SIMフリースマートフォン(スマホ)市場が拡大している。2015年は参入メーカーが増え、販売競争が激化してきた。現在、SIMフリースマホ市場を引っ張っているのは台湾と中国メーカーだが、2015年年末、日本のベンチャーが割って入った。フリーテルブランドで端末とSIMを展開するプラスワン・マーケティングだ。
●SIMフリースマホ市場の第二幕が上がる!?
2014年秋に本格的に立ち上がったSIMフリースマホ市場。MVNO(仮想移動体通信事業者)が提供する格安SIMが市民権を得るに従い、スマホ市場全体に占めるSIMフリースマホの割合が拡大している。2015年1年間は継続して10%前後の構成比で推移しており、一つのカテゴリとして確立したといえる。参入メーカーがほぼ出そろったいま、SIMフリースマホ市場の第二幕が上がりそうだ。
現在、SIMフリースマホ市場で激しく火花を散らしているのが台湾メーカーのASUSと中国メーカーのファーウェイだ。抜きつ抜かれつのデッドヒートを繰り広げ、時にはこの2社で7割以上のシェアを占め、2位以下を引き離しつつ激しい攻防戦を繰り広げていた。ここに突如食い込んだのが「FREETEL」ブランドを掲げるプラスワン・マーケティングだ。
プラスワン・マーケティングは2015年の秋まで10%前後のところで推移していた。11月には17.2%に、12月には25.2%に急成長を果たし、ファーウェイを抜き、1位のASUSに0.8ポイント差まで接近した。
プラスワン・マーケティングのシェアをここまで一気に押し上げたのは10月に発売した「SAMURAI 雅(MIYABI)」だ。2015年12月の月次ランキングでASUSの「ZenFone 2 Laser」、ファーウェイの「P8 Lite」に次いで販売台数シェア10.1%で3位に入った。
「SAMURAI 雅」は同社のミドルモデルで、1.3GHzクアッドコアCPUを搭載し、重いアプリもサクサクと動作する。1300万画素のリアカメラと500万画素のフロントカメラなど、ふだん使いとして十分なスペックを備える。そして何より、魅力的なのは価格だろう。各社のミドルモデルの価格は2万円台半ば。ASUSもファーウェイも2万円台半ばから3万円で価格を設定している。それに対してプラスワン・マーケティングは「SAMURAI 雅」を1万9800円と2万円を切る価格に設定。コストパフォーマンスの良さがユーザーから高い支持を得ているようだ。
●豊富なラインアップがプラスワン・マーケティングの底上げに貢献
プラスワン・マーケティングのシェアを一気に伸ばしたのは「SAMURAI 雅」ばかりではない。豊富なラインアップもシェアの拡大に貢献している。同じく12月の月次ランキングではエントリモデルの「Priori3 LTE」が4位に、Windows 10 Mobileを搭載した「KATANA 01」も好調で9位に入っている。
プラスワン・マーケティングは2012年に設立したばかりのベンチャー企業だ。自宅事務所で4人から始めた事業も、3年目の2015年には日本だけでも100名を超える規模までに大きくなった。
そのプラスワン・マーケティングが徹底してこだわるのが品質だ。日本市場にふさわしい品質を実現するため、東京に約30人、中国・深センに約60人のプロダクトスタッフを配置。ソニーやパナソニックのOBも招き入れ、日本品質の製品づくりに取り組んでいる。また、製品だけでなく、アフターサービスにも日本品質にこだわる。
ラインアップの豊富さも特徴の一つだ。スマホ初心者をターゲットにしたエントリモデルからガジェット好きを唸らせるハイエンドの高級モデルまで幅広くラインアップを揃える。
もう一つ、他社と大きく違う点はプラスワン・マーケティングが通信事業者でもあるということだ。MVNOとして、SIMカードの提供も行っており、ユーザーは端末とSIMカードをセットで購入できる。ネット販売はもちろん、大手家電量販店でも販売している。ユーザーの手や目に触れる機会は多い。こうした間口の広さもシェアを伸ばした要因となっているのだろう。
設立から4年目を迎える今年。プラスワン・マーケティングがトップを争うメーカーとして成長した。迎え撃つASUS、ファーウェイがどんな戦略をとるか、プラスワン・マーケティングがどう成長していくか、今後も注目したい。(BCN・山下彰子)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。