続く曲は『ZeTeS』から『Strength I need』。メロディアスなCazquiのギターに聴き惚れるうちに、尋の力強いシャウトが重なり、どんどん彼らの曲世界に引き込まれていく。“聴かせるメタル”といったところか、新たなノクブラの境地を垣間見た気がする。

同じく『ZeTeS』からの『Deep inside』では、一転激しく。モッシュピットではサークルモッシュが発生し、「Forever!」の合唱を客席も歌い上げる。重めのドラムに重ねていく音圧はノクブラのライブの魅力のひとつ、一度味わったらクセになる。

『V.I.P』では「これが何かわかるよな、東京!?」の声とともにCazquiがバズーカキャノンを持ち出し、ステージサイドから吹き出した銀テープと同時に発砲する。銀テープを手に、高らかに手を挙げて踊りまくるフロアは、総じて笑顔。楽しいアンコールは、お祭り騒ぎのような曲で締めくくられた。

メンバーがステージから去り、暗転してからも客席からはダブルアンコールが鳴り止まず、結局ダブルアンコールへ突入。尋からは「ずばり言っておく。残り2曲! オマエらはこの2曲に何をぶつける!?」と全力の煽りが飛び出す。

そうして演奏された『A Day of Re:member』では、客席も全力のヘドバンを披露する。低く激しく弾くMasa、激烈にシャウトする尋、バスドラを踏みならすNatsu、仁王立ちのCazqui、しなやかに踊るDaichi……これぞノクブラ、といった感じの重低音とパフォーマンスが惜しげもなく披露される。

そして尋が「しっかり死んで帰ってください!」と叫んだラストの曲は『A bullet of slyline』。タイトルコールで大歓声が上がり、客席の大多数はノクブラのタオルを振り回す。コーラスパートは会場全員で合唱し、メロ部分ではタオルのロゴをステージに向けて掲げるファンの姿も。

モッシュも多数発生、グチャグチャになったフロアに向けてダイブする人も発生し、もはや誰もが死にものぐるいで暴れているのは一目瞭然だ。もちろん、フロアも、ステージ上も。

ライブのラストは、尋の絶叫で締められた。汗だくのパーカやスティックなど、ファンサービスに替えて思い思いのものを客席に投げ込んで、メンバーたちはステージから去って行く。最後にNatsuが深くお辞儀をして去って行ったのが、印象的だった。


2016年前半も攻めたスケジュールをこなしてきたノクブラだが、後半もかなりハードだ。まず7月からのユーロツアー、9月からは全国ツアー『DAIMOS』が始まり、冬にはベストアルバム発売、2017年4月1日には新木場STUDIO COASTでのツアーファイナルも決定している。

さらには、10月8・9日に行われるラウドメタルの一大祭典・LOUD PARK2016のオープニングアクト出演も最近発表され、ノクブラはその身にますます内外からの注目を集めている。

これからさまざまな場所で彼らのライブを観たり、音楽に触れたりするチャンスがあるだろう。国内に限らず、国外でも。ぜひ、偏見なく、自由な心でその音楽を楽しんで欲しい。月夜に響く悪魔のオーケストラの音楽に、きっとあなたも夢中になるだろう。

 フリーランスエディター・ライター。原宿系ファッション誌の編集者などを経て、2014年独立。ファッション、アニメ、マンガ、ヴィジュアル系、腐女子などのカルチャー分野について執筆。