HGSTジャパンのブース

カメラの展示会「CP+」では、カメラはもとより写真関連の周辺機器も数多く展示されていた。特に目立ったのはストレージ。写真を撮るまでに、いろいろとこだわる人は多いが、では撮った写真の管理はどうすればいいのか。デジタル時代では、フィルム時代とはまた別の工夫が必要だ。単にPCのHDDや外付けのHDDに保存するだけでは心許ない。HDDは物理的に駆動部分があるため、いずれ寿命がくる。その際にはHDDと一緒にこれまで撮りためた写真が壊れてしまうことがある。それを防ぐため、バックアップは重要だ。

HDDメーカーのHGSTジャパンは、同社のブースで、バックアップの重要性や同社の技術をアピールするプレゼンテーションを実施した。営業本部ストレージソリューション部の山本慎一部長は、ユーザーを取り巻くデータ状況について「膨大なデータが溢れているが、きちんとバックアップされているのはごくわずか。市場に出回っているHDDの容量は年々増加しているが、それでもユーザーがの要望に応えられるデータ容量に追いついていない」と指摘する。バックアップ用途を考えると、よりHDDの大容量化が求められるなか、HGSTが開発した大容量HDDが、ヘリウム封入HDDだ。

HDDは磁性体を塗布した円盤を高速回転させているところに、アームの先端につけた磁気ヘッドを円盤の上で移動させてデータを読み書きしている。簡単に言えば、HDDの大容量化は、中に組み込む円盤の枚数を増やすことで実現できる。ところが、山本部長は「もっと大容量化するために円盤をたくさん搭載しようとしたが3.5型HDDでは5枚が限界だった」と語る。HDDは3.5型モデル、2.5型モデルとあるが、それぞれ外寸の規格があるため、その中に円盤と、アームを移動させる隙間を作るとどうしても5枚が限界だった、という。

円盤と円盤の隙間をなるべく狭くし、より円盤を多く組み込めるように、と考えたのが、HDD内に空気ではなくより分子サイズが小さくて軽いヘリウムを封入する方法だ。これにより最大7枚の円盤を組み込むことができたという。

また、ヘリウムの採用は大容量化だけではなく、静音性にも貢献した。軽くて状態が安定したヘリウムを充填することで、回転部の摩擦を抑えて稼働部の負荷も軽減。円盤の振動を抑えることができたからだ。また、空気よりも分子サイズが小さいヘリウムが漏れ出さないようにHDDのボディを密閉したため、結果的にHDD内部への湿気やホコリなどの侵入を防ぐことにもつながった。これにより動作の安定性と耐久性が向上したという。

山本部長は、「大容量で熱を出さず、静かなHDD。ヘリウムHDDはいま需要が伸びている。さらに今年は10TBモデルを発売する予定だ」と意気込みを語る。大容量になりがちな撮影データのバックアップにはぴったりの製品になりそうだ。(BCN・山下彰子)