デジタルアーツは2月22日、東京・大手町ファーストスクエアカンファレンスで、第9回 未成年者と保護者のスマートフォン(スマホ)やネットの利活用における意識調査発表会を開催した。
11年12月から実施している定期調査の第9回目は今年1月に実施した。調査サンプル数は1213人(子ども:618人、親:595人)で、スマホの所有率は高校生で前回から1.4ポイント減の97.5%、中学生で14.1ポイント増の76.3%、小学生で2.9ポイント減の37.9%。今回から新たに世帯年収別の軸を設けた。
従来はスマホの所有や利用実態をメインに調査してきたが、今回の調査ではインターネットを使ったお小遣い稼ぎに焦点を当てた。道具登志夫 代表取締役社長は「スマホの普及率が高まるなかで、インターネットに端を発するトラブルも上昇傾向にある。これらの調査結果を分析することで、有効な対策手段を模索していくべきだ」と調査の目的を説明。「高校生の約8割がなんらかの手段でインターネットを介して、アルバイトをしているという驚くべき結果が出た。インターネットをアクティブに利用する子どもの増加に比例して、『リアルで会いたい』と志向する比率も上昇している」と、調査から浮彫になった問題点を指摘した。
広報・コーポレートマーケティング課の吉田朋子課長は、インターネット上の情報を選別するフィルタリングの概念が浸透しつつあることをデータで提示。スマホ購入時に47.1%の子どもがフィルタリング設定の説明を受けたと記憶しており、52.3%が現在フィルタリングを設定していると回答した。
「ネット上の情報に対する警戒は以前より高まってきている」との見解を示す吉田課長だが、一方でSNSを通じて知り合った、いわゆる“ネッ友”とのコミュニケーション量の増加が新たなトラブルの火種になっている可能性を危惧する。
●1か月あたり平均1万855円
子どもの回答者のうち、スマホ購入後にネッ友との交流が増えたと回答したのは25.6%。相手について知っている情報は、「住んでいる地域」が63.9%、「家庭環境(年齢・家族構成など)」が48.8%、「職業(学校名・会社名)」が41.6%。相手に自身の情報を伝えている場合も多く、ストーカーや性犯罪に発展するケースも少なくない。
「インターネットを通じて小遣い稼ぎをしたことがあるか」という調査では、子ども全体の30.7%が経験があると回答。高校生では男子で79.6%、女子で68.9%にのぼる。手段としては、「ポイント獲得」が76.8%、「自分が使用していた品物を販売」が12.6%、「動画や写真の投稿」が8.9%。1か月あたりの稼いだ金額は1万円未満が86.8%で、平均金額は1万855円。
小遣い稼ぎを始めた理由で最も多かったのは「親からもらう小遣いとは別に遊ぶお金が欲しいから」で47.4%。あくまで参考値としてだが、世帯年収が低いほど小遣い稼ぎをする子どもの比率は高いようだ。
ゲストとして招かれた、メディアジャーナリストで慶應義塾大学SFC研究所上席所員の渡辺真由子氏は未成年者の2大ネットトラブルとして、(1)出会いさがし(2)性的画像の販売を挙げる。「どちらも犯罪につながる可能性が高く、取り返しがつかない案件に発展する場合もある。インターネット上に流出した情報は“デジタルタトゥー”ともいわれており、完全に消し去ることは難しい」(渡辺氏)。
対策として「デジタルリテラシー教育」「家庭のあり方」「社会のあり方」の三つを提示。「インターネットの危険性や真偽を判断する能力を養うことは重要だが、これはあくまで取り急ぎの措置。本当に大事なのは、家族が相談しやすい環境をつくったり、子どもを『性の対象』にする風潮の撲滅を社会が推進することだ」(渡辺氏)と、家族・社会全体で取り組むべき問題であることを強調した。
講演後には、渡辺氏とデジタルアーツの経営企画課の工藤陽介担当課長がクロストーク。調査結果を受け、家庭と社会が未成年者を守るために何をすべきか、議論を交わした。
工藤課長は問題の構造を分解し、「個人よりもシステムに頼った方が効果的な場合もある。出会いや性的被害を防ぐ手立てとして、フィルタリングは非常に有効だ。一方、現実の人間関係やいじめの問題は実際のコミュニケーションを通してしか解決されない」とコメント。問題の性質を見極めて対策を講じる必要性を訴えた。(BCN・大蔵大輔)