①加藤登紀子

時代を生き抜く歌の力を、ほろ酔い気分で味わう一夜

 嬉しいこともつらいことも、1年間のあれこれを思い出しながら、“おときさん”の歌にしみじみと酔いしれる――。1971年の初演から50年、年末の恒例行事となった加藤登紀子「ほろ酔いコンサート」が、今年も無事に開催されることが決まった。

「何年か前に“一回も欠席してない人は?”と聞いてみたら、手を挙げた方がけっこういたんです。本当にありがたいですよね。普通のコンサートでは、初めて見る方のために、トータルで「これが加藤登紀子です」というものを志しているんですが、そこでは出しにくい曲も「ほろ酔いコンサート」だったら全部出せる。“今年の私はこうなのよ”という感じですね」

 今年の私=2021年の加藤登紀子は、コロナ禍に負けず活発な活動でファンを喜ばせてくれた。8月には念願だった『哲さんの声が聞こえる』を上梓し、アフガニスタンで社会活動に奉仕した故・中村哲医師の業績を書籍化。そして9月に発売した3枚組のCDアルバム『花物語』は、花と共に歩んできた音楽人生を、新解釈のベスト選曲に新録音を加えて編み上げた、大きな花束のような作品だ。

「私の歌ってきた「百万本のバラ」「さくらんぼの実る頃」、「愛のくらし」や「花はどこへ行った」も、花がテーマで、しかも生きることが厳しい時代の歌が多いんです。人が運命の岐路に立たされた時、救いを求めて花に自分を託してきたのかなと思うんですね。まさに今、“生きる”ことに皆が向き合う時代に、『花物語』というアルバムを出すのはとても意味のあることだと感じています」

 アルバムには故・小林亜星への追悼の思いも込めた人気曲「酒は大関」も収録され、コンサートでもきっと歌われるはず。恒例の観客への振る舞い酒(*今年は「お土産」として提供)も併せて、優しさとくつろぎに包まれる「ほろ酔いコンサート」へ、ぜひ足を運んでほしい。

「大関のCMは1971年にスタートしたんですが(*次女の歌手・Yaeが歌う新CMが放映中)、月日が経ってますます大切になった歌です。「時には昔の話を」(映画『紅の豚』エンディングテーマ)は来年で映画上映から30年、「知床旅情」は60年、「琵琶湖周航の歌」は100年前に作られた歌ですけど、今歌ってかっこいいと思える歌を歌わせてもらってきたことは、すごくありがたいですね。時代を生き抜いて、大切な存在に成長した歌たちを、ぜひ聴いていただきたいと思います」