<< White Ghost >> 2010 (C) NARA Yoshitomo拡大画像表示
奈良美智の個展『奈良美智:君や 僕に ちょっと似ている』が横浜美術館で開かれている。回顧展ではない。会場入口に立っている巨大な白の繊維強化プラスチック彫刻だけは2010年作品(日本初公開)だが、これ以外はすべて新作。しかもそのすべてが震災以後に手がけられたものである。
絵筆をとるまでに約1年かかったという。しかし無力感にさいなまれて沈黙していたわけではない。今回の展覧会の大きなトピックである大きなブロンズ彫刻群は、再び創作に向かうための「素手での格闘」の結果、生まれたものだ。
奈良美智氏拡大画像表示
「これまでは表層だけを見せてきた。だが今回は過程が見えてもいいと思った」と奈良は語る。母校、愛知県立芸術大学にしばし身を置き「画学生に戻って」慣れない粘土いじり、塑像づくりに没頭したことが、出発点になっている。言ってみれば、彼が「回復」していくことでかたちづくられていったものたちを、私たちは目撃することになる。
<< Let's Talk About “Glory” >> 2012 (C) NARA Yoshitomo 拡大画像表示
ただし、優れた芸術作品のすべてに通底することだが、作者の身に起こった出来事=ストーリーをむやみに鑑賞の手引きにするべきではない。実は、奈良の新作たちは、こうした背景を吟味して臨む必要はほとんどないとも言える。物語によって意味づけする鑑賞者の「解釈」は、ときに作品を卑小なものにしてしまう危険性もある。ただ、明記しておきたいのは、作家が現在進行形でつかみとっていったものたちを、私たちもまた現在進行形で感じとっていける展示がなされているということだ。
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