――「総選挙」はAKB48最大の特徴であり、広いアイドル界を見ても珍しい取り組みですよね。

ファンに人気投票をさせるアイドルは他にもいますが、せいぜい十数人の中での序列に過ぎず、AKB48ほど熾烈ではないでしょう。AKB48では、曲やCM、テレビにおける雛壇の位置など、あらゆる情報が選抜を巡る戦いとして解釈されます。例えば最近だと、音楽番組で前列にぱるる(島崎遥香)・後列にまゆゆ(渡辺麻友)がいたというだけで、『ぱるるのほうが運営に推されている』などと匿名掲示板で盛り上がったりする。誰がどこに座っていて立っているのかという情報が、常にAKB48内の序列をめぐる解釈ゲームのネタとなっていくんです。

また、そうした序列をめぐるゲームは総選挙に限りません。例えば、AKB48が登場するソーシャルカードゲーム「AKB48ステージファイター」(GREE)では、「推しメン(※特に応援したいメンバーの意)」の同じプレイヤーがチームを組んで争い、勝利したチームの推しメンがCM出演権を獲得するというイベントが行われました。この選抜では、一般的な認知度が高くないメンバーも選ばれています。

僕の推しメンだと、まりやぎ(永尾まりや)という子が選ばれているんですが、どのくらいの費用をかければ出演権を獲得できるのか概算したことがあるんです。あくまでこれは僕の適当な試算ですが、だいたい1週間で15万くらい使える人が7人ほど団結すればいいみたいなんですね。1週間で15万もゲームに使うなんてバカじゃないかと思われるでしょうが、それでも推しメンが全国区のCMにバンバン出られるというのはすごいことじゃないですか。そのためなら15万くらい出す、という意識の高いヲタを集めることは、難しいけれど不可能なことではない。握手会のために何百枚もCDを買う人が多くいるくらいですからね。
 

――ゲーム性は、金銭を注ぎ込むからこそ感じるものなのでしょうか。

そうとも限りません。先ほど触れた「コール」がまさにそうです。ライブでは推しメンの名前を叫ぶ「コール」をするんですが、ファンの多い人気メンバーほどやはりコールは大きい。だからあんまり人気のない子のコールをしても、かき消されてしまうんですよね。でも発声を鍛えれば、ひとりでも対抗することができる。また、デカい声を出していると、周りが協力してくれてコールしてくれることもある。たかがメンバーの名前ひとつ叫ぶだけでも、十分にゲーム性があるんです。

このように、AKB48にはありとあらゆるところにゲーム的な要素が張り巡らされています。他のアイドルグループにももちろん、ライブを見る、握手をするという楽しみはありますが、AKB48ほど苛烈な序列をめぐる競争というのは成立しておらず、育成ゲームとしての没入度は低い感じがします。

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