【家電コンサルのリテールマーケティング Vol.28】増税後の消費の冷え込みだけでなく、今後の少子高齢化による恒常的な客数の減少を考えれば、家電量販店にとって最大の課題は「客単価の向上」であることは疑いようがないと言えるだろう。販売員は、これまでの売り方を変えなければならない。

顧客のウォンツを生む提案

しかし、現在の家電製品の多くは「買い替え商品」がメインになっている。昔のビデオデッキが登場したときのような生活を一変する画期的なカテゴリーはなかなか登場していない。

買い替え商品が中心である販売の現場で注意したいのは、「ユーザーは今、使っている製品のすべての機能を使い切っていない可能性が高い」ということだ。なぜなら、新製品に買い替えるにあたって「これまで使っていて不自由はなかったから、必要最小限の機能が使える製品でいい」という感覚で来店するからだ。店側から何も提案せず、製品の選択を顧客に任せきりにすれば、必然的に単価は下がるだろう。

こうした感覚を持つ顧客に対して単価アップを図ろうとすれば、顧客も気付いていない「新しい発見」を接客やPOP、展示のいずれかで提供する必要がある。気付きを与えることで「欲しい」「そういった生活を手に入れたい」という顧客のウォンツを生む必要があるのだ。

それにもかかわらず、接客シーンの多くで見られるのは、「機能・スペック」の説明や「この製品はいかに優れているか」という新機能の優位性に終始しているケースである。

機能・スペックや優位性を中心に話をすると、「どの顧客にも同じ説明パターンに陥る」のは当然のこと。結果的に付加価値商品の必要性すら感じてもらえず、単価アップはできないのである。

本来、ユーザーの生活は千差万別で、得られる生活の変化も顧客ごとに違う。来店客は「私の生活の話」をしてくれるからこそ、「欲しい」という感情が湧くのである。

顧客が付加価値商品を購入するのは「商品に価値を見いだすから」ではなく、「生活の変化に価値を見いだすから」ということを販売員は今一度、再認識することが大切である。

今後、家電量販店の接客現場でもAIに取って変わる部分が多くなり、一店舗当たりの販売員の人数はさらに減少することが予想される。店舗がさらにショールーム化していく今だからこそ、「それぞれの顧客の生活の変化」という個々に適した価値の話ができる販売員の能力が必要となる。それを生めない家電量販店は淘汰されていくだろう。

ユーザーの生活をイメージできる力を培い、ネット通販を含めた競合との差別化を図っていただきたいと思う。(堀田経営コンサルタント事務所・堀田泰希)

堀田泰希

1962年生まれ。大手家電量販企業に幹部職として勤務。2007年11月、堀田経営コンサルティング事務所を個人創業。大手家電メーカー、専門メーカー、家電量販企業で実施している社内研修はその実戦的内容から評価が高い。

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