探偵の日常業務

営業や事務専門の人を雇っている探偵社もありますが、ここでは世間的な探偵のイメージに一番近い「調査員」がどんな仕事をしているか書きます。

メインになるのはやはり現場での調査活動です。探偵業界では依頼件数のトップが浮気・人探しのため、行われる調査も尾行と張り込み、撮影が主流です。簡単そうに思われるかもしれませんがルーチンワーク部分はなく、尾行テクニック、機材の使い方、本部や他の調査員との連携などさまざまな知識と経験、アドリブが必要になります。

調査をしたらそれで終わりではなく、ほとんどの場合は「調査報告書」を依頼者に提出します。各社それぞれが持っている報告書フォーマットに従って、現場の状況や対象者の行動を詳細・客観的に記していかなければなりません。証拠写真やビデオが必要な時は、それらを適切な形でダビングして報告書に添付する作業も必要です。

調査のスケジュールが当日に入っていない時も、探偵は遊んでいるわけではありません。カメラや発信器といった機材のメンテナンス、バッテリーなど消耗品のチェックは常にしています。調査のスキルを向上させるため、あえて困難な状況を作って撮影・尾行練習を行ったりもします。仕事がない探偵社ですと、印刷した宣伝チラシの街頭配布やポスティングを調査員にやらせることも多いと聞きます。

少し上の立場になってくると雑務を他の調査員に任せ、週・月単位での調査スケジュールを考えたり、調査経験を生かして依頼者との打ち合せに臨んだり、現場から上がってきた報告書のチェックをしたり、管理的な仕事が増えてくるのは他業種と同じかもしれません。

 

探偵にのしかかる重い負担

ここからは業界のブラックな側面をお伝えします。飲食業をはじめとしてブラックと言われる業界は肉体的・精神的なストレスがよく報じられていますが、探偵業の場合はそこに「社会的負担」がプラスされ、三重苦と呼べるストレスに悩まされます。

まず肉体的負担から。現場での浮気調査を筆頭に、探偵の調査は肉体的にとてもハードです。同じ場所からずっと動かず5~6時間の張り込みなんて当たり前。車両の中でカメラを構えたまま8時間以上の証拠撮影を終えた後などは、全身の関節がガチガチになって歩くことすら困難になります。

張り込みとセットになる尾行もまたハードです。尾行中は常に相手の動向に目を光らせ、徒歩、自転車、電車、タクシーなどあらゆる手段で追い続けなければなりません。そうそう都合よく理想の尾行手段が用意されているはずもなく、自転車に乗った相手を徒歩で全力ダッシュして追いかけなければいけないような場面も多々あります。

動いてはいけない張り込みと限界まで動くことが要求される尾行を数時間ごとに繰り返し、1回の調査が半日以上におよぶことも珍しくありません(筆者の自己ワーストは交替なしで30時間連続)。これを炎天下でも真冬の寒空の下でも、依頼者の要望があればどんなに悪条件でも断れません。探偵にあこがれた人の多くは、これで早い段階に体を壊して辞めていきます。途中で調査員を交替すればいいじゃないかと思われるでしょうが、そこまで人的リソースに余裕がある探偵社はほとんどないのです‥‥。