「密室芸」「文化人パロディ」…今まで蓄積されていたタモリさんの芸が爆発!

そして、タモリさんと言えば「密室芸」。

『笑っていいとも!』放送時には、ほとんど披露される機会がありませんでしたが、この番組では「湯島限定のテレビ」の中で、それこそ「今度は俺の話を聞いてよ!」と言わんばかりに爆発させています。

例えば、通販番組の「ワールドショッピングショー」は、タモリさんお得意の四か国語麻雀の発展版。

さらにこれを昇華させたのが世界各地の音楽を紹介する「世界音楽紀行」で、怪しげな外国語風の言葉を操るだけでなく、プロのミュージシャンを従え、まるでベテランボーカリストのようにそれらしく歌い上げています。

オルケスタ・デ・ラ・ルスが出演した「サルサ」の回では、この湯島の番組が終わった後、バーにいた吉原さんがホワイトレインボーのネコを「あれってノラ?ノラ?」としつこく言っていましたが、これはデ・ラ・ルスのボーカリストの名前がノラさんだったからでしょう。

また、「日本古典文学講座」の李沢教授、「クローズアップしすぎ現代(最近は「湯島スペシャル」として放送)」の野々村教授のような文化人のパロディも、かつて寺山修二や野坂昭如などのものまねをしていたことがもとになっているのではと考えています。

その他、電車を取り上げた「始点・終点」、「日本の車窓から」では、すでに知られているタモリさんの鉄道に対する知識の深さをいっそう理解することになり、一方、バーで話したことから派生したと思われる企画「全国高校合唱コンクール」、「全国高校吹奏楽コンクール」はタモリさんが気になることを誇張しながら具現化し、バカバカしいんだけど持論を笑いで伝えるという、タモリさんならではのスタイルを見たような気がします。

タモリさんがいたからこそ生まれた『ヨルタモリ』

今回、このコラムを書くにあたり、いろいろとメモを取りながら番組を見直しましたが、見れば見るほど、「タモリさんだからこそ出来た番組なんだな」と思わされました。

わずか30分。

しかしこの短い時間には、タモリさんの芸や趣味、知識など、ありとあらゆる今までの積み重ねが凝縮されていました。

それなのに、明日からの新たな週に備えてそろそろ寝ようかという人もいる日曜23時15分に、何も考えずに楽しめる番組に見せてしまう。そこがタモリさんの凄いところであり、この番組の魅力なのだと思います。

惜しまれつつも、間もなく最終回を迎える『ヨルタモリ』。

でも、終わってからも録画したブルーレイを時々引っ張り出しては見てしまうんだろうな…。

そして、いつの日かシーズン2がありますように、と願いたいのですが、また視聴者の予想を心地よく裏切り、またどこかで違う面を見せてくれるのかなという気もしています。

アイラブユー、『ヨルタモリ』

会社員からテレビ番組やDVDなど映像関係の英日翻訳者を経てライターに。 ハーバルセラピスト、アロマセラピーアドバイザーの資格あり。子供の頃からお笑い好きで、当時読んだ「落語全集」は宝物。でも、なりたかったのは落語家ではなく小説家。今、こうして文章を書いて人に伝える仕事をしていることに喜びを感じてます。