「アレクサ」と声をかけられるとリングが青く光るAmazon Echo Dot(第3世代)

「アレクサ、起きて」。私の1日はこの一言で始まる。部屋の明かりをつけ、テレビをオンにして、日付、時刻、天気予報を読み上げる。アレクサにあらかじめ仕込んである朝のルーチンだ。定番の「アレクサ、おはよう」にしなかったのは、機械に朝の挨拶をするのは抵抗があったからだ。もっとしっかり仕込めば、カーテンを開け、コーヒーメーカーのスイッチを入れるくらいのことならできるが、今のところそこまでやらせるつもりはない。寝るときには「アレクサ、全部消して」で明かりとテレビをオフにする。興味本位で第3世代のAmazon Echo Dotを買ったはいいが死蔵していた。アレクサ連動のコンセント「スマートプラグ」を手に入れたのをきっかけに、なんちゃってスマートホーム生活を始めることにした。

本当は、単に布団に入ったまま明かりを消すのが目的だった。寝ながら本を読んでいて、眠くなっても立ち上がらずに部屋の明かりを消せるようにしたかった。ただこれだけのことだが、実際やってみると使い勝手はずいぶんいい。学生時代、寝たまま蛍光灯を消そうと、畳に届く長さの紐を蛍光灯につけていた。その現代版だ。

数年前の話だが、8割近い人がスマートスピーカーを買ったはいいが、音楽を流す用途ぐらいにしか使わなくなった、という調査結果があった。音声で天気予報やニュースを読むくらいでは、日常的に使う気にはなれない。はやり、もっと生活に直結する機能がなければ。そこで、明かりのオン・オフだ。

部屋の明かりにスマートプラグをつなげて、コントロールできるようにした。Wi-Fi連動型のコンセントだ。単にオン・オフするだけなら、明かりだけでなくさまざまなな機器を声でコントロールできる。「スイッチボット」という、物理的にスイッチを押すユニットもある。組み合わせ次第で、声でコントロールできる機器はかなり広がる。スマートホームの完成だ。

音声認識の精度や感度は申し分なく、誤動作はほとんどない。込み入った操作はできないが、例えばネットにつながっているテレビなら、チャンネルを変えたり、ボリュームを上げ下げするくらいならやってくれる。リモコンが見当たらなくても、両手がふさがっていても操作できるのが便利だ。

呼びかけの言葉「アレクサ」をトリガーワードと言う。それ以降の声に反応するように作られている。スマートフォンのアレクサアプリを見ると、どのような命令を処理したか、生の音声とともに後から確認できる。つまり、その都度録音されているわけだ。

もちろん、トリガーワードをいわなければマイクはオンにならず、部屋の会話を盗み聞きして録音するようなことはない、ことになっている。気になる場合はマイクをオフにすることもできる。当然マイクをオンにするまでトリガーワードにも反応しなくなる、はずだ。

私のある友人は「自ら部屋に盗聴器をつけるようなもの。気持ち悪いからスマートスピーカーは一切使うつもりはない」と話す。その考えは理解できるが、言い出すとキリがない。利便性とプライバシーのどちらをとるか、だ。スマートフォン(スマホ)ですら、電波が届かない箱にでも入れておかなくては、電源を切っていても盗聴のリスクを完全になくすことはできないともいわれている。部屋の会話を聞かれたところで、有益な情報は何一つない。

プライベートな会話を人知れず誰かに聞かれているかもしれないと思うと、確かにいい気持ちはしない。プライバシーを切り売りして生きているような側面もある現代社会。ある程度の漏洩リスクはやむを得ないと割り切って使うしかないだろう。

とはいえ、声でコントロールするというのは、場面によってはとても便利だ。特に両手がふさがっている車の運転中、カーナビやカーオーディオの操作などには威力を発揮する。あるいは、デジカメの設定なども応用できそう。メニューの階層が深く複雑な場合でも一言で目的の動作にたどり着けるのは便利ではなかろうか。

ところで、明かりのオン・オフをつかさどっているスマートプラグには、ちょっとした欠点がある。電源は常にオンにしておく必要があるのだ。これまで使っていた部屋の明かりのスイッチをオフにしてしまうと、スマートプラグが使えなくなってしまう。アレクサとはWi-Fiでつながっているため、待機状態でもスマートプラグ自体に電気は来ていなければならない。

明かりのスイッチをオフにしてしまうと、スマートプラグにも電源が供給されなくなり、コントロールが効かなくなる。スイッチをオフにすれば明かりは消えるが、オンにしてもすぐ明かりはつかない。スマートプラグがONになって、Wi-Fiにつながって、アレクサに声をかけて初めて明かりがつく。そのため、部屋の明かりのスイッチにはオンに固定するようガムテープを張って操作できないようにしている。これがスマートかどうかは、また別の話だ。(BCN・道越一郎)

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