源頼朝を演じた大泉洋 (C)NHK

 NHKで放送中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で源頼朝を演じてきた大泉洋が、6月26日に地元・北海道で実施された第25回のパブリックビューイング後のトークショーに登壇。道内外から集まった400人の観客を沸かせた。

 頼朝の落馬で終わる第25回放送後、トークショーに登壇した大泉は、半年間の頼朝役を振り返る中で、脚本の三谷幸喜について次のように言及した。

 「三谷さんは当て書きで、役者を決めてから脚本を書いていくので、今回の『鎌倉殿の13人』の頼朝は、僕にしか出せない頼朝であったのは間違いない。三谷さんは、僕をもちろん面白く描いてくれるけど、どっかで、悪いことをしている役にすることが多いんですよね」

 そうはいいながらも、大泉は「自分の新しい引き出しを開けようとしてくれる」と三谷への感謝も口にした。

 また、今回の頼朝役については、第15回で上総広常を粛清してから覚悟が変わったという。

 「あの第15回は、自らの兵を持たぬ頼朝と、血筋を利用したい坂東武者のせめぎ合いがあって、お互いが利用し合う関係であったからこそ、頼朝が一番怖い存在であらねばならない結果だったと思うし、信頼できる人がいないという中で厳しい決断をしていかないといけない悲しい人でもあった」と。

 だからこそ、好感度が下がることを心配していたところ、広常役の佐藤浩市からも、「こりゃ、大泉の好感度下がるな」と追い打ちをかけられたことを明かして会場の笑いを誘った。

 そして最後に、意外な撮影秘話を披露した。

 「第24回、範頼(迫田孝也)の(救済)嘆願の場面で、比企尼(役の草笛光子)さんが、頼朝をビンタしたいって言っている。でも台本に書いてない。でもビンタしたい。を繰り返した結果、「本番だけいいよ」ってことにしたのに、テストの前の段取りから、ビンタしたんです。それで、テストも本番もビンタしたので、3回もビンタしてきたんです(笑)。『当たったらごめんなさいね』と草笛さんは言いつつ、全部当ててきましたからね(笑)」

 この裏話を耳にした客席からは、思わず笑いが巻き起こった。

 イベント終了後には、マスコミ向け取材会に応じ、頼朝の義時に対する思いを次のように語った。

 「僕の中では、やっぱり頼朝さんっていう人は、人を見る目というのがあった人なんだと思う。そうじゃないと、生きていけなかったと。子どもの頃から流されて、自分のそばに置いておくべき人間が誰なのか瞬時にパッと気づくような人なのかな。そんな中で、義時には初めて会ったときから、なんとなく彼の慎重なところだったり、野心がないところだったり、そういう所に引かれていたのかなと思いはありましたね。これがいいことかは別として、どうしても小栗くんが演じているというとこで、どこか小栗旬と義時が重なるところもあって。僕が演じた頼朝は義時を信じて、思わず大事なことを話してしまうっていう存在でしたね」

(取材・文/井上健一)