大人気スカコアバンドのメンバーが、これまた大人気の声優さんに曲を提供!

ここまでご紹介してきた2曲は、いずれもJ-POPシーンで活躍するアイドルグループの曲でしたが、パンクブームの影響力はそういったアイドルの楽曲だけに留まりません。声優アイドルが歌う所謂"声ソン"にも、パンクブームを盛り上げた実力派ミュージシャンが参加していたりするのです。

その中でも特にオススメしたいのが、『けいおん!』や『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』といった人気アニメに出演されている竹達彩奈さんの『週末シンデレラ』。

 

この曲は、ホーンセクションとスカのリズムを大胆に取り入れたスカコア調の声ドルソングで、軽快なリズムに竹達さんの可愛らしい声が乗っかるキュートなナンバーです。スカコアは、明るくてノリが良い為か、声優さんの楽曲にも使用をされることが多いのですが、この『週末シンデレラ』の場合は本格派も本格派。何と、この曲を作ったのは、大人気スカコアバンド、SCAFULL KINGでヴォーカルとトランペットを務めるTGMX(田上修太郎)さん!

ジャマイカのルーツ・ミュージックであるスカをパンクの猛烈なスピード感で演奏するスカコア。パンクブーム真っ只中の頃は、POTSHOTやKemuri、SNAIL RAMPといった人気バンドがライブハウスを盛り上げていました。そんな人気バンド達と同じく当時のシーンで代表格のひとつだったスカコアバンドがSCAFULL KING。SCAFUL KINGの場合は、スカコアに留まらず、アイリッシュやファンク等の多様な音楽性を取り込んだサウンドが特徴で、ちょっと大人な雰囲気があるバンドでした。

2001年にSCAFULL KINGは活動を停止してしまいますが、現在は活動を再開し、年に数回ライブを行っています。その中心メンバーであるTGMXさんは、FRONTIER BACKYARDやCUBISMO GRAFICO FIVEのメンバーとして音楽活動を精力的に展開中。

FRONTIER BACKYARDでもカッコ良いスカやパンクを聴かせてくれるのですが、その音楽的エッセンスがアニメ声優さんと融合して生まれたのが、『週末シンデレラ』。TGMXさんは、作曲だけではなく楽曲の演奏やコーラスにも参加されているようで、大人気スカコアバンドのメンバーが、大人気女性声優の曲を全面的にバックアップするという非常におもしろい楽曲になっています。

 

演奏のクレジットを見てみれば、TGMXさんの他にも、あの頃のパンクブームを体験している人ならば絶対に名前を知っているミュージシャンの名前が色々と出ていて、そちらにも要注目な一曲。パンクブームとアニメ、声優というふたつの音楽ジャンルが結び付いた"パンク系声優ソング"とでも呼ぶべき楽曲の最高峰のひとつではないかと私は思います。


このように、当時のパンクブーム、インディーズブームの中心にいたミュージシャンが、そのパンキッシュな音楽性をアイドルやアニメの世界に持ち込み、その音楽性に広がりを与え、シーンを更におもしろく、豊かにする……という事例がここ数年で数多く見られます。

"パンク"という音楽をカジュアル化したことで、一部では批判もあった当時のブームですが、様々な音楽性をリスナーとシーンに届け、やがて、時を経てそのメロディとリズムをJ-POPやアニメソングの世界に根付かせたことは大きな快挙であり、音楽的な偉業であることは間違いありません。

ここで紹介した楽曲の他にも、パンクブームが輩出をしたミュージシャンの音楽性とアイドルやアニメとの幸福なクロスオーヴァー(交配)は、ユニークな化学反応をあちこちで起こしています。当時のブームを知る人は、ドルソンやアニソンを、またアイドルやアニメファンの方には、当時のブームをチェックをしていただくと音楽的に非常に興味深いトピックが色々と見つかるかと思いますので、是非ともご一聴を!

都内在住の極々平凡なサラリーマン兼、アニメ、音楽、プロレス、映画…と好きなものをフリーダムに、かつ必要以上に熱っぽく語るBLOG「さよならストレンジャー・ザン・パラダイス」管理人。永遠の"俺の嫁"である「にゃんこい!」の住吉加奈子さんと共に、今日も楽しいこと、熱くなれることを求めて西へ東へ。