「皆さんはなんのためにライブハウスに来てるんですか? かっこいいお兄さんをみるため? 今日は違うでしょう!(ここでかっこいいポーズをするクラオカ) 毎日溜まりに溜まった嫌なことがあるでしょ? ある! よかった! リアル充実してないよね! ここで巻き返そう、日常で手に入れられない物を手に入れようよ、何もかもぶっ壊していけるかい?」と続ける。

そして再び『イルキメラ・キッド』でフロアを揺らし、『金曜日のチェーンソー』ではCO2の特効も派手にブチあがる。『狂ったセカイと時計仕掛けの神様』では、「やってもやっても何度も何度も誕生日を迎えても中二病が治んないの! お前らも隠してるつもりでもそうなんだろ! 思いっきり病みちらかしていこう!」とぶうが扇動する。

茶番中のえんそく(撮影・さわきみのり)

そして、『U.F.Oが来るまで』をはさみ「茶番(寸劇)」パートへ。

「UFOが人間を連れ去り人形に入れ替えてしまう」という噂のある世界。その真相は惡の秘密結社ウシノシタ団が選ばれし人間を「本当の世界」へ連れて行くためだった……という筋書き。死に場所を探している少女をスカウトしようとするドタバタが繰り広げられ、合間に大変DVDにしにくいボケをはさみつつ物語は進んでいく。

茶番中のえんそく(撮影・さわきみのり)

ひとりひとり声をかけていったら間に合わないと、“世界の真実を教える歌”を用意したという。それはこの“ウシノシタ団サーガ”と呼ぶべき物語の完結編『天獄への十三階段』、怒涛の曲展開と長セリフで構成されたロングチューンだ。

では“世界の真実”とは何なのか? “本当は”1999年に世界は氷河期によって滅びてしまい、この世界は大人たちが取り繕ってごまかしたのだという。“別の次元の春”へ行くための『天獄への十三階段』なのだ。

フロアのファンも含めてサビを大合唱、大団円……と思いきや、突如会場中の電気が落ちる。スピーカーからも音が消え、「停電」を知らせるアナウンスが流れる。ざわつきつつも機転を利かせたファンたちが「光るトレーニングモッシュ棒」を掲げて照明を確保する。スクリーンに「大雪による停電のニュース」がザッピングされていく。

「えええ~~~~~!」という声がフロア中に響き渡る。やられた! そう、つまりこれは、”演出”だった!

えんそく・ぶう(Vo)/(撮影・さわきみのり)

再度差し込まれるぶうの独白。もうこの会場の外は雪におおわれて、“世界”は終わってしまったという。そして奏でられる、窓から見える降り積もる雪世界をテレビに見立てた『白いテレビ』。ゆっくりゆっくり降り積もる雪のように終わっていく世界。

歯車が回り始め、再び世界が動き出す『アリス・エクス・マキナ』へ。

「さぁ目ぇ覚ませ! こっからが本番だ!」という言葉から『「ここがお前の死に場所だ!」』、『少女戦闘員M、踊る』、『ツンドラの暴君』といったハードチューンを畳み掛ける。フロア中にタオルが舞う『キャトル』で一旦メンバーはステージをあとにする。

えんそく・クラオカユウスケ(G)/(撮影・さわきみのり)

そしてニューアルバム、先行シングル『中二病の救世主(メシア)』のリリース、5月5日にえんそくに馴染みの深い中野ZEROホール(大)にてワンマンを行うことなどを発表。この嬉しいお知らせは大きな歓声と拍手で迎えられた。

再びステージにあらわれるえんそくたち。『狂い咲く春のはじめ方』で盛り上がり、最後の『宇宙大天使土曜日』では色とりどりの風船がフロアに降り注ぎ、多幸感につつまれる。

……ちなみにこの「多幸感」ということば、単にハッピーな雰囲気を指すわけではなくて、「(薬物などがもたらす)過度の幸福感」という意味もあるらしいんですよ。つまり、ハイになってアッパラパーになっちゃってるってこと。えんそくのライブにピッタリじゃないですか。これ以上ないってくらいの多幸感いっぱいで、「狂い咲きハルマゲドン」は終幕した。