そんなわけで、ハニカミとはほど遠くまるで地元猫のようなわがもの顔で、
今夜やってきた千円でベロベーロになれる店は、中野の「鎌倉酒店」である。
ここ数年中野には立飲み屋が増えている。
この店のウリは焼き鳥と焼酎を“富田の名水で割った”「まえわり」らしい。
まえわり。なんとなく香ばしい響きである。
日替わりのまえわり焼酎は一杯280円と手頃だ。
すでに混み合う店内を切り盛りするのは、店長らしき爽やかな兄さんと
ダルビッシュサエコばりの美貌と気配りを兼ね備えた女子だ。
そして焼き場で一心不乱に串を返し、焼きなすの皮をむき、
トマトを切る手さえもあざやかなシブめの板さんだ。
店内には大きな焼酎かめがいくつもあり、
芋焼酎メニューには「飲みごたえ」という項目に
★印がそれぞれしるしてあるのだが、店長に「どんなふうに違うんですか?」と
会話のきっかけをつかむべく、聞いてみると★の数が多いぶんだけ、
「芋~って感じです!」と元気よく答えてくれた。
ので、とりあえずビールと一本100円の串に150円の限定鶏ハラミ、
それに与論島直送というもずくなどを頼む。