子どもや海外の人に教えたい!「箸のまめ知識」

日常的に「箸」を使っている人々は、世界全体の約3割。ざっと23億人くらいは箸を使って生活していると考えると、意外と多い印象を受けます。

その歴史の始まりは、やはり中国にあります。
人類最古の箸と考えられているのは、古代中国、殷の時代(紀元前14~11世紀頃)に使われていたとされる“青銅製”の箸。中国では、春秋時代(紀元前771~403年)には箸を使う習慣が普及していたのではないかという説もあり、その歴史はかなり古いようです。

それで日本人はというと、3世紀末頃に書かれた中国の歴史書、いわゆる「魏志倭人伝」には、「冬夏に生菜を、飲食に高杯をつかい手食する」とあります。

つまりこの時代、日本人は“手づかみ”で食べていたそうな。

「熱いごはんを手で食べていた」のかと、ビックリしますよね。
実際には、鳥取県の遺跡から“木製スプーン”がたくさん出土していることから、普段はこれらのスプーンを使って、米に雑穀を混ぜた雑炊を食べていたと推測されています。そしてハレの日に限り、米を蒸しておこわ風にしたものを“高杯”に盛って食べていたようです。さすがにアツアツをモリモリ、手づかみで食べていたわけではないのでしょう。
 

「箸」を使い始めたのは奈良時代!?

では、日本ではいつから、現在のような2本箸を食事で使うようになったのか? はっきりとはわかりませんが、7世紀初頭、小野妹子ら遣隋使の一行によって「箸」と「匙」を使った食事作法が伝えられ、徐々に広まったという説があります。いずれにせよ箸で食べる習慣が定着したのは、8世紀、奈良時代頃とみられています。

当初は日本人も「箸」と「匙」も使って食事をしていたようですが、やがて「匙」は食事の場から姿を消していきます。

奈良時代には現在のごはんのルーツとされる、固めに炊いた「固粥(かたがゆ)」や、さらに水分の少ない「姫飯(ひめいい)」が食べられるようになり、汁気がなくなるにつれ、匙を使う必要性がなくなっていったのかもしれません。

また、パサパサしたインディカ米に比べて日本で食べられている“ジャポニカ米”は粘り気があるため箸でつまみやすく、器を手に持って食べることもあり、匙を使わずともこぼさずに食べられる、ということとも関係がありそうです。

「匙を使うと器に傷がつくから」、「ごはん、おかず、汁を順番に食べるから箸だけの方が効率的に食べられる」…。いろいろな見方ができます。理由はともあれ、日本では匙を使う習慣がなくなり、箸だけを使うようになりました。箸のみで食べる習慣は世界でも珍しく、日本だけなんだそうですよ。


出典:
子どもたちの食環境と食教育 ―箸づかいの実態と支援学習―
食事に関する習慣と規範意識に関する調査報告書(内閣府/H22年)
弥生ミュージアム
 

ライター/女子栄養大学 食生活指導士1級。学生時代からさまざまな体調不良に悩まされたこともあり、健康的な生活習慣について学び始める。現在は専門家を中心に取材活動を行い、おもに食、健康、美容、子育てをテーマにした記事を発信。乗りもの好きな1男の母でもある。