NHKで放送中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。8月7日放送の第30回「全成の確率」では、源頼朝(大泉洋)の弟で、主人公・北条義時(小栗旬)の妹・実衣の夫でもあった阿野全成が、幕府内の権力闘争に巻き込まれた末、悲運の最期を遂げた。これに関連して、ここまで全成を演じてきた新納慎也と実衣を演じる宮澤エマがコメントを発表。全成の最期と2人の夫婦愛を振り返った。
まず撮影直後、全成の最期を「全ての皆さんの努力が報われた、いいシーンになったと思っています」と振り返った新納は、台本を読んだときの印象を次のように語った。
「台本を頂いたときに『本当にすてきなラストを描いてくださったな、三谷(幸喜)さん、ありがとうございます』と。三谷さんにも連絡して『ありがとうございます』と言いました。本当に悲しい、すてきな最期を描いてくれたと台本の段階でも思っていました」
一方、「台本を読んだ時点で号泣した」という宮澤は「こういう結末が待っているというのはもちろん、分かってはいたんですけど、そこをどう三谷さんが描かれるのかが分からなかったのと、実衣が全成の死にどう関わって、何を感じて、どう反応するのかというのは全く予測できていなかった」とのこと。
続いて、新納は、全成の最期の場面を一緒に作り上げた現場スタッフに対する感謝の言葉を口にした。
「それ(台本)をさらに何倍もすてきなシーンにしてくださった演出とスタッフの皆さんに、今はもう本当に感謝ですね。みんなの努力と、みんなの力です。僕だけではなくて、演出だけではなくて、三谷さんだけではなくて、照明・音響・美術・撮影など、全てのセクションの努力が報われました」
さらに、最期のときを迎えた全成が胸に秘めていた実衣に対する思いを告白した。
「斬られて流れた自分の血の赤い色を見たとき、ずっと実衣ちゃんに『きみは赤が似合うね』と言ってきたので、赤という色で実衣を思い出したんですよね、あの瞬間に。とにかくあの瞬間は実衣のもとに帰りたい、実衣に会いたいという一心で、実衣への思いだけで最後の力を振り絞って、というシーンでした」
これに対して宮澤は、全成の最期を聞かされたときの実衣について「実衣のたたずまいや、彼女が義時に聞く質問というのが、実衣らしいなとすごく感じました」と振り返った。
また、新納はここまで演じてきた全成について、「兄である頼朝さんの力になるために鎌倉に来て、できる限り、自分のできる範囲で力になろうとは思うけど、そんなにむちゃくちゃなこともしない」と分析。その裏には、実衣に対する思いがあったのだという。
「これは僕の考えですが、全成は実衣と出会ってしまったことで、自分のできる範囲で、もちろん頼朝さんのお手伝いはするけれど、基本は実衣とこの鎌倉で一生、穏やかに暮らしていきたかっただけの人になったんじゃないかなと思います」
そんな全成の愛を一身に受けた実衣から見た「全成の好きなところ」について、宮澤は「いろいろあるんですけど、秘密にしておきたいところもあります」と語り、さらにその理由を打ち明けた。
「なんでかというと、2人にしか分からないことなんだと思うんですよね。周りから見ていると『なんであの2人が』とか、『あの人のどこが好きなんだろう』とか思うかもしれないけど、実衣と全成は似た者同士というか、言い方は不思議ですけど、“共犯者”のような感じなんです」
“共犯者”という言葉に込めた思いについては、「それぞれ立派な一族(源氏と北条氏)の中でもふわっとした立ち位置で、ちょっと忘れられがちで、何をしているのかよく分からなくてという、すごく共鳴する部分が2人にはあるんだと思うんです」と説明。続けて、実衣が感じていた全成の魅力について、見解を披露した。
「実衣は全成さんが秘めている、中にあるパワーみたいなものを信じていて、そこが共鳴し合って引かれているのかなと思うので。実衣にとっては、彼の魅力というのが、実衣にだけかかっている魔法じゃないですけど、誰にも分かってもらえなくてもいいし、たぶん、2人とも分かっているようで分かっていないのかも知れない」
2人の関係を語る宮澤の言葉は、さらにその出会いにまでさかのぼる。
「全成さんが最初の頃、『生まれる前からほれていました』みたいなことを言っちゃうんですが、それを受けて実衣が『言っていることがよく分からないところに引かれました』と言えるって逆にすごいなと思って。普通、『この人の何が好きなの?』と聞かれたときに、並べる形容詞って違う気がするんですけど、言葉では表現できないレベルで引かれ合っていたんだなというのを、占いの力も込みで感じました」
源平合戦から幕府内の権力闘争と争いが続く中、時にさざ波を立てながらも、仲むつまじい夫婦愛を育んできた全成と実衣。そんな2人の関係について、新納は最後に「この『鎌倉殿の13人』で僕が演じた阿野全成は、ただ実衣を愛していただけの男、みたいな感じですね」と締めくくった。
(取材・文/井上健一)