9月25日に放送されたNHKの大河ドラマ「鎌倉殿の13人」第37回で、前回終了直後から“謎のサブタイトル”として話題を集めていた「オンベレブンビンバ」の意味が判明した。
その発端は、5月29日に放送された第21回「仏の眼差し」までさかのぼる。
文治5(1189)年。りく(宮沢りえ)が子ども(のちの北条政範)を産んだことを祝うため、北条の一族が館に集合。
当時、いいなずけの源義高(市川染五郎)を失った傷が癒えずにいた大姫(南沙良)は、「葵」を名乗り、おまじないや魔除けに凝っていた。
その場で、祖父の時政(坂東彌十郎)に「赤ちゃんに命を吸い取られている」と告げた大姫は、戸惑う時政に“元気になるおまじない”を伝授する。それが「オンタラクーソワカー」だった。
そして迎えた第37回。時は流れて元久2(1205)年の夏。畠山重忠(中川大志)の乱を機に北条の家中が対立。
義時(小栗旬)は、政子(小池栄子)や大江広元(栗原英雄)らと新しい政治体制を始動させ、時政を排除する。
この状況に憤慨したりくは、源氏の一族である娘婿・平賀朝雅(山中崇)を鎌倉殿に据えようと画策。
計画は着々と進み、決行当日、時政はりくに「夜までに一つやっておきたいことがある」と告げ、館を出る。
三浦義村(山本耕史)の密告でこのたくらみを知った義時と政子の前に、突然、酒とさかなを持って現れた時政は、やたらと陽気だ。
実衣(宮澤エマ)と時房(瀬戸康史)も呼ばれ、皆がいぶかしがりながらも家族の酒宴が始まると、そこで時政が妙な呪文を唱える。「オンベレブンビンバー」。
時政は、それが大姫の教えてくれた“いいことがあるまじない”だと主張。政子たちは、それが間違っていることは分かるが、16年も前のことなので、なかなか正解が出てこない。離れて仏頂面で飲んでいた義時もそこに加わり、全員で思い出そうと盛り上がる…。
伊豆にいた頃の北条家に一瞬だけ戻ったような短い酒盛り。二度と戻らない家族の幸せな時間。その象徴が「オンベレブンビンバ」だった、というわけだ。
毎回、周到に計算された展開で視聴者をアッと言わせる三谷幸喜の脚本は、今回も事前の予想を軽々と超えてきた。次回に持ち越された時政とりくの計略の結果も気になるところだが、先日、全放送回数も48回と発表されており、残り11回、ますます目が離せなくなりそうだ。
(取材・文/井上健一)