国内初の路線バスと同じ運行形態で自動運転の実証実験が行われた

西武バスと群馬大学は、遠隔監視システムを活用した自動運転大型バスによる実証実験を2月23日~3月7日に実施した。国内初の試みとして、通常の営業運行をしている大型車両の路線バスと同じ運行形態で自動運転大型バスを運行。通常の路線バス乗車時と同じ、片道180円(IC運賃178円)だけで乗車できた。

当日、発車するバスターミナルまでの送迎を依頼した家族が、事前の打ち合わせなしに自動運転大型バスの真後ろにつけて運転し、途中で追い越して駐車場から実証実験中のバスが自動運転で走行する様子を撮影したので、自動運転バス乗車の感想とともに紹介しよう。

この実証実験は、自動運転「レベル2」の実験で、西武バス路線である埼玉県飯能市の飯能駅南口~美杉台ニュータウン間の片道約2.5kmを各停留所に停車して走行した。レベル2のため、不測の事態に備え、乗務員が運転席に着席した上で、アクセル、ブレーキ、ハンドルを遠隔で自動操作する。将来的に自動運転「レベル4(高度運転自動化)」の実現を目指すための実証実験だ。

運転席の様子が着席したまま分かる複数の大型モニターを装備した特殊仕様の自動運転バス車内は、安全性確保ため、全員着席・撮影禁止。着席位置の影響ではっきり聞こえなかったが、乗車したスタッフが走行中、質問する乗客に回答するかたちで、「GPSを活用し、道を記録している」など、技術的な仕組みを説明していた。

通常5~8分ほどのところ、30分かかるとアナウンスされていたが、美杉台ニュータウンから乗車し、15分弱で終点の飯能駅南口到着した。実は一カ所、安全のため、手動運転に切り替えたと説明した交差点があり、この交差点を自動運転で走行しようとすると、どうも30分かかってしまうようだ。

計7日間の実証実験のうち、祝日・日曜運行分は午前・午後の各回とも、Yahoo! JAPANのデジタルチケットサービス「PassMarket」を利用した乗車整理券は、早期に受付終了し、乗車定員に達していた。参加者には乗車時にアンケート、降車時には、車両デザインを一新したばかりの西武バスのノベルティグッズが配布された。

バスの自動運転の実証実験は、既に各地で実施されている。バスはルートを自動化しやすいからだそうだ。実際に乗車してみて、もうほぼ実用レベルに達していると感じた。ただ、それは、年に1、2回しか路線バスに乗車する機会がなく、速度の遅さが気にならないからかもしれない。乗車中、「普段乗っているバスとぜひ比較してください」とアナウンスされたが、正直なところ、何が違うのか全くわからなかった。

一方、自動運転バスの後ろについて運転していた家族は、事前に実証実験の概要を承知していたので許容できたが、制限速度を下回る時速20~30キロの運転はかえって後続車に対して危ない、運転席に運転手がいる状態では人件費削減にはならず、自動化にメリットはないと、正反対の意見だった。

取り組みに対する評価は分かれるところだが、路線バスや周遊バスの定期的な運行を前提とした住宅地や観光地がある以上、バスの自動運転は何としても実用化し、路線を存続させなければならないと考える。法整備の後押しとともに、自動運転バスや、より小型で乗車人員の少ない自動運転モビリティが身近になる日は案外早いのではないだろうか。(BCN・嵯峨野 芙美)