「夫とは長年のレスもあり、スキンシップはいっさいなく会話は子どものことだけ、休日の予定もろくに話し合わないまま、5年以上仮面夫婦として過ごしていました。
『子どもが家を出たら離婚かな』と考えていたのですが、夫が過労で倒れたときはさすがに放っておけませんでした。
夫が残業続きなことは知っていたのに、『どうせ家に帰りたくないだけでしょ』としか私は考えておらず、胸がちくりと痛みました。
病院のベッドで点滴を受けながら横たわる夫を見たら、家族のために仕事をしていること、仮面夫婦だけど家計は私に任せて無茶なお金の要求もしないことなどが思い出されて、『夫も我慢ばかりでストレスがひどかったのかな』といろいろ考えて。
私が毎日病院に来ることに最初は夫も居心地が悪そうでしたが、顔を合わせても沈黙ばかりだったのが少しずつ会話が増え、お見舞いに来てくれた人たちにもふたりで受け答えができて、ほっとしました。
無事に退院して家に戻ってからもそのまま話ができて、リビングにふたりで座っている私たちを見た息子が会話に加わってくれたのも、良かったと思います。
まだ完全に元に戻ったとはいえませんが、このまま距離が縮まっていければなと、流れに任せている状態です」(女性/48歳/小売業)
関心が消えたと思っていた配偶者でも、弱った姿を目の当たりにすれば心は動きます。
そうなった原因が自分でなくても、罪悪感だったり心配だったり、夫婦の溝を実感すると看病することで何かを償いたくなるのかもしれません。
そんな姿が配偶者にとっても安堵を引き出し、会話を取り戻すきっかけになるのですね。