――すさまじい熱量ですね……! そういった取材のなかで、キャラクターのモデルになった実在の方なんかもいらっしゃいますか?

高木:モブの女の子は大体モデルがいますね。会場で、「この子を描こう!」って思うことは多いです。自分の好きな俳優、アイドルなんかが「たとえ失敗したとしてもとにかく大好き!」って感じの子から、評論家っぽい子まで、いろんなタイプのファンが会場で思い思いに話しているんですが、みんな本気なところがすごく素敵だと思って描かせてもらってます。

隊長たち「ドルメンX」4人のモデルはいないかな。漫画のキャラとして、4人そろった時のパワーバランスの良さは考えました。俳優の佐藤流司さんにはキャラクターとしてご登場いただいているんですが、あれはモデルというか、完全にご本人です(笑)。

セリフのチェックをご本人と事務所の方にしていただたいたので、完全にご本人完全監修なんですよ!結構ノリノリでセリフも考えて頂いて、ありがたかったです。

『ドルメンX』2巻に登場する佐藤流司さん

――なるほど。リアリティって部分の話に戻らせていただくんですが、「アイドルと恋愛」みたいな部分もかなり踏み込んで描がかれてますよね。難しい問題にあえてぶつかる姿勢がすごいと思います。

高木:一般的にはさけたほうがよいと思われる道を、私はこの作品描いていく上で、なるべくまっすぐ歩きたいって思ったんですよね。だからあえてぶつかりました。

作中のように交際相手がいる、もしくは過去にいたことで騒動になってしまったアイドルって、無言になってしまうんですよ。本人はすごく深く傷ついているのかもしれないし、怒っているのかもしれない。でもその本人の考えって一切分からないまま、謝罪の文章が発表されたり、沈黙を通したり。それが大人の対応で正解なのかもしれませんが、アイドルだって人間なんだから絶対に何かを感じているはずじゃないですか。

アイドルって自分と全く別世界の人って思いがちだと思うんです。でも、こういうテーマを扱うことで、「きっとアイドルも自分と同じように人間としていろんなことを考えているんだよ。なんで恋をすると問題になってしまうんだろう?」ってことに触れられたらいいなと思ったんですよね。

私もテレビでカッコいい芸能人の結婚発表とか見ると「えーっ!」って言っちゃうタイプなんですよ(笑)。それって、なぜだろうって紐解きたくて。

――「紐解きたい!」って思われるところがまた、面白いですよね。それも哲学と言われる由縁かもしれませんね。

高木:そうかもしれません(笑)。「アイドルだから」「人気商売だから」の一言で片付けられてしまうことかもしれないんですが……。『ドルメンX』って“アイドルってなんだろう?”って私の疑問からはじまってる部分も大きいので、その疑問をじっくり考えながら描いているところはあります。

――そんなシリアスな話を扱いつつ、舞台裏をリアルに描いているだけに、関係者からの感想が気になるところです。

高木:こんな内容なので、取材を申し込んでも断られるかな?と思っていたんですが、ありがたいことに応援してくださる方が多くて。アイドルの苦難を描くことで、事務所の方や雑誌の編集さん…、表舞台には出てこないけど芸能界を支えている方の思いを描けたらいいなとも思っているのですが、関係者の方々は予想以上にアツいんですよ! ステージ上に立つ方たちはあまり内容については深く触れてこないんですが、「どこどこのシーンは自分と重なりました!」って言ってくださる方もいてうれしいですね。

――ファンが共感できる部分もありつつ、アイドルやそれを取り巻くすべての人のメイキング的な部分もあるっていうのは非常に面白いですね。愛や興味が大前提としてありつつ、ドキュメンタリーになっているというか。

高木:そうですね。職業モノな部分はあると思います。だから、『ドルメンX』が描いているのはアイドルだけど、毎日ルーティンワークをしている社会人の方も「この感情知っている!」って思ってもらえるように、と描いています。

例えば、隊長たちが「お金を頂いて舞台に立つってこういうことなのか……!」って実感する シーンの感覚は、社会人になって初めてお給料をもらった時に誰もが抱いたことのあるものだと思うんですね。

――最後に読者の方にメッセージをお願いします。

高木:えー、 「宇宙人設定どこいった!?」って思われている方もいるかも知れませんが、これから重要なポイントになってくるので安心してください(笑)。真面目なことを言うと、最近、「身の丈に合わない夢を持つのはカッコわるい」みたいな風潮があるじゃないですか。「頑張らないのがカッコいい、スマートだ」みたいな。 作中にヨイちゃんの台詞で「予防線張って逃げ道作ってんじゃねーぞ!?」っていうのがあるのですが、自戒もこめて心底そう思っていて。『ドルメンX』を 読むことで、身の丈に合わないような夢でも追いかけられる人が増えたらいいなって思うんです。「ダッセー姿いっぱいさらして、地球一かっこよくなってよ。」と思うし、わたしもこの作品を描くことで、イタくて、ダサくて、地球一カッコよくなりたいと思っています! 毎日全力で『ドルメンX』を作っているので、どうかよろしくお願いします!