赤い石で造られた民家の建ち並ぶ街並みは、まるで絵本の世界に迷い込んだかのような雰囲気

【新連載・フランスの小さな村への招待状・1】 パリやリヨンなど華やかな大都市から遠く離れた、フランス南西部のリムーザン地方。幸せそうに牛が寝そべる放牧地に囲まれた人口500人程の小さな「コロンジュ・ラ・ルージュ村」を目当てに、毎年100万人近くの観光客が訪れます。世界中の小さな村を数多く巡ってきましたが、この村の見事な赤い街並みは唯一無二の美しさです。ちなみにフランス語で「赤」を意味する「ルージュ」が村の名前に付け加えられたのは20世紀に入ってからで、住民の誇りとアイデンティティが込められているのだそうですよ。

【赤い街並みの秘密】

村を歩けば視界に飛び込んでくるのは、赤い石で造られた民家の建ち並ぶ街並み。まるで絵本の世界に迷い込んだかのような雰囲気で、ここは現実世界なのかと思わず疑ってしまうほどです。それでも村内を散策すれば「ボンジュール」と住民同士が挨拶を交わしていて、しっかりと人の営みが根付いた土地であることを実感します。

もちろんこの赤い街並みも、テーマパークのように外から運んできたものではありません。村からすぐの地層から産出される酸化鉄が混ざった砂岩が昔から建築材として利用され、目にも鮮やかな赤い景観が生み出されているのだとか。数百年という歳月を通じて村の暮らしを見守ってきたのだと思うと、感慨深いものがありますね。

【村のシンボルのペニトン礼拝堂】

死者の埋葬を無償で行ってきたペニトン信徒団を16世紀から受け入れてきたのが、この村に佇むペニトン礼拝堂です。しかし近代化と共に信者が減少していくと、19世紀初めにはメンテナンスが行き渡らなくなり廃墟と化してしまいました。当時の資料によれば、屋根は崩れかけ、雨が降れば建物内へと水が滴り落ちてくる状態だったそうです。

長きにわたりこの村と同じ時間を歩み続けてきたペニトン礼拝堂を救いたいという多くの住民達の想いから、1927年にリノベーションのためのプロジェクトが発足。淡く優しい色合いでこの地域の牧歌的な風景を描いてきたフランス人画家ラファエル・ガスペリ(Raphael Gasperi)を初めとする芸術家達から絵画が寄贈され、チャリティくじによって修繕資金が集められたのだそうです。

この村を訪れるにはフランス南西部の中心都市トゥールーズからレンタカーを利用するのがお勧めです(車で約2時間20分)。少し行きづらい場所ではありますが、一生忘れることのできない美しい景観が皆様を待っています。

今回は「フランスの最も美しい村」協会の本部が置かれていることでも知られているコロンジュ・ラ・ルージュ村の魅力をお伝えしましたが、いかがでしたか? 素朴で飾らないフランスの小さな村の魅力を引き続きご紹介させて頂きます。次回もお楽しみに。(文/写真・高津竜之介)

高津竜之介

レンヌ第二大学非常勤講師(日本語)、NPO法人「日本で最も美しい村」連合 在フランス研究員、レンヌ第二大学博士課程/研究テーマ:社会的イノベーションと最も美しい村