4. 同じですが女子編
新卒採用特有の集団面接をしていると、いろいろな人間模様が生まれます。ある3名集団面接で、男2、女1の状態になりました。たまたま男性2名が一番・二番と回答し、最後に女性が回答する順番にたまたまなりました。そこで男性の回答が終わった後に、その女性は口癖のように言うのです。
「前の方と同じですが、私は○○だと思います」
集団面接では、この「前の人と同じですが」は禁句なのです。どうしても面接官が、ああまねるの回答なのねと思い込ませてしまうからです。
質問が繰り返され、その女子学生は、いつも「前の方と同じですが」を繰り返すのですが、その回答は前の人とは全く違い、的を射ている回答なのです。ついには「私の姉も同じなのですが」まで言い始めましたが、回答は至極まともを超えた優秀な回答。これには評価が分かれました。面接官同士で「あの前の方と同じさん」というあだ名までつけられましたが、回答自体はとても当社の社風に合っている。さて困ったなというのが、面接官の意見。でも私としてはもう一度会ってみたかったので、「個人面接だったら変わるかも知りませんよ。今度は一人だから、前の方いませんから」との意見を出して、彼女を次の個人面接の二次面接に進めました。
さて、個人面接。たまたま面接官は私になりました。そこで、質問をすると、今度は、「私の母も同じ意見なのですが」、「周りの方も同じだとおっしゃるのですが」と、「うわー今度はその方向で、きたか」と、頭を抱える状態に。
さすがにこれはと思ったので、面接をすこし中断して、「Cさん、これは面接じゃなくて、個人としていうけど。その○○と同じというのは止めた方が良いよ。君自身の考えを述べてください。」というと、Cさんははっとして、「いままで出る杭は打たれるから、周りに合わせなさいと教えられました」との回答。だれからと聞くと、大学の就職課の先生からです。おーい就職課の先生、完全に間違っているぞーと言いたくなりました。
「Cさん、それは止めた方が良い。絶対良いことないから」というと、「わかりました」と言って、その後は「同じですが」は無くなり、もともと優秀なだけに、無事内定→入社となりました。学校の就職課も疑ってかかる時代になったかと感じる採用でした。
5. 行方不明な男編
採用活動は面接や筆記試験だけではありません。今年はちょっと変わった選考をしようと、三次選考は、面接ではなく、野外試験とした年がありました。選考対象の10人にデジタルカメラをわたし、写真は10枚まで撮影OK。日本に観光に来る外国人の方に日本の美を伝えるプレゼンをしてもらうので、写真を撮ってきたら、模造紙に貼り付けて、観光案内を作ってプレゼンして下さいという内容でした。
10人はそれぞれ散って、思い思いの写真を撮って、会社に戻り、模造紙にプレゼン用の発表資料を作り始めました。しかし男性のDさんが夕方になっても帰ってきません。しかしそれほど危惧はしていませんでした。この手の選考をやると、どこの写真を撮るか悩んでしまったりして、棄権者が多いのです。結局、プレゼンの時間になってもDさんは戻らずに選考が終了してしまいました。
カメラは返してもらわなければならないので、Dさん宅に電話すると、お母さんが出て、帰ってきてないとの返答。事情を伝えて、棄権するなら、カメラを返すようにと伝えて、電話を置きました。その二日後、突然Dさんが会社を訪れました。こっちは心配していたのに、文句の一つも言おうと思っていたところ、Dさんは「遅くなりました。写真撮ってきました」と言いました。「はあ?」もうとっくに選考は終わっている・・・のですが、Dさんいわく、「特に期限はなかったはずですが」と。確かに事前に渡した資料には、いつまでに完成させるという文言が抜けていたのです。しかし人事としては気分よくありません。
しかしDさんの写真を見たところ、評価は一変。
富士山を麓から登り、一合目から1枚ずつ写真を撮り、最後の写真はご来光。参りましたよ。
外国人どころか、人事全員が感動する写真でした。
「考えるヤツは違うねえ」と人事部長。採用が確定した瞬間でした。
いかがでしたでしょうか。トンデモ学生編。世の中いろいろな人にお会いできるのも、人事の魅力です。もしよかったら、希望職種「人事」と書いてみませんか? 悲喜こもごも味わうことができますよ。