3. 急激かつ極端な糖質制限はやってはいけない

説明してきたとおり、糖質制限をすると、全身の代謝が大幅に改善します。

言ってみれば、炭水化物を主食にしていた長い間、ずっと脇役だった機能が、主役として働く結果になります。

たとえば、寒冷な欧州でプレーするサッカー選手が、急に蒸し暑い外国で試合をしようとしても、体がうまく動いてくれないように、人間の体は環境の変化に順応するまでに、多少の時間がかかります。

糖質制限も似たところがあり、ブドウ糖の供給を(睡眠中以外の)ほとんどすべて外部に頼っていたところで、急に糖質が一切入ってこなくなれば、糖新生が思うように働いてくれない可能性があります。

日常生活では問題なくても、疲れがたまったときや、電車に乗り遅れそうだと急に走ったりしたときに、ふと目眩がするかもしれません。

体が疲れやすくなった、力が入らなくなった、などと感じて、糖質制限を中止してしまうケースは、エネルギー摂取不足と同時に、急激かつ極端に糖質を制限していないか疑う必要があります。

多くの場合、外から糖質が入ってこない状態に体が慣れてしまえば、問題はなくなります。これは、健常者より綿密な糖質制限で治療をしている、たくさんの糖尿病患者さんたちを見れば、事実だと判断してよいでしょう。

また私は、三食とも糖質を主食にしない状態で、どれだけ運動できるのか実験し始めていますが、とりあえず1時間程度のジョギングであれば、何も問題は起きていません。

個人差はもちろんありますが、1週間2週間で急激に制限すれば、体が環境の変化に順応しきれず、様々な問題が発生しやすくなるはずです。最初は1食の制限から始めて、問題がなさそうであれば徐々に制限を増やしていくのをおすすめします。