10年振りのヘッドホン新モデルの試聴会を開催

日立マクセルは、6月9日、ベリリウムコートをヘッドホンとして初採用したハイレゾ対応ヘッドホン「MXH-MD5000」の試聴会を開催した。

日立マクセルがヘッドホンをリリースするのは約10年振り。2012年に立ち上げた原音主義を掲げる「mシリーズ」は、これまで6モデルをラインアップしてきたが、すべてカナル型イヤホンだった。「MXH-MD5000」は「mシリーズ」の新製品という位置づけだ。価格はオープンで、税別の実勢価格は3万9800円。

ライフソリューション事業本部 マーケティング事業部の沢辺 祐二課長は「音響ブランドとしての価値を高めるために、ヘッドホン開発の必要性は長年感じていた。『mシリーズ』で培った技術を生かし、日立マクセルらしい原音に忠実なヘッドホンに仕上がった」とコメント。満を持してのリリースであることを強調した。

最大の特徴は「ベリリウムコート振動版」を採用した新開発のドライバユニット。多くのヘッドホンがチタニウムやアルミニウムを用いるなかで、ベリリウムを採用した理由は、高解像度のハイレゾ音源だからこそ際立つ音響メリットがいくつもあるからだ。

まずは、音伝播速度の「速さ」。振動板全体が一体となって音を伝えるので、特に高い周波数ですぐれた再現性を発揮する。ノイズ抑制に貢献する「硬さ」「高い内部損失」、レスポンス速度に影響する「軽さ」も、一般的に採用されている金属と比較すると倍以上の数値を記録する。

新製品のキーワードとなっている“マッハ36”は、音伝導性の速さに由来する。ベリリウムの音伝導性は、音速(1マッハ=340m/秒)の約36倍、ゆえに“マッハ36”。ベリリウムは各音響メーカーが発表してきた100万円を優に超えるフラッグシップスピーカーが採用してきた素材で、実績も十分だ。

「mシリーズ」で培った独自の「デュアルチャンバー構造」も健在だ。ドライバーの振動効率を高め、高精度にコントロールする効果がある構造で、臨場感溢れる広がりのある音場を実現する。

このほか、低反発素材の立体縫製イヤーパッドや使用シーンに応じて使い分けができる約1.2m/3.0mの着脱式ケーブルなど、ヘッドホンだからこその使い勝手にも細部までこだわった。

インピーダンスは32Ωで、再生周波数帯域は20~4万Hz。春に開催された「ヘッドフォン祭アワード」では、「ヘッドホン部門(ミドルクラス:2~5万円)」で金賞に輝くなど、すでに高い評価を獲得している「MXH-MD5000」。日立マクセル「mシリーズ」の新たなマイルストーンとなるか、期待がかかる。(BCN・大蔵 大輔)