テレビのバラエティー番組でも活躍し、俳優としても映画や舞台、テレビドラマなどでその実力を発揮しているウエンツ瑛士が、6月8日から上演されるパルコ・プロデュース2022「てなもんや三文オペラ」に出演する。原作となる「三文オペラ」は、1928年に初演された、差別と貧困・資本主義社会を痛烈に風刺した音楽劇の名作。主演に生田斗真を迎え、原作版では女優が演じる役柄をウエンツが演じる。NHK教育テレビ番組「天才テレビくん」で共演して以来の友人である生田との共演や役作りについてなどを聞いた。
-ウエンツさんが演じるのは、“ヒロイン”であるポール役です。出演が決まってどう感じましたか。
「三文オペラ」は世界的に有名な作品ですので、設定を変えた本作がどんなふうになるのかすごく楽しみでした。
-本作は、関西弁での芝居となりますが、それについてはいかがですか。
関西弁での芝居は初めてなのですが、最初の東京よりも大阪公演は緊張すると思います(笑)。完璧な関西弁は難しいかもしれませんが、それを目指しながらも、あまり言葉だけにとらわれず、役の感情を大事に演じたいとは思っています。
-今現在は、ポールという役柄についてどんな印象を持っていますか。
まだ稽古が始まっていないのでこれから変わるとは思いますが、誠実で真っすぐな人だなという印象です。ですが、それだけでは演劇において面白味もないので、感情のやり取りや動き、所作が大事になってくるんだと思います。今回、大先輩方がたくさんいらっしゃるので、見て学ばせていただきたいです。
-生田さんとは舞台での共演は初めてですが、俳優としての生田さんの印象は?
静かなエネルギーを持っているタイプだと思います。ただ、静かだけれど、そのエネルギー量は膨大。2人のバランスを考えると、今回は僕がエネルギーを前面に出していくのがいいのかなとも思いながら、稽古を楽しみにしています。僕は、斗真がお芝居をしている姿がとっても好きなんですよ。今回は、斗真が歌うので、それを横で聞けるのもすごく楽しみですし、カンパニーを引っ張っていく斗真のサポートもできたらと思っています。
-生田さんとは夫婦という役どころなので、甘いやり取りも期待してしまいますが。
そうですね。ただ、自分ではあまり(ラブシーンに対して)特別なものはありません。斗真のことはもちろん人として大好きなので、そこに少し特別な感情が乗るという感覚です。ポールとしても、そもそも人間として好きだという思いがあると思うので、すんなり入れそうな気はしています。
-ところで、ウエンツさんは、18年に芸能活動を休止し、1年間、ロンドンで演技の勉強をしました。イギリス留学を経て、ミュージカルや演劇に対する思いの変化は感じていますか。
あまり変わっていないと思います。ただ、いい意味で周りの見る目が変わったことは感じています。例えば、この作品もそうですが、こうしてお声を掛けてくださる方が増えたというのは変化だと思います。僕自身は、自分で気付けるほどの変化はないのですが、周りが変わるというのは不思議だなと思いながら、この2年間過ごしていました。
-技術的な面でのステップアップについてはいかがですか。
それも自分では分からないですね。もし、僕がこれがいいと思うことがあっても、それを周りの方がいいと思っていなかったら意味がないですし、極端なことを言えば、お客さんが楽しんでくれることが一番だと思うので。もちろん、その中でもスタイルの違いなどはあると思います。お客さんに迎合することがいい作品もあれば、お客さんを舞台に呼び込むのがいい作品もあります。そういう意味では、自分の中の選択肢は増えたと思います。
-子役として仕事をスタートし、バラエティーでも活躍していますが、自身の中では昔から俳優業への思いが強かったんですか。
正直なところ、あまりこれだというこだわりがあったわけではないです。特に小さい頃は、何となく仕事をしていました。
-では、そうした仕事の中でターニングポイントになった作品は?
舞台では、(14年に上演された)「天才執事ジーヴス」です。僕にとっての初ミュージカルだったのですが、そこでたくさんの人に出会い、たくさんの方に助けていただき、学ばせてもらいました。僕は、当時、何も知らない素人でしたが、とにかく無我夢中で取り組んだのを覚えています。それからレッスンに通い始めたり、ミュージカルへの思いも変わったので、大きなきっかけになった作品でした。
-特にここ最近は、コンスタントに舞台作品に出演されている印象ですが、それは意識して舞台作品を選んでいるのですか。
意識してできたら一番いいのですが、こうしてお声を掛けていただいたり、いい作品に出会えることは、巡り合わせだと思っています。あまり自分で言うことではないですが、自分がきちんと積み重ねてきたからこそ、巡り合うことができたんだと思うようにしています。これからもそれが続くように、目の前のことに、誠実に、丁寧に、謙虚に取り組んでいきたいです。
-出演する作品を選ぶときには、どんなところをポイントにしていますか。
自分が成長できるかどうかは、一番大切にしているところです。今作は、自分がこの作品の中でどんな役割を果たせるのか、自分に何ができるのか全く分からなくて、(出演するのが)怖かったんですよ。それと同時に、演出家さん、そして斗真をはじめとしたキャストのみんなを信頼することを忘れてはいけないと思ったんです。きっと僕以外にも(出演することが)怖いと思う人がいると思うし、そうしたときに頼れるのが仲間なので、それを忘れずに、作品を作っていきたいと思います。千秋楽を迎えたとき、どんな気持ちになっているのか楽しみです。
-最後に、上演を楽しみにしている人たちにメッセージを。
どんな作品になるのか、僕も全く想像がついていませんが(笑)、このコロナ禍でフラストレーションがたまっていたり、生活のリズムが変わっていく中で、「生で、目の前でお芝居を見る」ということはやっぱりすてきなことだと僕自身も思うようになりました。芝居は、ある種のぶつかり合い、愛情の交換だと思います。きっと何か持って帰っていただけるものがあると思うので、ぜひ期待してください。
(取材・文・写真/嶋田真己)
パルコ・プロデュース2022「てなもんや三文オペラ」は、6月8日~30日に都内・PARCO劇場ほか、福岡、大阪、新潟、長野で上演。
公式サイト https://stage.parco.jp/program/sanmon