――講師業とメディア露出との両立はいかがですか。

「そんなにメディアに出て、本業は大丈夫なのか?」とよく聞かれるんですが、収録や取材は授業のある日以外に入れているので、今のところ支障はありません。たしかに忙しいですが、それは趣味みたいなもので。先日、「43日ぶりの休日だ」とブログに書いたら読者の方が心配してくださいました。ありがたいことですが、僕はそのくらいで壊れるほどヤワじゃないので大丈夫(笑)。多忙を乗り切れるよう、普段からよく歩き、体を鍛えています。

東進の予備校講師としての地位は自分の努力で築き上げたものですが、今の状況は自分とは関係のない力が働いている、言わば“ボーナスステージ”のような感覚がありますね。スポーツ新聞での競馬予想がしたい、メジャー野球について公的に意見を発表する場所がほしい、お笑い番組で芸人さんと絡んでみたい、シャンパンについて語りたい――など、昔からやりたかったことは全てチャレンジさせていただきました。これらの夢が実現したのは、前々からブログで自分の好きなこと、やりたいことを公言していたからだと思います。「単なる予備校講師には難しいことだ」という自覚はありましたが、何かきっかけがあるかもしれないからと、種を蒔いておいたんです。それらがボーナスステージに入って以降、次々と花を咲かせ始めました。
 

夢や願望は、どんどん語ったほうがいい

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――事前に種を蒔いておくという発想は、どんな経験から生まれたのでしょうか?

これは現代文を勉強していて身についた考えです。授業では「近代になって、こういうことが起きました」という文章をよく扱うのですが、“近代”は急に始まるわけではないんです。近代特有の事柄であっても、その前に必ず準備期間があって、はっきり形になって表れるのが近代だ、ということなんです。つまり「その瞬間を迎えてから始めよう」では絶対に遅い。まさに「いつやるか? 今でしょ!」なんです。

熱い思いがあるなら、すぐに“仕掛ける”のが大事。結果がいつ出るかなんてセコいことは考えず、夢や希望はどんどん語ったほうがいい。もちろん実らないこともありますが、実らなくてもともとです。「100の願望のうち、3つ叶えば御の字だ」くらいの構えで公言し続ければ、誰かが架け橋になってくれるかもしれません。

もうひとつ重要なのは、自分にできることを精一杯やることですね。例えば、初めに出演した『たけしの新・教育白書~「学び」って楽しいぞSP』(フジテレビ系列)は、国語という枠の中で楽しいことをしたいという趣旨で、僕以外の講師にも声がかかっていたんです。僕に決まったのは、興味を持ってもらえそうなネタを大量のレポートにまとめて、最初の打ち合わせの翌日にすぐ、ディレクターに送ったから。もっとも、オンエアでは別のネタが採用されたんですけど(笑)、レポートを送るという行為そのものが出演の決め手になったのですから、無駄になったとは思いません。

これは「プロセスに責任をとる」、つまりその瞬間にやれることを全力でやるということです。この心がけと、仕掛けを作っておくという2つの意識で、いろんなお仕事をさせていただきました。