【心がまあるくなる話・14】 昨年から続く食品をはじめ、さまざまな原材料の高騰。じわじわと押し寄せる値上げは、消費者はもちろん、経営者にとっても頭を痛めるところだろう。特に食品の値上げは家計に大きく影響する。値上がりしたからといって、安価なものだけに重きをおいてしまうのも何か違う気がしている。
あれ、いつもの食パンが何か違う
昨年の出来事になるが、年末に行きつけのパン屋へいつものように食パンを一斤予約し、帰宅してからカットした。あれ? いつものもちもちで弾力のある食パンと何か違う・・・。
ナイフを入れると、パンがポロポロ、パサパサしている。気のせいかと思い食べてみると、やっぱりいつもの食感ではなく、風味も感じられなかった。
自分が美味しいと思える食パンを数年前から近隣で探し、食べ比べ、ようやくそのお店に定着していたこともあってショックだった。
作る人が変わったのか、私の味覚がおかしくなったのか、一度、お店に聞いてみようとまで考えたが、年末でバタバタしていたこともあって、原因がわからず、そのままになっていた。
その後、年明けに、オーナーがそのパン屋を利用している美容室にいったときのこと。「あの店の食パンの味、なんかパサパサして味落ちていません?」とオーナーに聞いてみたところ、「僕もそう思っていました」と言う。
私は美容室のオーナーと話したことで確信したが、「もう一度だけ食パンを食べてみよう」と思い、パン屋へ足を運んだ。食べてみると、やはり以前の美味しさは消えており、私はお店から離れたのだ。
価格の値上げというのは消費者にとってたしかに大きいことではあるが、味が変わってしまうのはそれ以上に残念なことのように思う。値上げをして、一時的に売り上げは落ちても、おいしさを守っていればお客さんは戻ってくるのではないだろうか。
そんな出来事があった後に、パン屋を営む友人がSNSで原材料の高騰化のため、価格の値上げのお知らせをしていた。コメントには「私たちは美味しさをそのまま大事にしたいという思いから、申し訳ありませんが価格の値上げをさせていただきます」という友人夫婦の思いが表現されていた。
私はその投稿を見てホッとした。友人夫婦が決断したことは自分たちのポリシーであり、お客様目線であったことに心が温かくなった。
大切なのは、無理な価格維持でなく、「おいしいを守る」こと。そんなお店がなくならないことを願いたい。(蓮花)
蓮花(はすはな)
暮らしまわりを物語る「暮らしクリエーター」。日々の中で心がまあるくなるような暮らしに寄り添うモノを探し、毎日を手づくりしていくようなライフスタイルを提案している。