの姿が見えづらくなるため、この日は自身の前にベースアンプを置く変則的な配置であることを明かした。つまり渡邉は前後から大音響の渦を浴びるという異例の格好だったわけだ。

これ以降はバンドのみでの演奏で、JILLいわく「40周年と41周年のヒットチューン」で節目となったこの2年を振り返る趣向。すでにライブに欠かせない一曲として浸透し、端正にして颯爽とした「FLOWER OF LOVE」に続き、最新アルバム『WHAT A WONDER WONDERLAND』の方向性を決定づけた指針的楽曲「東京タワーであいましょう」は、オーディエンスとのコール&レスポンスを経て一体感を増した後でAメロに入る。格天井まで轟く割れんばかりの手拍子に支えられ、星のように儚くも眩いイルミネーションに彩られた都市に潜む孤独と希望をJILLが生き生きと唄い上げる。実際の東京タワーを窓越しに見ながら極上の歌を体感できる贅沢な時間だ。
そのまま観客に手拍子をキープするように促し、パンク/ニュー・ウェイヴを出自とするバンドがバブルガム・ポップやパワー・ポップを昇華させた好例と言うべき「I AM THE BEST」へ。以上の3曲は、近年発表された楽曲もまた高いポテンシャルを秘めたものであることをさりげなく伝えるパートであり、バンドの創造性がまだまだ発展途上にあることを知らしめるものだ。
ブラスセクションが再び呼び込まれ、ステージは佳境に入る。10年前の品川ステラボールでも披露された「GENERATOR」はヘヴィなギター・リフに導かれ、地鳴りにも似た重量感溢れるリズムに尖鋭的な音塊を放射するブラス隊が拮抗する。怒涛の如き藤田と渡邉のリズムは鬼気迫り、軋むように火を吹く本田のギターを誘発する。個人的にはこの「GENERATOR」こそバンドとブラスセクションが織り成す至上の融合であり、この日しか体感し得ぬ白眉のアンサンブルを存分に堪能できた瞬間だった。

音の時間旅行はここで一気にバンド黎明期へと遡る。「今年のPERSONZは今日で最後なので、皆さんも思い残すことなく叫んでください! 今年起きた嬉しかったこと、嬉しくなかったこと…いろんなことがあったけど、ここで全部出しきってください! そして明日の大晦日はすっきりとした気持ちで年を越しましょう!」とJILLが煽り、「みんな年越しは“真夜中”まで起きてる?!」の一言で喚声が沸き、フロアの温度がさらに高まる。そう、アップテンポでダンサブルなロックチューン「MIDNIGHT TEENAGE SHUFFLE」で時空は一息に38年前へタイムスリップし、当時のティーンエイジャーがみなこぞって嬉しそうに飛び跳ねるのだから痛快だ。
継ぎ目なく放たれる「CAN'T STOP THE LOVE」では曲中の短いブレイクの後に巨大な地球儀の風船が客席へ放り込まれ、フロアの至る所で起きるバルーン・トスにより青い地球が四方八方、宙に舞う。ライブ本編はここで終了。バンドとブラス隊全員が捌けるが、オーディエンスは無論納得することなくアンコールを求める。
その後、着替えを済ませたメンバーが一人ずつ登場して挨拶。
「凄くいい雰囲気で、やってて楽しくてしょうがないです。さっきのMCで長く感じた1年と言いましたけど、その1年をこんなふうに楽しく締め括ることができて幸せです」と語る藤田、「今日は2025年を締め括る集大成的ライブであり、さらにホーンセクションも入るという“攻めるPERSONZ”をお見せできたと思います。今日は今年のツアーで鍛え上げられたものがいろいろ出てくる瞬間に来てもらえて本当に嬉しいです」と感謝を述べる本田、「東京タワーでやったイベントをきっかけとして今日またブラスセクションと一緒にやってみることになったし、すべての物事には意味があって繋がっているんです。また10年後になるとやれるかわからないので、近いうちに必ず一緒にやります」と意気込む渡邉と、三者三様の人柄がのぞく。

