昨年、現在の芸名におけるデビュー50周年を迎えた五木ひろしが、東京・明治座で昭和歌謡の“五大作曲家”を演じる。若手歌手への熱血指導を通じて昭和を彩った音楽の魅力を紐解く『五木ひろし劇場』の構想を、五木本人とゲストの市川由紀乃に聞いた。
新春『五木先生の歌う!SHOW学校』舞台版が新型コロナウイルス感染症の影響で公演延期となり、明治座での座長公演は約2年半ぶりとなった五木。「リベンジでもよかったのですが、仕切り直して別の企画を」と考えるようになった背景には、「後進にチャンスを与えたい」──という想いが滲む。
その想いが色濃く現れるのは、遠藤実・吉田正・船村徹・服部良一・古賀政男が生み出した楽曲を2日ごとに紹介する「第一部:不滅のメロディ 昭和の五大作曲家を歌う」だ。ゲストは各作曲家がつくった楽曲をレパートリーとする歌手になって、五木演じる作曲家からレッスンを受ける。五木は「たとえば僕が遠藤先生を演じる時、由紀乃ちゃんは山本リンダになって『こまっちゃうナ』を歌ってもらうの」と横にいる市川に語りかける。
「遠藤先生がヒットに恵まれず困っていた頃、リンダちゃんを預かって。彼女がレッスン中に発した“リンダ、困っちゃう”という言葉にピンと来て生まれたのが『こまっちゃうナ』だったんです」と五木。芸歴が長いだけあって、作曲家と歌手の間に生じたエピソードが頭の中に数多く入っているという。「歌の背景を“知っている”のが僕の大きな武器」「台本をつくらずアドリブで先生方の偉業を観客の皆さんと共有できたら」と笑う。回によって内容も異なるそうだ。
五木渾身のアドリブを受ける市川は、回によって島倉千代子や美空ひばりにも扮する。市川は「名曲誕生の瞬間が形になる。これをエンターテインメントとしてお客様に届けることを第一に考える五木先輩も偉大です」と述べ、「名だたる歌い手の方になることで、私の中に眠る引き出しがまたひとつ開く予感がしています」「五木先輩に感謝しながら、全力でアドリブに応えられたら」と意気込んだ。
名曲の歴史を紐解く第一部は、若手にとって歌の本質を掴む格好のレッスンになるだろう。五木は「僕が可能性を感じる子たちに声をかけた」と隣にいる市川をはじめ、ゲストの朝花美穂、辰巳ゆうと、新浜レオン、ベイビーブーに華を持たせる。そんな彼らの新曲やデビュー曲を中心に届ける第二部で、五木は司会に徹する。第三部は五木のワンマンステージ。5月25日(水)にリリースされる新譜「北前船」をラストに歌って盛り上げ、「勇ましい気持ちでお帰りいただけたら嬉しいです」と構成を明かした。
公演は、5月13日(金)~22日(日)に東京・明治座にて。チケットぴあではチケット販売中。
取材・文:岡山朋代