小野あつこ(スタイリング:三原千春/ヘアメーク:安藤千浪) (C)エンタメOVO

 2022年4月2日をもってNHKで放送中の「おかあさんといっしょ」を卒業した「あつこお姉さん」こと小野あつこ。6年間、うたのお姉さんとして活動したあつこお姉さん最後の放送には、卒業を惜しむ声が集まり大きな反響を呼んだ。番組に携わる以前から「子どもが大好きだった」という小野に、改めて番組を振り返ってもらった。

-6年間のうたのお姉さんとしての活動、お疲れさまでした。改めて、小野さんにとってこの6年間はいかがでしたか。

 長かったようで、あっという間で…、本当に濃い6年を送らせていただきました。これほど没頭させていただけて、夢のような時間でした。コロナ禍でスタジオに子どもたちを呼ぶことができなくなってしまったり、コンサートが中止になってしまった時期もありましたが、親子収録と形を変えて再びスタートすることができ、スタジオに子どもたちが戻ってきた瞬間は、忘れられない思い出です。私たちはもちろんですが、スタッフさんたちも、皆がその日を待ち望んでいたんだということを感じました。

-コロナ禍での番組制作は、制限のある中でもさまざまな工夫やアイデアが感じられて、私たちも勇気をもらいました。

 やはり物理的には子どもたちと会えない日々が続いて、夢に子どもたちが出てきたこともあったほど寂しかったですが、番組を見たお子さんたちが、私たちのイラストやお手紙をたくさん送ってくださって、皆さんとのつながりを感じることができました。会えない時間も皆さんが寄り添ってくださっていることを感じられたので、私たちも励みになりました。

-そうした経験を経て、新たな気付きはありましたか。

 新たにということではないですが、子どもたちのエネルギーの偉大さは改めて感じました。45人近い子どもたちがスタジオに来てくれて、一緒に歌って、「楽しかったよ」と声を掛けてくれたことが、日々の原動力になっていたんだなと。

-うたのお姉さんとしての最後の収録についても教えてください。

 最後の収録は、新しいお姉さんのまやお姉さん(ながたまや)を紹介して、皆で歌を歌うという内容でしたが、私は本当に涙もろいので、(本番は)大丈夫かなと心配していたんですが、実際に収録になったら、自分が初めてカメラの前に立ったときのことを思い出して、自然と落ち着きました。すごく不思議な感覚でした。自分のことを思い出しながらバトンタッチをするというのは。最後は皆と楽しんで歌い、感謝の気持ちで収録に臨めました。

-一緒に番組を作ってきたお兄さんやお姉さんとの思い出も聞かせてください。最初の1年間は、だいすけお兄さん(横山だいすけ)と出演していましたね。

 大先輩で、私が1日でも早くなじんで、子どもたちとの収録が楽しめるようにと、りさお姉さん(上原りさ)とよしお兄さん(小林よしひさ)と一緒に手取り足取りたくさんのことを教えてくださいました。お兄さん、お姉さんとしての心構えや、私が入る前に経験されたことなど、大事なことをたくさんお聞かせいただき、感謝でいっぱいです。

-そして、その後はゆういちろうお兄さん(花田ゆういちろう)と一緒に活動してきました。小野さんから見て、ゆういちろうお兄さんはどんな人ですか。

 ゆういちろうお兄さんは、舞台やミュージカルの勉強もしていらっしゃって、加入されたときから日々、いろいろな刺激を受けていました。皆のことを気遣ってくれ、引っ張ってくれる頼れるリーダーで、すごく安心感のある方です。この5年間は家族よりも長い時間を過ごした、大事な仲間です。

-2019年からは、たいそうの誠お兄さん(福尾誠)と杏月お姉さん(秋元杏月)さんも加入しました。

 誠お兄さんは、とても面白い方です。「そうぞうのへや」というコーナーでは絵も描いていましたが、すごい発想力で、驚くような絵を描くこともありました。私に全く違う見方があることを教えてくれた方です。杏月お姉さんは、妹のようにかわいくて、天使のようにいい子。心が優しく、学ぶことがたくさんありました。子どもたちも皆、杏月お姉さんが大好きでした。

-この6年間、着ぐるみやかぶり物など、たくさんの姿を見せてくれたあつこお姉さんですが、どの衣装が一番のお気に入りでしたか。

 おにぎりになれたことがうれしかったです。私が子どもの頃に「おかあさんといっしょ」で、お兄さん、お姉さんがおにぎりになっているのを見ていたので、憧れがあったんです(笑)。お姉さんになることが決まったときに、子どもたちに会えることの次に楽しみにしていたのが、着ぐるみを着られることでした(笑)。おにぎりだけでなく、ピーマンやトマトになったり…。一通りの食べ物になることができたと思います。

-4月20日には、「月のうたベスト集」となる『「おかあさんといっしょ」最新ソングブック まほうのラララ♪』が発売になります。特に印象深い曲は?

 タイトルにもなっている「まほうのラララ♪」です。皆が声を出して歌うことには制限がある時代ですが、皆で「ラララ」と歌えたらいいねという気持ちを込めています。この歌を通して笑顔や幸せが広がっていけばいいなと思いながら皆で収録しました。私の卒業前最後となったコンサートが、岩手公演だったのですが、その最後の曲としても歌わせていただいた曲です。お客さんたちが一生懸命に踊ってくださった光景が今でも心に残っています。このソングブックには、新聞紙やダンボールなどの家庭にあるもので遊べる「あそびスペシャル」という特典映像もあるので、ぜひ、これを参考にしておうちでも遊んでいただけたらいいなと思います。

-コンサートといえば、「いないいないばあっ!」のワンワンも参加した『「おかあさんといっしょ」みんなとつくるコンサート! ワンワンもおとうさんもいっしょ!』も同日に発売になります。

 私は「いないいないばあっ!」がスタートしたときからリアルタイムで見ていたので、ワンワンと一緒に歌えて感動しました。「ワンワン☆ダンス」などの、普段は歌う機会がない曲も歌わせていただき、皆さんとコラボできたのはお祭りみたいでとても楽しかったです。

-さらには、あつこお姉さん6年間の軌跡を追った『「おかあさんといっしょ」メモリアルベスト またあおうね!』(ブルーレイ・DVD)と『「おかあさんといっしょ」メモリアルベスト いっしょにうたえばわくわくひろがる』(CD)が6月29日に発売になります。メモリアルベストは、特に思い入れの深い曲が多いのでは?

 「きみイロ」はゆういちろうお兄さんと誠お兄さんと杏月お姉さんの4人で初めて外でクリップを撮影した曲で、思い出深い一曲です。とてもメッセージ性の強い歌で、子どもたちに「ちいさなきみがね これからであうイロ どんなイロ」とかがんで子ども目線で語りかけるように歌っています。先ほどもお話しした、卒業コンサートのアンコールでも歌わせていただきました。私の人生とともに歌も生きているのを感じる曲でもあります。

-うたのお姉さんを卒業後の活動は?

 コロナ禍を経験したことで、音楽を通してより子どもたちと関わりたいという思いが強くなりました。ですので、子どもたちに向けての活動を中心に行っていけたらいいなと思っています。

(取材・文・写真/嶋田真己)