そしてJILLが登場し、「ここで役目があるでしょ?」と渡邉に促す。「さあ、みんなで唄いますよ!」というJILLの号令で渡邉が「HAPPY BIRTHDAY TO YOU」の旋律をベースで爪弾く。ご承知の通り、この日の翌日である大晦日は本田の誕生日だ。「おいくつになるのかしら?」「64です」というJILLと本田のやり取りの後にバースデー・ケーキが持ち込まれ、「ここは火気厳禁なので」とエアローソクの火を本田が吹き消す。沸き起こるお祝いコールを受け、「私が65、本田君が64、藤田君が63、渡邉君が62。今のPERSONZは惑星直列です」とJILLが笑いを誘う。
だが考えてみれば、メンバーの平均年齢が63.5歳で40年以上に及ぶキャリアを誇るバンド、それも今年は47都道府県をまわる50本以上のツアーを敢行する日本のバンドなど前代未聞だ。結成以来、ほぼ不動の面子で41年にわたりバンドを活動し続けるPERSONZのライブとは、日本のロック史上最長不倒の記録を更新し続ける奇跡の瞬間を私たちが見届ける場であるとも言えるのかもしれない。
閑話休題。テイチク/BAIDIS在籍時の往年のナンバーは続き、3rdアルバム『NO MORE TEARS』から「TOKIO'S GLORIOUS」、4thアルバム『DREAMERS ONLY』から「DREAMERS」と多くのファンが求める楽曲を畳み掛ける。生まれ育った街の景観、そこで手探りし続けた夢の轍、あるいは眠れない夜の中で見いだした一縷の希望。そうした普遍的な歌詞のテーマとバンドの卓越した演奏力の相乗効果により、今も色褪せぬ瑞々しさと時代を超越した輝きを放っている。
とりわけ「DREAMERS」はライブというバンドとオーディエンスを結びつけるサンクチュアリにおける不変のアンセムであり、“Ooh-Ooh”というJILLのハミングに“We're All Dreamers!” “We Can Be Heroes!”とオーディエンスが応える様はまさに魂の交歓である。喜びや楽しさを分かち合うにはより距離を近づけたほうが良いということなのか、「DREAMERS」ではJILLがフロアへ降りて隅々まで練り歩き、目と鼻の先で絶品の生歌を観客一人ひとりへ届けた。そのあまりに強靭な身体能力、最後の最後まで観る者を楽しませようとするサービス精神の旺盛さに思わず感嘆してしまう。

ダブルアンコールに応え、JILLと本田だけで唄い奏でられた「HALLELUJAH」もまた実に素晴らしかった。幼い頃におとぎ話のような国があることを信じていたという歌詞は『WHAT A WONDER WONDERLAND』に通ずる世界観であり、5thアルバム『PRECIOUS?』発表時より一段と高まったJILLの歌唱力にただただ舌を巻く。
それから藤田と渡邉、ブラスセクションが定位置に着き、同じく『PRECIOUS?』収録の「GOD BLESS YOUR LOVE」へと続く流れも美しい。紛争と戦争が激化し、社会の分断を加速させるポピュリズムが世界的に台頭する現代において、こうした人と人をつなぐ愛や夢を信じ続けることの尊さを唄う歌は今後ますます私たちの生きる糧として不可欠なものとなるのではないか。
3月に発売される、約24年振りとなるベストアルバム『RELOAD BEST』はバンドの代表曲を再録したものになるそうだが、「あまりない試みだけど、過去の曲をもう一度レコーディングするのは本当に大変なんです」とJILLが決して愚痴をこぼすわけでもなく、淡々と話していたのが印象に残った。
たとえばこの日披露したテイチク/BAIDIS在籍時の楽曲はどれも長年のライブで培った歌唱力と演奏力が如実に反映されて明らかに進化しているし、贔屓目なしに見ても今のほうが断然良い。だがそれがスタジオ音源となると聴き手の追憶が加味されることもあり、どれだけ今より技術的に稚拙だろうと当時の録音に軍配が上がるケースが多いように思う。人は誰しも過去の出来事を甘美に感じるものだし、思い出は無敵だからだ。
しかし、そんなことは百も承知の上でPERSONZは過去の自分たちと対峙する勝負に挑み続ける。トリプルアンコールでバンドのみで披露した屈指の代表曲「DEAR FRIENDS」も、いま持ち得るありったけの技量と底力を駆使して史上最強の「DEAR FRIENDS」をきっと聴かせてくれるはずだ。
思い出には勝てないのかもしれないが、それでもなおその時点の最善を尽くして果敢に自己ベストを更新し続けていく。それがPERSONZなりの流儀であり、そうして常に目前の高い壁を乗り越えようとする姿勢はバンドの魅力に他ならない。
PERSONZはきっと熟知しているのだ。困難や試練といった高い壁を乗り越えたとき、その壁こそがバンドを維持する強固な砦となることを。
取材・文◎椎名 宗之
写真◎サイトウ リュウタロウ
■ベストアルバム『RELOAD BEST』
2026年3月18日(水)発売
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予約受注期間:12月24日(水)~2026年2月11日(水)23:59
豪華盤予約リンク:https://store.vap.co.jp/category.asp?cd=87124&cd2=501
【豪華プレミアム盤】※完全生産限定
※CDに加えて、豪華盤でしか見られない映像コンテンツ収録予定のDLカード、ベストアルバム発売記念オリジナルデザインTシャツ、メンバーのアクリルスタンドをセット。
■47都道府県ツアー<PERSONZ RELOAD TOUR “DISCOVER JAPAN 47”>
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