シャープは3月23日、五つのセンサで部屋の空気環境をモニタリングするプラズマクラスター除加湿空気清浄機「KC-HD70」と、プラズマクラスター扇風機の新モデル5機種を発表した。
広がるプラズマクラスター搭載製品 海外の販売比率も高まる
シャープのプラズマクラスター搭載製品は、2017年2月末に世界累計販売台数7000万台を突破した。独自の空気浄化技術として搭載製品を増やし、現在は15カテゴリで展開する。健康・環境システム事業本部 副事業本部長 兼 空調・PCI事業部長の中島光雄氏によると、海外の販売比率が伸びており、2009年度と16年度を比較すると、約5倍に増加しているという。
増加の要因は、地域特性に合わせてローカライズしたモデルの拡充だ。「プラズマクラスター搭載製品の主軸である空気清浄機は、大気汚染や蚊を媒介する感染症など、地域ごとの問題に焦点を当て、製品開発を行っている。日本でも16年夏に話題になった『蚊取空清』は、もともと東南アジアで先行販売していた製品。反響が大きく、現在は部屋別に3機種をラインアップするなど、成長を続けている」と中島氏は例を挙げた。
今回、発表した「KC-HD70」は、除湿・加湿・空気清浄の3機能を1台に集約した除加湿空気清浄機。五つのセンサでホコリ・臭い・湿度・温度・照度を観測し、「おまかせワンボタン」で各機能を自動でコントロールすることができる。
健康・環境システム事業本部 空調・PCI事業部 第二商品企画部課長の原利光氏は「花粉やインフルエンザが流行する冬場の需要が大きいが、部屋干しなど年間を通したニーズも増えてきている」と、空気清浄機の市場動向を紹介。「KC-HD70」は「衣類乾燥モード」を搭載し、大風量ですばやく衣類を乾かすことが可能だ。
また、遠くのホコリを引き寄せる「スピード循環器流」や、静電HEPA・脱臭・ホコリブロックプレの三つのフィルターを備え、基本となる空気清浄でも高い性能を発揮する。価格はオープンで、税別実勢価格は10万円前後の見込み。4月15日に発売する。
「ネイチャーウイング」を採用した扇風機 「だるさ」を抑える効果も
同時に発表した扇風機は、鳥や虫の羽を参考に自然風を生み出す「ネイチャーウイング」を採用。3Dファンの「PJ-G2DBG」は、細く鋭い形状の“アホウドリ”と付け根は丸く先端は尖った“アマツバメ”の羽を模した。直進性の高い風を実現し、「サーキュレーターとしても活用したい」という要望を叶えるためだ。従来機種に比べ、風量は約50%向上した。
一方、「PJ-G3DG」は“アサギマダラ蝶”と“アゲハチョウ”の羽のくびれやうねりを参考に、ムラの少ないなめらかな風を生み出すように設計。こちらは扇風機の風を長時間受けても“だるさ”を感じさせないという意図がある。「PJ-G3DS」でも、「アサギマダラ蝶」の羽根形状を応用した「ネイチャーウイング」を採用し、同様にだるさ感を抑えた。
プラズマクラスターによる消臭や除菌効果に加え、「PJ-G2DBG」と「PJ-G3DG」は、センサーによって空気環境を感知・自動調整する「みはり機能」も搭載する。
価格はすべてオープン。税別実勢価格は、コードレス3Dファン「PJ-G2DBG」が3万5000円前後、3Dファン「PJ-G2DS」が2万3000円前後の見込み。「PJ-G2DS」は、“アホウドリ”の翼を応用した「ネイチャーウイング」を採用しており、カラーはホワイトとブラウンの2色。
ハイポジション・リビングファンで、コードレスモードを備えた「PJ-G3DG」は3万1000円前後、「PJ-G3DS」は2万6000円前後の見込み。ACモーター駆動のリビングファン「PJ-G3AS」はホワイト、ブルー、ピンクの3色で、税別実勢価格は1万3000円前後の見込み。
プラズマクラスターによる空調システムはBtoBソリューションとしても拡大しており、清潔さを重視するスーパーマーケットや食品加工工場、ホテルなどでの活用事例も増えている。最新の研究では、水耕栽培のレタスの成長を促進する効果が実証され、新たな活用に向けた動きも進んでいるという。
「国内でのプラズマクラスターを生かした商品開発」と「海外にローカルフィットした商品開発」、内外2軸の市場戦略は順調に推移している。東南アジア向けだった「蚊取空清」は日本でも好評だった。日本には未上陸だが、中国ではIoT機能を搭載する空気清浄機も展開している。異なる視点から製品特徴の幅を広げることで、ヒット商品が誕生する可能性は今後も十分にありそうだ。(BCN・大蔵 大輔)