NHKの大河ドラマ「真田丸」に、織田信長の弟で、茶々(竹内結子)の叔父にあたる織田有楽斎を演じている井上順。利休十哲に数えられる茶人で、穏健派として茶々らを補佐した有楽斎の真意を語る。
-「真田丸」をどうご覧になっていましたか。
初回から見ていました。「新選組!」を超えた作品になっていますし、大河ドラマの歴史に一石を投じた感じがしました。緩急がついていますし、難しい言葉も出てこない。すっと入れて見やすくてすっかりはまってしまっていました。
-有楽斎とはどんな人物ですか。
きょうだいだった信長やお市の方が死んで、残った3人の姪っ子(茶々、初、江)がかわいくてしょうがない。平和な世の中で、みんな元気に過ごしてほしい、自分が豊臣と徳川の懸け橋となって平和が続いてくれればいいと思っていたんでしょう。
-有楽斎には得体が知れないところもあります。
人当たりが良くて眼光鋭い。得体が知れないけど、この人、悪党ではなくて策士。それでも力が及ばなかった。
-大坂城に集まった牢人たちをどう見ていたと思いますか。
ほどほどにしてほしいというのが本心だったと思います。真田幸村(堺雅人)には一目置いていて最初は褒めまくりますが、いなくちゃ困るというのではなく、邪魔されても困るというところ。だから手の上で踊らせておけばいいというのが本当の気持ちだと思います。
-三谷幸喜さんが監督した映画『ラヂオの時間』出演以前に出会いがあったとか。
「東京サンシャインボーイズって面白い劇団があるから」って知人に勧められて見たのが舞台「ラヂオの時間」。そうしたらしばらくして映画への出演依頼が来たんです。お会いした三谷さんに「覚えていますか」と言われたけど思い出せない。実は20年ほど前に出会っていたんです。僕が毎年ホテルで開いていたクリスマスショーで車をプレゼントにした年があって、絶対当たらないクイズにしようと思ったのに当てた人がいた。それが三谷さんだったんです(笑)。びっくりしました。逆に、僕が映画の出演依頼より前に舞台版を見ていたことを話すと、今度は三谷さんが驚いていました。
-それ以来おつきあいが続いているんですね。
「今度何かやりましょう」、「いつも口ばっかり」なんてやり取りばかりだったんですけど、「真田丸」の放送が始まってから、ようやく出演依頼が来ました。『ラヂオの時間』以来なんですよ。今回の有楽斎は「真田丸」の中ではちょっと違った色の人間として出てきますし、とてもいいポジションに置いてくれていると思っています。
-スタジオの雰囲気はいかがですか。
出演者もスタッフもこの番組を愛しているんだなという空気の中でやらせてもらっているから、うれしくてしょうがない。だからドライリハーサルをやって照明を直す時とかにいろんなくつろいだ話をするんです。竹内結子さんにはお子さんのことを聞いたり、堺さんにはどうやってこれだけのせりふを覚えているのかを聞いたりしました。堺さんは、ちゃんと入れ方を習いに行って、子どもをお風呂に入れているらしいんです。きっとそういう時間を持つことで、せりふの入る時間ができるんでしょう。そういう話を聞いているだけでも堺さんの優しさを感じます。
-あまり描かれない有楽斎をなぜここまで詳しく登場させたのだと思いますか。
三谷さんは主役でも脇役でもその人の味を出してあげたいと役に息吹を与えていくので、みんながやる気になるわけです。一人一人を愛しながら作っているから、演じる役者はうれしい。主役じゃない人たちもいいシーンを作っています。そういう人が影の主役じゃないかなと。有楽斎にしても生き生きとした脇役という点でお役に立てればうれしいと思いますね。